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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第1回 ご挨拶

ご挨拶

 精神保健福祉士の受験生の皆さん、昨年度にひき続き、第21回精神保健福祉士国家試験の受験対策講座を担当させていただくことになりました張と申します。よろしくお願いいたします。皆さんと一緒にこの1年間、合格を目指して受験対策を行えることを、大変嬉しく思っております。

 精神保健福祉士の試験も、いよいよ21回目を迎えます。精神保健福祉士という資格の誕生から現在に至るまでの経過を顧みるとき、大変感慨深いものがあります。皆さんの先輩方が、精神障害者の権利を護るために、どんなに熱い思いで実践を積み上げてきたか、その結実としての精神保健福祉士という資格制度の誕生、その後の時代の変化とニーズの多様化に伴う業務範囲の拡大などの変化に、その都度真摯に向き合って、研鑽と実践を丁寧に積み上げてきた諸先輩の働きに、深い感動を覚える者です。

 そして、精神障害者のより良い生活の支援のために、この素晴らしい資格を取得しようとチャレンジしている皆さんに深い敬意を表するとともに、心からの声援を送ります。学習時間がなかなか取れない厳しい環境のなかで、わずかな時間をみつけて学習に取り組んでおられる皆さんのために、少しでもお役に立つことができればと願っています。

高い志の実現のために

 今まで、多くの精神保健福祉士の受験生の皆さんと関わらせていただいて感じているのは、受験生の皆さんの高い志です。精神障害者に対する深い共感と、社会に山積するさまざまな精神保健福祉に関する諸課題への、深い洞察とそれらに先駆的に取り組んでおられる実践力です。

 自らの知識と技術を高め、社会の課題を敏感に感じ取り、課題を抱える精神障害者に寄り添い、その権利を護り、一人ひとりの精神障害者の方々の生涯が、輝きに満ちたものとなるようにと願って、資格取得を目指している受験生の皆さんに出会い、その志の高さと熱意に多くのことを教えられてきました。このような方々の資格取得のために、少しでもお役に立たせていただきたいという思いを、年々強くしています。

精神保健福祉士の国家試験と受験対策

 精神保健福祉士の国家試験は、専門科目6科目、共通科目11科目、合計17科目となっており、科目数が多く、1科目の出題範囲も大変広い試験です。これだけ多くの科目をどのように勉強していったらよいのか、漠然とした不安を感じておられることと思います。

 合格のためには、まず学習時間の確保が必要です。現役の大学生の方、受験資格取得のために養成校に在籍しながらレポート提出に追われている方、すでに現場で活躍しておられる方等、それぞれ置かれている環境や立場は異なると思いますが、皆さんが一番悩まれることは、学習時間の確保と、膨大な学習範囲のどこを重点的に学習したらよいのか、学習方法がわからないということではないでしょうか。

 精神保健福祉士の国家試験は、単なる暗記ではなく、これから精神保健福祉士として実践していくための、人間や社会に対する深い洞察と幅広い知識を習得することが求められています。限られた学習時間のなかで、いかに効率よくこれらを自らのものとしていくか、そのためにこの講座が、多くの受験生の皆さんのお役に立つことができればと心から願っています。

精神保健福祉をめぐる動向

 精神保健福祉士の国家試験は、障害者全般を取り巻く環境を、大きく反映させた出題傾向となっています。

 障害者全般をみると、障害者権利条約批准のための障害者基本法改正、障害者虐待防止法制定、障害者総合支援法制定、障害者差別解消法の制定、障害者雇用促進法改正、発達障害者支援法改正というように、障害者関連法の制定や改正が行われてきました。

 精神保健福祉分野では、精神保健福祉士法の改正による精神保健福祉士の業務の拡大、精神保健福祉法改正による精神科病院入院者の退院促進体制整備等が政策的に進められるようになりました。すでに実践現場ではさまざまな取り組みが行われており、試験の出題内容も極めて具体的、実践的なものになっています。

 また、障害者雇用促進法の改正による雇用促進、障害者差別解消法施行による合理的配慮も本格的に始動しており、精神障害者が社会のなかで人権が保障され、その人らしくいきいきと生きていくために、精神保健福祉士の占める役割は、従来以上に一層重要性を増してきています。

 さらに社会全体をみると、経済の停滞と社会構造の変化により、非正規職員の増加と格差の拡大、貧困の連鎖、地域や家族関係の脆弱化、いじめの陰湿化や児童虐待等の増加、ブラック企業や貧困ビジネス等の課題が山積しています。

 経済格差や雇用の不安定化等がナショナリズムやポピュリズムを生みだし、世界経済や政治情勢の不安定化に拍車をかけ、世界全体が混乱に直面しているといえるでしょう。世界各地に頻発するテロへの恐怖、自然災害や原発事故のいまだ癒えない傷跡等、わが国の社会全体にも大きく影響を与えています。

 社会の緊張が高まるとき、最も標的にされやすいのは社会的な弱者です。社会の余裕がなくなると、怒りや敵意は少数の弱者に向けられ、人間は、有能であるか無能であるかという基準で選別が行われ、社会的な弱者に対する感情的な社会的排除が日常的になります。相模原障害者施設殺傷事件は、その象徴的な事件といえるでしょう。

 このような社会的な背景のなかで、精神保健福祉士には、本質を見誤ることなく常に社会の動向を把握し、精神障害者が抱える現実の生活課題と社会との関係を洞察する力が求められています。

