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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第23回 精神保健福祉相談援助の基盤

 皆さん、こんにちは。厳しい残暑が続きますが学習は進んでいますか。焦らずに着実に進めていくことが合格の秘訣です。一緒に頑張っていきましょう。

 今回は、「精神保健福祉相談援助の基盤」を取り上げます。相談援助の対象・価値・理念・意義や、関連専門職、権利擁護、チームアプローチなど、精神保健福祉士として押さえておくべき価値や権利擁護が、大きなテーマになっている科目です。

 では最初に、前回の課題を解説しておきましょう。

第20回 精神保健福祉士国家試験問題「精神保健の課題と支援」

問題15 次の記述のうち、労働者の精神保健の現状として、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 セルフケアとは、各企業に義務づけられた精神保健に関する活動である。
  • 2 公立学校教育職員の病気休職者のうち、精神疾患による休職者は1 割未満である。
  • 3 職場でのセクシュアルハラスメント被害による精神障害は、労働災害の認定基準の対象から除外されている。
  • 4 年間自殺者数のうち、死亡時に被雇用者であった者はその半数以上を占めている。
  • 5 過労死等防止対策推進法が規定する過労死等の原因には、精神障害が含まれる。

正答 5

解答解説

  • 1 誤り。セルフケアとは、労働者自身によるストレスの気づき、ストレスへの対処のことです。職場のメンタルヘルス対策には、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフによるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのケアがあります。「ラインによるケア」とは、管理者による職場環境等の改善や個別の相談・指導のことです。「事業場内産業保健スタッフによるケア」とは、産業医、衛生管理者等による職場の実態把握、個別相談支援、ラインによるケアへの支援のことです。「事業場外資源によるケア」とは、事業場外資源による直接サービスの提供、支援サービスの提供、ネットワークへの参加、従業員支援プログラム(EAP)等の活用等のことです。
  • 2 誤り。公立学校教育職員の病気休職者数は、平成28年度調査によると、7758人で、そのうち、精神疾患による病気休職者数は、4891人で、約6割を占めています。
  • 3 誤り。労災認定の対象は、長時間労働だけではなく、いじめやセクシュアルハラスメントによるもの認定対象になっています。認定要件は、(1)対象疾病を発病していること、(2)対象疾病の発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること、(3)業務以外の心理的負荷、個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないことがあげられています。また、いじめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として、心理的負荷を評価することとされています。
  • 4 誤り。年間自殺者数のうち、死亡時に被雇用者であった者は、平成29年では、約3割で、半数以上は占めていませんでした。平成29年のわが国の年間自殺者数は、2万1321人で、職業別でみると、「無職者」が約6割、「被雇用者・勤め人」が約3割、性別では「男性」が約7割、年齢別では、40歳代、50歳代、60歳代、70歳代の順になっています。
  • 5 正しい。過労死等防止対策推進法では、過労死を「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」と定義しており、精神障害者も含まれています。

問題20 次の記述のうち、職場のメンタルヘルスに関して、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 精神障害に係る労災請求件数は、過去30 年間一貫して脳・心臓疾患に係る労災請求件数より多い。
  • 2 「男女雇用機会均等法」では、妊娠中及び産後の女性の危険有害業務の就業制限を規定している。
  • 3 「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、労働契約法に基づき定められたものである。
  • 4 従業員支援プログラム(EAP)は、職場の管理監督者が、職場環境の改善や心の健康相談を実施するものである。
  • 5 精神科デイ・ケアなどで提供されるリワークプログラムは、精神疾患で休職した労働者の職場復帰に向けた支援策である。
  • (注) 「男女雇用機会均等法」とは、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」のことである。

正答 5

解答解説

  • 1 誤り。精神障害に係る労災請求件数は、平成18年度までは脳・心臓疾患に係るものが、精神障害によるものより上回っていましたが、平成22年度から逆転して、精神障害によるものが、脳・心臓疾患に係るものより上回っています。平成28年度における、精神障害による労災請求件数は、1586件、脳・心臓疾患による申請件数は825件で、精神障害によるもののほうが、上回っています。
  • 2 誤り。妊産婦の危険有害業務の就業制限について規定しているのは、労働基準法です。労働基準法では、労働契約や賃金、労働時間、安全・衛生、年少者、妊産婦、技能者の養成、災害補償、就業規則などについて規定しています。使用者は、「妊産婦」を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他、妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならないとしています。このほか、妊産婦の禁止業務、産前産後休暇、業務転換、時間外労働の扱い、育児時間等が規定されています。
  • 3 誤り。「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、「労働安全衛生法」に基づいて出されているものです。この指針において、事業者は、「心の健康づくり計画」を策定することが規定されており、事業者の取り組み段階が、労働者自身のストレスへの気づきと対処の支援、未然防止の「一次予防」、早期発見と適切な対応の「二次予防」、メンタルヘルス不調労働者の職場復帰支援の「三次予防」に分けられ、この「一次予防」「二次予防」「三次予防」が、円滑に行われる必要があるとされています。
  • 4 誤り。従業員支援プログラム(EAP)は、職場の管理監督者が職場環境の改善や心の健康相談を実施するものではなく、メンタルヘルスに関する教育、相談活動、専門機関の紹介などによって、従業員のメンタルヘルスを支援することです。従業員支援プログラム(EAP)には、事業所内EAPと事業所外部のEAPがあります。事業所内EAPは、事業所内の産業保健スタッフが従業員のメンタルヘルスを支援する方法で、外部EAPは、事業所外のEAP会社に業務を委託して、従業員のメンタルヘルスを支援する方法です。
  • 5 正しい。精神疾患などで休職中の労働者を対象に、職場復帰を目指したプログラムとして、精神科病院のデイ・ケア等でリワークプログラムが実施されています。生活リズムの確立、集中力、注意力、持続力、コミュニケーション能力等を獲得するために、認知行動療法や集団精神療法を用いて、疾病理解やセルフケア、職場復帰と再発防止策を構築していきます。

 いかがでしたか。「精神保健の課題と支援」では、自殺、児童虐待、薬物対策、精神障害者の実態等についても、幅広く学習しておきましょう。

 では、今回の「精神保健福祉相談援助の基盤」に入っていきたいと思います。この科目は、ソーシャルワーカーの価値や倫理、関連専門職とのチームアプローチ、自己決定、権利擁護システムなどが出題基準としてあげられています。権利擁護のためのエンパワメントやアドボカシーの概念など、援助の基本的姿勢をよく理解しておきましょう。

 今回は、精神保健福祉士が関わる関連専門職種とのチームアプローチとして多職種連携について取り上げていきたいと思います。