メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部で教員をするとともに、埼玉県立大学をはじめ他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。昨年までは、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第3回 はじめに終わりのことを考えよ

  今回は、前回の続きで、第29回社会福祉士国家試験の専門科目の解説をお送りいたします。第2回でもお話ししましたが、社会福祉士の国家試験は、1日で実施され、午後の試験時間は13時45分~15時30分までの105分(1時間45分)で、以下8科目の「専門科目」が実施されます。

  • ■ 社会調査の基礎(7問)
  • ■ 相談援助の基盤と専門職(7問)
  • ■ 相談援助の理論と方法(21問)
  • ■ 福祉サービスの組織と経営(7問)
  • ■ 高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)
  • ■ 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)
  • ■ 就労支援サービス(4問)
  • ■ 更生保護制度(4問)

 なお、第29回社会福祉士国家試験の概要・講評、共通科目の解説については第2回をご覧ください。まだ第29回国家試験の問題を見ていない人は、この機会に一読しておいてください(問題【共通科目】【専門科目】正答はこちら)。

各科目の分析(専門科目)

社会調査の基礎(7問)

 本科目は、昨年同様の難易度でした。構成としても、調査の基礎(倫理)からはじまり、量的調査法、質的調査法から万遍なく出題されています。つまり、かなり基礎的な問題が出題されたということです。この傾向は、来年の第30回試験でも同様だと思います。よって、過去問や模擬問題などを中心に、調査の基礎や、各調査の留意点、特有の用語を丁寧に学習することが重要となります。出題された内容としては、「標本抽出法」や、「KJ法」、「調査票を用いた方法」など非常に基礎的な内容が出題されています。やや難しかった内容としては、過去にも出題された「量的調査におけるデータの集計方法」や「事例研究法」などが挙げられます。

 以上のことから、本科目は、まず調査の基礎をしっかり整理すること、さらに調査に関する用語の整理、各調査のデータ収集方法とデータ分析方法の詳細について、過去問解説集模擬問題集を中心に学習するといいでしょう。

相談援助の基盤と専門職(7問)

 本科目は、次科目「相談援助の理論と方法」とセットの科目といえます。つまり、「ソーシャルワーク論」と言える科目で、ソーシャルワークの基礎、専門的知識や技術、専門職としての価値倫理をはじめ、ソーシャルワーク実践における具体的な方法などが問われる科目と言えます。そのなかでも、本科目は、社会福祉士やソーシャルワーカーの倫理、価値に重きが置かれ、社会福祉士にとって重要な原理・原則についても取り扱われています。これに、ソーシャルワークの歴史的変遷といった内容も含まれます。

 第29回試験を見てみると、問題91「社会福祉士及び介護福祉士法」、問題92「ソーシャルワークのグローバル定義」、問題94「ソーシャルワークの統合化」などが出題されています。この他は、事例問題で、ソーシャルワーカーの実践事例に関する問題でした。

 今後も、社会福祉士やソーシャルワーカーの価値倫理を中心に、ノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン、アドボカシーなどソーシャルワークの原理原則の整理、さらには多職種チーム(チームケア)などについても整理しておくとよいでしょう。

相談援助の理論と方法(21問)

 本科目の問題数は全21問と、全科目のなかで一番配分が大きい科目です。そして、本科目でしっかりと得点できていることが合格の必須条件だと言えます。また、全21問中5問(1/4)が事例問題で、この事例問題はいずれも短文の事例問題でした(本科目の事例問題は激減しました)。この傾向が続くかわかりませんが、ソーシャルワークの知識・技術を基礎として、それを実践ではどのように活用するのか? どのような視点で介入するのか? などが事例問題では問われています。

 このほか、理論・アプローチ、モデルに関する問題や、相談援助の過程に関する問題が例年同様に多く出題されました。傾向も、例年同様です。理論・アプローチ、モデルに関する問題を見てみると、システム理論、解決志向アプローチ、問題解決アプローチ、行動変容アプローチ(学習理論がベースとなります)に関する問題が問われています。また、ソーシャルワーク・プロセスでは、アセスメントやモニタリングについて問われました。久しぶりに出題されたのが、「バイスティックの7つの原則」です。

 このほか、ケースマネジメントやスーパービジョン、記録など、社会福祉士にとって重要な技術についても問われました。グループワークについても、出題されています。

 以上、本年度の本科目は、非常に広範で、出題範囲から万遍なく出題されています。ソーシャルワーク・プロセスに関する出題がやや少ない印象を受けますが、事例問題などでそれを補っており、理論やアプローチは、かなり詳細な内容ですが、基本的な内容をつく重要な問題が出題されていました。本科目、前科目の「相談援助の基盤と専門職」では、聞きなれない専門的な用語がたくさん出てきます。今のうちから用語集テキストなどを活用して、用語の整理をしておきましょう。用語整理は夏までに終わらせておくと、秋からの実践的学習を行うときの手助けとなります。

福祉サービスの組織と経営(7問)

 本科目出題基準は、(1)福祉サービスにかかる組織や団体、(2)福祉サービスの組織と経営にかかる基礎理論、(3)福祉サービス提供組織の経営と実際、(4)福祉サービスの管理運営の方法と実際となっていますが、もう少しわかりやすく整理してみると、(1)法人の経営と運営に関する知識、(2)組織論、リーダーシップなどの組織運営に関する基礎知識、(3)人材の育成と確保に関する知識に大別されます。