 具体的な活躍が求められている場として、精神障害者の地域移行や社会復帰支援、医療観察制度や更生保護制度における福祉的視点による支援、職場のメンタルヘルス対策、貧困や児童虐待への対応、スクールソーシャルワーカー、精神医療審査会委員等にとどまらず、地域包括ケアシステムのなかでの精神障害者支援等、さまざまな社会生活の場面において、ソーシャルワーカーとしての精神保健福祉士への期待が、一層高まっています。

 受験生の皆さんには、是非実践力のある、政策全般にも明確な意識をもって関わることのできる精神保健福祉士として活躍するソーシャルワーカーになっていただきたいと願っています。そして、そのための資格取得としての精神保健福祉士試験合格のために、皆さんとともに学んでいけることを、大変嬉しく思っています。

第20回試験結果

 第20回精神保健福祉士国家試験は、例年通り、基礎的な知識とそれを実践に活かしていく応用力をみる、出題基準に沿ったバランスの良い出題でした。出題形式についても例年通り、五肢択一問題と五肢択二問題で構成されており、出題内容も、過去の出題傾向と大きな変化は見られませんでした。

 受験者数は7174人で昨年より182人の減少、合格者数は4399人で昨年より47人の減少でした。合格率は、62.9%で、昨年の62.0%より0.9%だけ高くなっています。受験者数の減少は、受験料の値上がりも一つの要因だったといえるかもしれません。

 合格ラインは、全科目の総点数163点のうちの93点以上で、得点率は57.1%です。昨年が91点でしたから合格ラインが2点上がっています。専門科目だけでは、80点のうちの42点以上で、得点率は52.5%でした。昨年は44点でしたから合格ラインが2点下がっています。

 国の方針としての、「総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正」するという考え方からみると、全科目の6割は97点、専門科目の6割は48点ですから、いずれも約6割弱であり、方針に沿った内容であったといえるでしょう。同時期に実施された第30回の社会福祉士国家試験の結果が、150点満点中、99点が合格ラインであったのに比べると、精神保健福祉士の合格ラインは、例年に準じた予想の範囲内の結果でした。

 全体を概括すると、一部細かいデータや聞き慣れない用語、人物名がみられましたが、専門科目、共通科目とも、全体的に基礎的内容を問う良問が多かったといえるでしょう。法改正や制度改正に関しては、施行後の具体的な取り組みが事例問題で出題されるようになってきており、より実践的な内容になってきています。今後は、改正内容についてのさらに具体的な細部に渡る出題になることが考えられます。

 事例問題では、退院促進と地域移行支援、広汎性発達障害、高次脳機能障害者の職場支援、統合失調症、認知症患者とその家族への支援等が出題されており、今回は初めて、LGBTに関する出題もありました。精神障害者支援の、社会的なニーズを背景に出題されていることがわかります。

 これからの学習方法としては、まず、各科目の基礎的内容をしっかり学習しくことが大切です。そのうえで、それらを実践のなかで具体的に適用していくための応用力を養っていくことが求められます。学習の際は、いつも具体的な状況をイメージしながら、法制度も含めて理解を深めていくことをおすすめします。

合格のための近道

 受験生の皆さんは、精神保健福祉士の国家試験の出題範囲の広さと内容の深さに、今は不安でいっぱいかもしれません。これからの学習の道のりのなかで、時には自信を失うこともあるかもしれません。けれど、着実な学習を積み重ねていくことによって、不安は必ず自信に変わっていきます。合格のための近道は、一見遠回りのように見えますが着実な努力の積み重ねです。

 着実に学習を進めていくと、17科目がそれぞれ関連をもっており、一つひとつの知識が相互に関連していることに気づいてきます。そうなると、全体を見通すことができるようになり、学ぶことの楽しさを体験していくことができるようになります。限られた時間のなかでの学習は困難を伴うと思いますが、困難を乗り越えていくと、わかっていく楽しみを体験できます。不安は自信に変わり、困難が喜びに変わるよう、この講座を大いに活用していただきたいと思っています。

 これからの受験までの1年間、皆さんが、学ぶ楽しさを味わい、皆さんがもっている無限の可能性が最大限に発揮されて、合格を勝ち取ることができるよう、全力で応援していきたいと思っています。

合格を目指して

 第20回試験の発表以来、受験生から、次々に合格の知らせが届いてきます。一人ひとりの顔を思い浮かべながら、言葉にならない感慨でいっぱいになります。
 時には不安と限界に押しつぶされそうになりながら、必死で取り組んでいた方、理解が深まってきた時の喜びに満ちた表情、苦しい学習のなか、ひたすら自分を信じて最後まで粘り切って栄冠を勝ち取った方、それらのお一人おひとりに、惜しみない拍手を送りたいと思います。

 0点科目やケアレスミスなどで、惜しくも無念の涙をのんだ方、実力を十分発揮できなかった方など、合格ラインの僅差で涙をのんだ方も多かったのではないでしょうか。試験の非情な現実には言葉を失いますが、今までの積み重ねは必ず報われます。是非再チャレンジしてともに合格の栄冠を勝ち取っていきましょう。

 この講座は、毎週火曜日に更新されます。受験までの長い道のり、学習に不安を感じることもあることでしょう。この講座では合格のために、さまざまな角度から学習のポイントを紹介していきたいと思っています。

 次回は第20回試験をふまえて、受験のための学習方法と、本試験までの学習計画の立て方を中心に、第21回試験の受験対策を考えていきたいと思います。皆さんの1年間が実り多いものとなりますように、全力を尽くして応援していきたいと思っています。合格を目指して一緒に頑張っていきましょう。