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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第45回 第20回精神保健福祉士国家試験【共通科目分析】

 皆さんこんにちは。試験の結果発表が待ち遠しい日々を過ごしておられることと思います。前回の専門科目に続いて、今回は共通科目を取り上げて、出題傾向を分析していきましょう。

人体の構造と機能及び疾病

 身体の成長と発達の分野は、子育ての経験のない受験生は少々戸惑ったかもしれません。人体の各器官については、右肺、左肺の枚数は頻出問題でしたが、大腸のしくみ、頸椎の骨の個数などは、初出問題でした。WHOの活動についても、しばらく出題のなかったアルマ・アタ宣言、健康の定義などは、少々難易度が高かったといえるでしょう。

 高齢者に見られる病態については、老人性難聴、褥瘡の発生要因は頻出問題でしたが、甲状腺機能低下症、味覚障害の原因については初出問題で、苦戦したことと思います。

 障害の分野では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋萎縮性側策硬化症(ALS)、脊髄損傷、脳性麻痺、脊髄小脳変性症等、ここ2、3年あまり出題されていないものが取り上げられていました。

 精神疾患の分野の統合失調症の症状は、これは出題率の高い分野だったので、対応できたことと思います。廃用症候群の症状も、基本的知識で対応できる内容でした。全体的に見てこの科目は、昨年より難易度は高かったと思われます。

心理学理論と心理的支援

 今回は、例年出題率の高い感覚、知覚、認知に関する出題はなく、帰属意識や条件付け理論の出題でした。内的帰属と外的帰属、オペラント条件付けについては、基本的な知識で対応できたことと思います。

 思考や知能に関しては近年出題実績がない久しぶりの出題でした。拡散的思考と収束的思考、IQの算出方法、WAISは、戸惑った方も多かったかもしれませんが、結晶性知能と流動性知能がわかれば解答は導き出せたでしょう。

 集団特性、バーンアウト、心理療法の分野は、出題率の高い定番問題でした。ピアジェの認知発達理論が久しぶりに出題されたのが目を引きました。保存の概念、可逆的な操作の意味が理解できたかどうかが、正答を導き出せる決め手になったでしょう。

社会理論と社会システム

 役割理論、共有地の悲劇については、出題実績があり、基礎的な知識で対応できる内容でした。日本の労働市場、65歳以上の者のいる世帯の世帯構造、児童虐待の検挙状況は、正確なデータを把握していた受験生は少なかったと思われますが、常識的な範囲で解答を導きだせたのではないでしょうか。

 ウェルマンのコミュニティ解放論は、「地域福祉の理論と方法」で出題されたことがある内容で、科目としての親和性の高さを感じました。裁判員制度は初出問題で目を引きましたが、これも、日ごろのメディアの報道に気をつけていれば対応することができたでしょう。

 今回は、社会変動論、階級・階層論、都市論、ライフサイクル論、家族論の出題が見られず、どちらかというと、現代の社会状況を中心とした問題に特化されたものが多かったという印象を受けました。今後は、基礎的な社会理論を踏まえたうえで、現代社会の状況にアンテナを張って一般的な常識としての情報をキャッチしていく学習が求められるでしょう。

現代社会と福祉

 福祉の原理論については、前回はアマルティア・センの潜在能力の概念が、今回は、ジョン・ロールズの格差原理が出題されました。この2人は頻出人物なので、今後も理解を深めておきましょう。

 日本の社会福祉制度の歴史については、従来あまり出題されていない行旅病人及行旅死亡人取扱法、感化法、母子保護法や、救護法の行ける救護施設を問うもので、難易度の高い内容でした。

 障害者差別解消法、社会的企業、各国の福祉改革、タウンゼントの相対的貧困概念、民生委員制度は、ある程度の知識があれば対応できたでしょう。ただ、ポーガム、ピケティは初回、リスターは一度だけ出題された人物なので、受験生は戸惑ったことと思います。

 WHOの「健康の社会的決定要因」、福祉サービスのプログラム評価、「住宅セーフティネット法」は、難易度の高い問題でした。今回は、白書や報告書からの出題はありませんでしたが、全体的に難易度が高かったため、あまり得点の伸びは期待できないかと思われます。

地域福祉の理論と方法

 地域福祉への参加の共同募金、民生委員・児童委員、社会福祉法の規定、認知症にかかわる人材、地域福祉に係る組織・団体については、基礎的な知識で対応できる内容でした。社会福祉協議会の歴史については、久しぶりの出題だったため、学習していた受験生は少なかったのではないでしょうか。

 生活支援コーディネーターの対応や住民による支え合いの地域づくりは、今後の社会福祉協議会が取り組むべき共生社会の実現のための類似問題で、今後も出題の可能性の高い内容であると思われます。

