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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部で教員をするとともに、埼玉県立大学をはじめ他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。昨年までは、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第3回 はじめに終わりのことを考えよ

 今回は、前回の続きで、第28回社会福祉士国家試験の専門科目の解説をお送りいたします。

 なお、第28回社会福祉士国家試験の概要・講評、共通科目の解説については第2回をご覧ください。まだ第28回国家試験の問題を見ていない人は、この機会に一読しておいてください(問題【共通科目】【専門科目】正答はこちら)。

各科目の分析(専門科目)

社会調査の基礎(7問)

 本科目の問題は、昨年同様の難易度でした。構成としても、調査の基礎(倫理)については問われませんでしたが、量的調査法、質的調査法から万遍なく出題されており、かなり基礎的な問題が出題されていた印象です。つまり、本科目は、過去問や模擬問題などを中心に、調査の基礎や、各調査の留意点、特有の用語を丁寧に学習することが重要です。

 なお、第28回試験では、調査の基礎(倫理)については問われませんでしたが、調査におけるプライバシー保護や権利擁護(人権擁護)の観点からも重要な項目ですので、必ず整理しておきましょう。

 また、出題された「調査方法と調査票への記入の仕方」「尺度(名義・順序尺度、間隔・比例尺度)」「質問紙の作成方法」「グループインタビュー法」「アクションリサーチ」については、基礎的内容でありつつも、重要項目とも言えます。今後も出題される可能性が高いので、過去問ベースで押さえておきましょう。

相談援助の基盤と専門職(7問)

 本科目は、「相談援助の理論と方法」とセットの科目といえます。本科目は、社会福祉士やソーシャルワーカーの倫理、価値に重きが置かれ、社会福祉士にとって重要な原理・原則についても取り扱われています。これに、ソーシャルワークの歴史的変遷といった内容も含まれます。

 第28回試験を見てみると、問題91「社会福祉士の行動規範」、問題92「ソーシャルワークのグルーバル定義」、問題94「自立支援に関する事例問題」、問題96「倫理的ジレンマの事例問題」などのソーシャルワークの価値・倫理、原理・原則に関する問題が出題されました。このほか、ソーシャルワークの発展に寄与した研究者とその理論(問題93)については基礎問題でした。やや難しかったのは、「認定社会福祉士及び認定上級社会福祉士」に関する内容ではないでしょうか。こちらは、社会福祉士取得後、高度な知識と卓越した技術を用いて、個別支援や他職種との連携、地域福祉の増進を行う能力を有する社会福祉士のキャリアアップを支援する仕組みとして、実践力を認定する「認定制度」です。

 学習は、社会福祉士やソーシャルワーカーの価値倫理を中心に、ノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン、アドボカシーなどソーシャルワークの原理・原則の整理、さらには多職種チーム(チームケア)などについても整理しておくとよいでしょう。

相談援助の理論と方法(21問)

 本科目の問題数は全21問と、全科目のなかで一番配分が大きい科目です。そして、本科目でしっかりと得点できていることが合格の必須条件だと思います。

 全21問中10問(約半分)が事例問題で、この事例問題はいずれも短文の事例問題でした。これは、昨年度の試験と同様の傾向です。事例問題は、受験生の応用力や対応力を確かめるうえで重要ですが、事例文をもう少し長くし、社会福祉士の対応を問うために重要な情報を盛り込むなど、工夫が必要に思えます。以前、事例問題は、比較的長文の事例を読ませ、3つの設題(問題)が準備されていました。今後、事例問題に変更があるかわかりませんが、基礎知識を応用や実践で活用できる学習が必要で、それは一問一答の知識というよりは、芋づる式の知識の連結にあると思います。

 このほか、理論・アプローチ、モデルに関する問題や、相談援助の過程に関する問題が例年同様に多く出題されました。傾向も、例年同様です。理論・アプローチ、モデルに関する問題を見てみると、システム理論、危機介入(アプローチ)、行動変容アプローチに関する問題が問われています。また、ソーシャルワーク・プロセスでは、モニタリングに関する事例問題やアフターケア(フォローアップ)について問われました。このほか、ケースマネジメントやスーパービジョン、記録といった、現代の社会福祉士にとって重要な技術についても問われました。グループワークについても、2問出題されています。

 以上、本年度の本科目は、非常に広範で、出題範囲から万遍なく出題されていました。ソーシャルワーク・プロセスに関する出題がやや少ない印象を受けますが、事例問題などでそれを補っており、理論やアプローチは、かなり詳細な内容ですが、基本的な内容をつく重要な問題が出題されていました。私的には、ソーシャルワーカーは、「空間」を意識、管理することが重要で、そういった意味では、援助や支援の「場」、「時間(援助ブロセスや時期)」に関する知識や技術の理解が必要だと思います。

福祉サービスの組織と経営(7問)

