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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部で教員をするとともに、埼玉県立大学をはじめ他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。昨年までは、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第27回 クローズアップ~現代社会と福祉

 今回は、「現代社会と福祉」で特に理解しておくべきポイントについて解説します。

「現代社会と福祉」のポイントの振り返り

 本科目も社会学系の科目です。苦手意識をもっている人は多いのではないでしょうか? 本科目は、イギリスをはじめ諸外国および日本の福祉制度の発達過程や福祉の思想や原理、福祉政策の構成要素などを中心に、満遍なく出題されています。本科目についても、少し柔らかな言葉で表現してみると、〈「現代の社会をよく理解していること」、また「「現代」だけでなく、過去・未来の社会をよく理解していること」、さらに「その社会には、どのような福祉課題や福祉問題が潜んでいるのか」について問う科目〉と言えます。内容としては、基礎的なことをしっかりと学習していることが前提となり、なかには難問もありますが、やった分だけ得点ができる科目です。

 本科目は出題数も10問と多いため、攻略法としては、まずは基礎的な用語や概念を整理したうえで、現代の社会問題に対して常に敏感であることが重要です。例えば、福祉制度と教育や労働、住宅などの各政策と関連づけて学習する必要もありますし、近年の現代社会の動向を考えてみると、このほかに、所得保障や雇用政策、保健医療政策、人権擁護といった内容も整理しておく必要があります。そして、1点でも多く得点し、半分の5点は取っておきたいところです。

 第28回試験をみていると、「イギリスにおける貧困対策の歴史」や「貧困・所得格差」「厚生労働白書における我が国の健康や寿命」「日本における世帯や婚姻の動向」「生活困窮者自立支援制度」などが問われました。このように列挙してみると、前述しました通り、現代の社会、過去未来の社会(福祉)、そして福祉課題や問題について問われていますね。

 このように、現在、政治に関するニュースでも、景気・雇用対策や税と社会保障制度、社会福祉に関する議論が盛んに行われており、このあたりは、現代の社会福祉士にとって必須の知識と言えそうです。そして、「社会理論と社会システム」でも取り上げましたが、「仕事と労働をめぐる政策」、つまり「仕事(ワーク)と生活(ライフ)」のバランスに関連する政策等については合わせて整理しておきましょう。

福祉制度の発展過程
~イギリスと日本の福祉制度を中心に

 本項目では、(1)前近代社会と福祉、(2)産業社会と福祉、現代社会と福祉について整理しておきます。社会福祉や福祉制度が発展する過程において、イギリスの福祉制度の変遷は非常に重要なので、今回はイギリスの福祉を中心に整理しておきます。最後に、現代の社会を理解するために重要な「(3)貧困」についても整理しておきましょう。

(1)前近代社会と福祉

 まず、日本の前近代社会と福祉を整理しますと、日本の慈善救済(福祉)の始まりは、聖徳太子らによる四箇院(悲田院、敬田院、施薬院、療病院)からといわれています。ここで用語の整理をしておきますと、日本で「福祉」という言葉が使用されるようになったのは、一般的には戦後です。では、それまで福祉という用語はどのような用語であったかをかなり雑ぱくに整理しますと、「慈善(救済)事業」⇒「感化救済事業」「社会事業」⇒「厚生事業」⇒「(社会)福祉事業」と変遷してきました。各用語については、整理しておいてください。

 日本でも欧米同様に産業社会が訪れ、同様の社会問題、社会福祉問題が生じてきました。それに対応したのが福祉というわけです。

 では、その欧米の産業化と福祉の歴史的変遷について少し整理してみましょう。

 イギリスでは、1600年代から続く第一次囲い込み運動やその後1800年代半ばから後半の社会変化や貧困などの社会問題を背景に福祉が対応していきました。例えば、救貧法、慈善事業、博愛事業、相互扶助などの民間および公的救済制度の整理が必要となります。制度としましては1834年にイギリスは「新救貧法」を成立させました。内容としては、(1)救済水準を全国均一とし、(2)有能貧民の居宅保護を廃止して、救済をワークハウス(労役場:とても劣悪な場所であった)収容に限定し、さらに、(3)劣等処遇の原則(救済を受ける貧民の生活水準は、働く最低階層の人の生活よりも劣るものとしなければならないという原則)による保護と決定しました。

(2)産業社会と福祉

 次に、1800年代後半の、いわゆる産業革命を代表とする資本主義社会の台頭、都市化や貧困の問題といった社会問題を背景に、福祉が対応していきます。具体的には、慈善(救済)事業、感化救済事業、社会事業の発達などがあげられますが、これらには、慈善組織協会(COS)やセツルメント運動などの活動が対応しています。つまり、これがソーシャルワークの源流です。