 第29回試験を見てみると、これら4項目(3つの知識)が万遍なく出題されていました。難易度としては、昨年度同様のものでした。内容を見てみると、社会福祉法人の制度をはじめ、医療法人及び特定非営利活動法人に関する内容が問われています。ただ、本年度は、社会福祉法改正に伴う「社会福祉法人改革」の年だけに、社会福祉法人の詳細の内容を問うような問題を期待していましたので、社会福祉法人の組織の変更(理事長や理事会、評議会、幹事の役割)や、法人の役割の整理など出題されると予測していたのですが、実際は出題されず、この内容は今年度第30回試験で問われる内容となりました。よって、出題される可能性が非常に高いので、整理しておく必要があります。少し解説を加えておくと、社会福祉法人は、「社会福祉事業を主とし、地域公益事業をします。また主たる事業に影響を与えない範囲で公益事業や収益授業をおこなう団体」です。これを基礎に、前述の社会福祉法人の組織の変更点などを整理しておきましょう。

 この他、集団理論やリーダーシップ理論などが出題され、労働意欲やキャリア形成に関する「人材の育成と確保」に関する内容も問われています。この組織におけるキャリア形成や人材の確保育成、メンタルヘルスケアなどの知識については整理しておいてください。何故ならば、福祉サービスが、対人サービスで、組織運営・経営を考えるとき、「人(職員)」の確保と育成がカギとなるからです。

 以上のように、これからの「福祉」を支えるためには、「人(専門職)」をいかに、確保し、育てていくかが重要な課題となっています。福祉サービスは、対人サービスであるため、「人(専門職)」なくしては、成り立たないサービスなのです。このことからも、人材の確保と育成、働きやすい施設運営などについては重要項目となります。

高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)

 本科目は、全10問中2問が短文の事例問題でした。その内容は、高次脳機能障害に対する排泄の介護に関する対応事例と、高齢者虐待に対する対応事例でした。この他の問題を見てみると。基礎的な内容も問われましたが、平成26年度介護保険法改正の「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」「包括的支援事業」について問われています。出題された内容としては、「介護予防サービスから総合事業」へ移行したサービスは、「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」となります。

 このほかに、「老人福祉法に基づく市町村の措置」に関する内容や、認知症サポートキャラバンなど、幅広い知識が問われました。

 今後の対策としては、これらの内容に加え、高齢者の権利(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)や高齢者ケア(認知症および終末期ケアなど)、高齢者の就労と生きがい、サロン活動などに関する知識が重要といえます。現代の社会福祉士にとっては重要な知識といえますので、整理しておきましょう。

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)

 本科目は、全7問中1問が短文の事例問題でした。内容的には、非常に基本的な項目が、出題基準から万遍なく出題されています。「児童福祉法」や「児童の権利に関する条約」については、過去問をベースの学習で十分だと思います。児童福祉法は、改正され「虐待対策」について強化されています。今年度も引き続き出題される可能性が高いので、必ず整理しておきましょう。

 現代の児童を取り巻く環境を整理した際あげられる「子どもの貧困」「社会的擁護」についての出題はありませんでしたが、非常に重要な項目ですので必ず整理しておきましょう。例えば、「子どもの貧困」であれば、生活困窮者自立支援法やこども食堂、スクールソーシャルワーカーとの関連、「社会的擁護」であれば、里親制度についてです。現代の社会福祉士にとっては重要な項目ですので、各自復習をしておきましょう。

就労支援サービス(4問)

 本科目は、4問の出題でした。基本から応用を問う問題形式でした。ここ数年、労働や働きに関する基本的知識や統計、障害者、生活保護受給者、高齢者等の各就労支援サービスに関する知識が問われています。今年度の第29回試験では、これらの内容が満遍なく問われていました。例えば、問題144では「求職者支援法」について問われました。こちらの知識は、科目「社会保障」に関連するものですが、本法は、雇用保険を受給できない者に対して、(1)無料の職業訓練を実施して、(2)給付金を支給するとともに、(3)ハローワークが就労支援を行う制度で、スキルアップをはかり、早期の就職を目指す目的があります。このほか、障害者の就労支援や、ハローワークの役割などが問われました。

 以上のことから、生活保護制度や生活困窮者など、就労支援サービス、障害者の就労支援サービスなど、出題数は4問と少ないですが非常に広範な内容が問われる科目と言えます。本科目だけの知識に止めることなく、関連科目の知識と結びつけて学習を進めていくとよいでしょう。

更生保護制度(4問)

 本科目は、4問の出題でした。出題された項目は、「更生保護の基礎」「保護観察官と保護司」など例年通りの内容が問われています。難易度的にも、基本的事項を確認する内容でした。この他、「更生緊急保護」や「非行少年の取り扱い」について出題されました。本科目は、4問と出題数が少ないですが、現代の社会福祉士にとって非常に重要な知識技術で、国や国民から期待される役割の一つと言えます。

 本科目は、過去問をベースに、関連知識や内容をつなげていく学習が有効です。取り掛かり始めは、はじめて聞く用語や内容に戸惑うかもしれませんが、やり始めるとどんどん得点できる科目の一つです。