 本科目の第28回試験を見てみると、これら4項目(3つの知識)が万遍なく出題されていました。難易度としては、昨年度同様のものでした。内容を見てみると、社会福祉法人の制度をはじめ、経営論(会計や経営に関する知識)、職員の動機付けに関する理論、リーダーシップ理論、リスクマネジメントなど、施設や法人を経営・運営していくために非常に重要な知識が問われています。このほか、労働法上の労働契約、就業規則、労働協定に関する内容も問われました。今年度は問われませんでしたが、組織におけるキャリア形成や人材の確保育成、メンタルヘルスケアなどの知識については整理しておいてください。何故ならば、福祉サービスが、対人サービスで、組織運営・経営を考えるとき、「人(職員)」の確保と育成がカギとなるからです。

 以上のように、これからの「福祉」を支えるためには、「人(専門職)」をいかに、確保し、育てていくかが重要な課題となっています。福祉サービスは、対人サービスであるため、「人(専門職)」なくしては、成り立たないサービスなのです。このことからも、人材の確保と育成、働きやすい施設運営などについては重要項目となります。

高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)

 本科目は、全10問中2問が短文の事例問題でした。その内容は、地域包括支援センターの社会福祉士の初期対応に関するもの、地域ケア会議に関するものが出題されていました。地域ケア会議は、ソーシャルワークのメゾレベルの活動であり、またミクロレベルの問題をメゾレベルへ引き上げる取り組みであり、さらにメゾレベルの問題をマクロレベルの制度や政策へと繋げていく活動でもあります。このほかの問題を見てみると、基礎的な内容も問われましたが、「介護予防・日常生活支援総合事業」や「指定居宅サービス事業所の責務」などのやや詳細の内容が問われていました。

 今回、ここ数年出題されていた、「介護技術」「介護概論」に関する内容は問われませんでした。こちらの知識・技術は、生活や人生を支え、比較的長期間支援に携わる現代の社会福祉士(福祉援助者)にとって、利用者の介護に関する知識や技術は必須となっています。この点からも、出題されなかったことはやや残念ですが、現代の社会福祉士にとっては重要な知識ですので、各自復習しておきましょう。このほか、認知症ケアやターミナルケアも同様です。

 今後の対策としては、これらの内容に加え、高齢者の権利(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)や高齢者ケア(認知症および終末期ケアなど)、高齢者の就労と生きがい、サロン活動などに関する知識が重要といえます。現代の社会福祉士にとっては重要な知識といえますので、整理しておきまよう。

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)

 本科目は、全7問中2問が短文の事例問題でした(内1問*問題141は不適切問題)。内容的には、非常に基本的な項目が、出題基準から万遍なく出題されています。出題が予測されていたものとしては、「児童虐待の対応(件数)」「児童虐待防止法」や「児童福祉法にける用語の意味」ですね。この辺りは、過去問をベースに学習しておいてください。基礎的な内容ですが、重要項目と言えます。そして、出題の頻度も高いものです。

 予想していた、現代の児童を取り巻く環境に関する「子どもの貧困」「社会的擁護」の問題は問われませんでした。「子どもの貧困」であれば、生活困窮者自立支援法やスクールソーシャルワーカーとの関連、「社会的擁護」であれば、里親制度についてが重要です。この辺りは、国家試験では出題されませんでしたが、現代の社会福祉士にとっては重要な項目ですので、各自復習をしておきましょう。今年度は、「子どもの貧困」「社会的養護」については問われる可能性が非常に高い気がします。

就労支援サービス(4問)

 本科目は、4問の出題でした。基本から応用を問う問題形式でした。ここ数年、労働や働きに関する基本的知識や統計、障害者、生活保護受給者、高齢者等の各就労支援サービスに関する知識が問われています。今年度の第28回試験では、これらの内容が満遍なく問われていました。例えば、問題141では「雇用・就労に関連する用語」について問われました。具体的内容としては、「ディーセントワーク」や「ワーク・ライフ・バランス」です。こちらについては、初めて聞く言葉、内容かもしれませんが、各自で必ずチェックしておきましょう。今は、用語を知り、その意味を知っておくだけでも十分です。この基礎知識が夏以降の応用や実践(模擬試験等)に必ず役に立ちます。このほか、問題145で「障害者就業・生活支援センター」についても問われています。こちらも併せて整理しておきましょう。

 以上のことから、生活保護制度や生活困窮者など、就労支援サービス、障害者の就労支援サービスなど、出題数は4問と少ないですが非常に広範な内容が問われる科目と言えます。本科目だけの知識に止めることなく、関連科目の知識と結びつけて学習を進めていくとよいでしょう。

更生保護制度(4問)

 本科目は、4問の出題でした。出題された項目は、「保護観察」「保護観察官と保護司」など例年通りの内容と言えます。難易度的にも、基本的事項を確認する内容でした。

 このほか、「更生保護施設」や「少年審判を担当する家庭裁判所」について出題されました。重要項目としては、挙がっているものですが、難易度としては「やや難しい」です。また、「保護観察」については、本科目の中心的な内容ですので、本試験の難易度よりややや踏み込んだ詳細について整理しておいてください。仮釈放や少年犯罪・審判などと関連付けて整理、学習しておくとよいでしょう。

 本科目は、過去問をベースに、関連知識や内容をつなげていく学習が有効です。取り掛かり始めは、はじめて聞く用語や内容に戸惑うかもしれませんが、やり始めるとどんどん得点できる科目の一つです。