 地域における福祉ニーズの把握方法については、基礎的な知識で対応できたでしょう。福祉サービスの第三者評価事業は、指針を読み込んでいないと少々難易度が高かった内容でした。

福祉行財政と福祉計画

 法定受託事務と自治事務については久しぶりの出題でしたが、生活保護決定事務が法定受託事務であるのがわかれば、問題なかったでしょう。国の費用負担、社会福祉の法定機関、厚生労働大臣の役割、福祉計画の計画期間については、極めて基礎的な内容でした。

 福祉計画等の内容については、障害者基本計画の目的、健康増進計画、子ども・子育て支援事業計画、第6期介護保険事業計画基本指針等、少々難易度の高いものでした。

 平成29年度の地方財政白書は、従来の出題パターンを超え、特別会計事業費としての介護保険事業費や国民健康保険事業費の歳出も含めた内容を問う問題で、対応に困難を覚える受験生が多かったでしょう。

社会保障

 厚生労働白書、社会保障費用統計については、詳しいデータを把握していなくても、基礎的な知識で対応できる内容でした。また、社会保険のしくみ、公的年金制度の沿革、労災保険、出産・育児支援、児童扶養手当についても極めて基礎的な内容でした。

 今回は、例年必ず出題される、年金保険制度や医療保険制度、雇用保険制度についての詳細な給付内容の出題がなかったため、得点が伸びることが予想されますが、今後の対策としては、これらも含めて、すべての範囲を網羅して学習しておいたほうが良いでしょう。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 障害者総合支援法関連は、地域活動支援センター、訓練等給付と介護給付の支給決定のプロセスの違い、短文事例での相談支援専門員の対応、サービス管理責任者の役割という、従来の出題内容より、一歩踏み込んだ、実践的な内容になっているのが目を引きました。

 知的障害者更生相談所の役割は基礎的な内容でしたが、障害者スポーツ、障害者福祉制度の発展過程は、少々難問でした。全体的には、取り組みやすかったといえるでしょう。

低所得者に対する支援と生活保護制度

 今回は、例年出題率の高い生活保護制度の4原理4原則、扶助の給付内容、生活保護の実施体制、生活保護制度の発展過程等の出題はみられませんでした。

 生活困窮者自立支援法、生活保護の実態、生活保護法の目的、福祉事務所を設置していない町村の役割と機能については、基礎的な知識で対応できる内容でした。

 生活保護の自立支援プログラム基本指針は久しぶりの出題でしたが、常識の範囲で解答を導き出せたでしょう。生活保護制度における多職種連携に関しては、新しい視点からの出題で目を引きました。公営住宅の居住相談窓口対応についても、新たな出題傾向で難易度の高いものでした。

 今後は、生活保護制度の基礎的知識を押さえたうえで、低所得者に対する関連分野にも目を配った学習が求められていくでしょう。

保健医療サービス

 国民医療費の実態、医療法に基づく医療施設、医師法に基づく医師の業務については、基礎的な知識で十分対応できる内容でした。

 短文事例の緩和ケアチームの各専門職の視点に関する出題は、それほど難易度は高くはありませんでしたが、単純な暗記力ではなく応用力を問う問題でした。

 診療報酬、医療提供体制、病床機能報告制度、医療事故の発生時の対応に関しては、出題実績のない、極めて難易度が高い内容で、対応できる受験生は多くはなかったことと思われます。全体的に見て、共通科目のなかでは最も難易度が高い科目だったといえるでしょう。

権利擁護と成年後見制度

 憲法の分野から国民の義務として1問、行政法の分野から行政事件訴訟法が1問、民法から扶養義務が1問、成年後見制度から任意後見制度が1問、法定後見制度が2問、後見制度の概況が1問という出題構成で、出題基準に則ったバランスの良い出題構成でした。

 それぞれの内容も、出題実績のあるものが多く、全体的に基礎的な知識で対応できるものでしたが、民法改正による、郵便物の転送や遺体の火葬等の成年後見人の権限の範囲の拡張に関する、家裁への手続きの内容まで理解していた受験生は少ないと思われますので、困難を覚えた方が多かったのではないでしょうか。

 前回、今回と、本試験の専門科目、共通科目の分析を行ってきました。今回で最後の解説となります。精神障害者のために良き援助者になろうという高い志をもって、4年間学業に励まれた学生の皆さん、現場で活躍しながら限られた時間のなかで、必死で学習に取り組んでこられた皆様全員に、深い敬意を表します。

 皆さんの今までの努力が実を結び、全員が合格の栄冠を勝ち取られることを、心から願っています。精神障害者の良き理解者、パートナーとして、これからも是非、精神障害者の人権が護られ、輝いた人生を送ることができるように、皆様の熱い思いが発揮されていきますように、この働きを通して、皆さんの人生がさらに豊かなものとなり、ますます輝いていきますようにと、心から期待し応援しています。本当に、1年間有難うございました。