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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部で教員をするとともに、埼玉県立大学をはじめ他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。昨年までは、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第32回 クローズアップ~低所得者に対する支援と生活保護制度

 今回は、「低所得者に対する支援と生活保護制度」で特に理解しておくべきポイントについて解説します。

「低所得者に対する支援と生活保護制度」のポイントの振り返り

 本科目は、大別しますと、(1)低所得階層の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉需要と実際、(2)生活保護制度、(3)低所得者に対する支援に分けられます。

 出題頻度が高いものとしては、「貧困・低所得者の現状と生活保護の動向」に関する問題です。ちなみに、第26回試験では、生活保護の動向について、第24回試験では、「貧困・低所得者の現状と生活保護の動向」が出題されています。どちらも重要項目ですので、統計資料や国の示す調査などを基にチェックしておいてください。また、第27回試験では、「貧困と格差(動向)」についても問われていました。

 このほか、「生活保護における扶養の種類とその内容」に関する問題が出題されています。生活保護法第1条の目的で示されている「自立の助長」に焦点を当てた「生業扶助」に関しては過去問をベースに整理しておきましょう。このことから、生活保護制度の目的や原理・原則、各扶助といった基礎的な内容を中心に、恤救規則や救護法、旧生活保護法(昭和21年)、その後数年間の現行法誕生までの過程など、公的扶助制度の沿革について整理しておくことが大切です。

 さらに、今年度は、「生活困窮者自立支援法」です。出題される可能性が、非常に高いと思いますので必ずチェックしておきましょう。

 本科目は、学習すれば必ず得点ができる科目です。最初は慣れない用語がたくさんあるかもしれませんが、繰り返し問題を解き、必要項目に関する暗記をしていってください。

保護施設の種類と目的

 ここ数年は出題されていませんが、過去の問題をみてみますと、この保護施設の種類と目的に関する問題は多く出題されています。ここでは、生活保護法に定められている5つの施設について整理しておきます(生活保護法第38条参照)。

 まず、5つの施設を列挙してみますと、(1)救護施設、(2)更生施設、(3)医療保護施設、(4)授産施設、(5)宿所提供施設です。各施設の内容は以下のとおりです。

 (1)救護施設とは、心身の障害のために、日常生活が困難な人に対して「生活扶助」を行う施設です。(2)更生施設とは、心身の障害のために、養護や生活指導が必要な人に対して「生活扶助」を行う施設です。(3)医療保護施設とは、要保護者に対して「医療扶助」を行う施設です。(4)授産施設とは、要保護者に対して「生業扶助」を行う施設です。「生業」とは、生活を営むための仕事を意味する言葉で、具体的には職業訓練や技能修得などをさします。(5)宿所提供施設とは、住宅のない要保護世帯(者)に対して「住宅扶助」を行う施設です。

 さて、ここでいろいろと「○○扶助」という言葉が出てきましたが、生活保護は、必要な扶助を組み合わせるかたちで給付が行われています。その扶助は8つありますが、日常生活費などの個人と世帯に支給される「生活扶助」のほかに、「教育扶助」「住宅扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」があります(参照:第12回「低所得者に対する支援と生活保護制度」のポイント)。また、支給の方法には、現金による「金銭給付」と、サービスなどを実際に提供する「現物給付」があります。おおまかに分けてみますと、医療扶助と介護扶助は現物給付、つまり、実際のサービスとして支給され、そのほかの扶助については現金で支給されています。

 また、保護施設については、その目的と内容を理解しておく必要があります。詳細については、次の表を参考にしてください。

表 保護施設の目的と内容
保健施設名目的と内容
救護施設身体上または精神上著しい障害があるために、日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、「生活扶助」を行うことを目的としている。また、施設に通所して、生活指導や生活訓練などに参加するといった通所事業も実施している
更生施設身体上または精神上の理由によって、養護や生活指導を必要とする要保護者を入所させて、「生活扶助」を行うことを目的とする施設である。救護施設と同様に、更生施設でも通所事業が行われている
医療保護施設医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを目的とする施設である(「医療扶助」)
授産施設「生業扶助」を主たる目的としている施設で、身体上もしくは精神上の理由または、世帯の事情によって就労能力の限られている要保護者に対して就労や技能の修得のために必要な機会や便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする
宿所提供施設住居のない要保護者の世帯に対して「住宅扶助」を行うことを目的とする施設である

生活保護の相談・申請および不服申立て

 次に、生活保護を受けるまでの相談と申請、さらに不服申立てについて整理します。本項目については、第24回試験で、「保護申請時における生活保護の保護の補足性の原則に基づく制度運用」に関する事例問題として出題されています。重要な項目のため、まとめておきましょう。ここでは、それぞれの基礎について整理しておきます。

(1)相談・申請

 まず、保護の相談と申請についてですが、生活保護は、要保護者、つまり生活困窮者の相談および申請によって開始されます。そういった意味では、パワーレス状態の場合で、自ら申し出る能力がない人は扶助を受けられない可能性があります。実際、自分から訴えることのできない要保護者が自宅で亡くなっているといった新聞記事などをよく目にします。

 そのため、地域生活を支援する専門員として、民生委員などが代わりに必要性を役所に申し出るような「職権による申請」もあります。ソーシャルワークの専門用語でいいますと、こちらから出向くかたちの支援法「アウトリーチ」や、声を出せない人々の声を反映させる「アドボカシー」といった機能が求められます。

 申請者は、本人や扶養義務者、同居の親族です。申請すると、被保護者の権利と義務などについての説明が行われたうえで申請が受理され、一週間以内に訪問調査(実地調査)が行われます。さらに、補足性(生活保護法第4条)の要件を満たしているかといった資力調査が行われます。内容としては、預貯金・保険・不動産の資産調査、扶養義務者による扶養の可否の調査、年金等の社会保障給付や就労による収入の調査、就労の可能性などです。これらは、ミーンズテストと呼ばれます。

 しかし、権威的に調書をとるような聞き取りをして要保護者のプライドを傷つけることや、スティグマに対する配慮などが必要です。その後、保護の要否判定が行われ、保護の決定がなされます。

 保護の決定については、14日以内(申請のあった日から)に書面で通知されます。特別な場合があるときは、この日数が30日以内となります。また、30日以内に通知がない場合は、申請が却下されたものとみなされます。通知内容としては、保護の要否や種類、程度、方法などが記載されています。また、14日を越えて通知された場合は、その理由が記載されています。

(2)不服申立て

 保護実施機関が行った保護の申請棄却や、保護の変更、保護の停止・廃止に関する処分などに処分に不服がある者は、処分があったことを知った日の翌日から三ヶ月以内に都道府県知事に対して審査請求を行うことができます。

 次に、審査請求を受けた都道府県知事は、処分が違法または不当でないかについて審査した上で、50日(第三者機関による諮問がある場合は70日)以内に採決を行います。なお、審査請求を行って50日以内に都道府県知事の採決がなかった時に、審査請求人(処分に不服がある者)は、その請求が棄却されたとみなすことができます。

 さらに、都道府県知事が行った採決に不服がある者は、採決があったことを知った日の翌日から一ヶ月以内に厚生労働大臣に対し、祭審査請求を行うことができます。なお、再審査請求があった時は、厚生労働大臣は70日以内に採決をしなければなりません。

 不服申し立てについては、以上のようなプロセスがあります。日数や申立て先については、もう一度整理しておいてください。