 では、なぜ貧困が社会活動や運動によって解決されるようになったのでしょうか? それは、ブースらによって行われた社会調査により、「貧困」という問題が、個人の問題ではなく、社会全体の問題であるということが一般化され、その後、1950年頃までは社会保障・福祉国家の発展などが福祉の大きな目的となったことがいえます。つまり、これまでは、「貧困」は個人の怠けや能力不足などの「個人的」な問題とされていたのですが、ブースらの社会調査において、例えばロンドン市民の約30%が貧困層であることを示し、貧困とは「社会」の問題であることが指摘されました。このことから、ソーシャルワーカーの貧困者個人に対する支援とともに、社会環境への間接的支援が貧困者のパーソナリティの発達や生活改善に必要であることが理論化されるようになります。そして、この介入視点がソーシャルワークの源流ともいえ、具体的な方法・活動としては、前述した慈善組織協会(COS)やセツルメント運動などの活動があります。ソーシャルワークの歴史については、「相談援助の基盤と専門職」で出題される内容となりますが、ソーシャルワークの源流ともいえる慈善組織協会(COS)やセツルメント運動については、必ず整理しておいてください。

 最後に、現代社会と福祉ですが、第二次世界大戦後の窮乏社会と福祉、経済成長と福祉、その後の新自由主義、ポスト産業社会、グローバル化、リスク社会、福祉多元主義などがあげられます。これらの用語については、必ず整理しておきましょう。そして、現代における福祉問題は、前述しました第27回試験で出題された項目を整理しておきましょう。いくつか列挙しておくと、「貧困(格差社会)」「ジェンダー」「人権」「働き(ワークライフバランス)」「過疎化(限界集落)」については、必ずチェックしておいてください。ここでは、内容の詳細にはふれませんが、ワークブックを中心に整理しておくとよいでしょう。

 次に、今あげました「貧困(格差社会)」について少し整理しておきましょう。

(3)貧困

 まず、完全失業率から見てみると、日本は、2015年、「3.4」です。完全失業とは、(1)仕事がなく、(2)仕事があればすぐに働ける状態で、(3)求職活動開始準備をしているものでした。そして、年齢別の完全失業率を見てみると、15~24歳:5.5%、25~34歳:4.6%と若者の失業率が高いことがわかります。これは、社会保障制度をとる我が国にとって、深刻な問題と言えます。

 このほか、貧困に関する用語をいくつか整理しておくと、「ジニ係数」とは、統計学者のコッラド・ジニにより考案され、最も不平等で所得格差が大きいとき「1」に近づき、最も平等で所得格差が小さいとき「0」になります。0.5を越えると政策による是正が必要とされており、日本は、0.3791です。日本は、2000年以降「0.38前後」で推移しています。

 最後に、子どもの貧困についても整理しておきましょう。子どもの貧困は、子ども貧困率と呼ばれ、日本の場合16.3%(平成25年国民生活基礎調査)です。このあたりは、国際的にも高い値であり、政府は、子どもの貧困対策案を平成26年より思考しています。さらに、平成27年4月より生活困窮者自立支援法が始まり、事業(任意)の内容に「貧困の連鎖」を対策として「学習支援」が挙げられています。

 以上、貧困や格差は、現代の社会を理解するためにも重要な項目ですので、必ず整理しておきましょう。

まとめ

 このほか、日本の戦前(第二次世界大戦終了以前)の福祉制度の発展過程も重要といえます。具体的には、慈善(救済)事業や感化救済事業、社会事業、厚生事業などの具体的な内容の整理が必要です。さらに、戦後の福祉制度に関する問題では、生活保護法をはじめ、児童手当法、障害者基本法、障害者総合支援法などが出題されています。ここで重要な法律としては、福祉六法と社会福祉法(旧・社会福祉事業法)の整理です。必ず、確認しておいてください。

 さらに、1990年代より社会福祉の基礎構造改革が進められ、2000年以降、介護保険制度のスタートを皮切りに、社会福祉法の改正、成年後見制度の施行、障害者自立支援制度の成立など、また、福祉の基礎概念である「措置」から「契約」へと福祉のシステムが大きく変化しました。この流れのなか、「対象者」は「利用者」となり、「処遇」は「サービス」へと変化していくわけです。また、「福祉」という用語も、「福利」というより広域で、より一般生活者すべての人びとが利用することを想定する内容へと変更されつつあります。

 以上のことから、現代のソーシャルワーカー(社会福祉士)は、福祉六法で示されている、いわゆる社会的弱者への福祉援助とともに、2000年以降の契約を基本とする自己実現や、よりよい生活を満たす福利といったとても幅広い範囲を支援の対象としていることがわかります。つまり、幅広い知識の習得とともに、多種多様な価値観を理解し、個別化していくソーシャルワークの価値や倫理の習得、学習も重要となってきます。

 以上、「現代社会と福祉」の解説でした。

 次回は「クローズアップ~地域福祉の理論と方法」です。

 いよいよ国家試験まで約4カ月を切りました。まだまだ焦る必要はありませんが、少しずつ試験モードに移行していきましょう。

 試験勉強のスタート時期は人それぞれで、理解力や使える時間などによって違ってきますが、私が受験をしたときは、この10月くらいからコツコツと勉強を始めました。早めに始めると、直前に焦らないので、そろそろ、少しずつでも勉強を始めることをおすすめいたします。それでは、あと約4カ月、最後まで一緒に頑張りましょう。

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