メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第44回 第20回精神保健福祉士国家試験【専門科目の分析】

 皆さん、厳しい寒さの中での受験、お疲れさまでした。2月3日、4日と、緊張の連続だったことと思います。今は、達成感と合格への不安が入り混じっているのではないでしょうか。

 第20回試験の出題形式は、昨年に続いて5肢択一問題をベースに5肢択二問題が散在するという形態でした。事例問題についても、短文事例と長文事例という出題形態は変わらず、全体的に例年通りだったといえるでしょう。

 受験された皆さんは、合格発表まで落ち着かない日々を過ごすことと思いますが、けあサポが解答速報を出していますので、得点の目安を確認することができます。事例問題等で解釈の相違によって解答が分かれるものもあるので、5~6点の幅をもって予測しておくとよいでしょう。

 一番気になるのが合格ラインだと思いますが、試験センターの発表があるまではわかりません。あきらめずに最後まで希望をもって発表を待ちましょう。
 では今回は、専門科目の出題内容の分析をしていきたいと思います。

精神疾患とその治療

 精神医学的な専門的な知識を問う問題よりも、一般的、基礎的な知識で十分対応できる内容でした。

 毎年必ず出題されている脳の構造と機能については、中枢神経とその機能として出題されました。前頭葉、頭頂葉、側頭葉、辺縁系、大脳基底核のそれぞれの代表的な機能がわかっていれば解ける問題でした。

 代表的な疾患として、統合失調症と気分障害の症状の特徴、アルコール依存症の離脱症状が出題されましたが、基礎的な知識で十分対応できる内容でした。

 精神症状と状態像については、前向性健忘と逆行性健忘の違い、幻覚と錯覚の違い、思考吹入と考想伝播の違い、強迫観念、書痙(しょけい)、精神運動制止が出題されました。前行性健忘は久しぶりの問題、書痙(しょけい)は初出問題でした。

 精神疾患の症状として、認知症、統合失調症、全般性不安障害、急性ストレス障害が出題されました。日ない変動が激しいものという視点からの出題が目を引きました。初回面接の対応については、信頼関係の構築ということで、特に問題はなかったでしょう。

 心理テストの分野からは認知症のスクリーニングが出題されましたが、これも基本的な知識で対応できるものでした。精神療法の分野からは、洞察的精神療法を選ぶ問題でしたが、精神分析が洞察的手法を取ることを知っていれば問題なかったと思います。

 精神科治療における人権擁護として、隔離の際の処遇基準と医療観察法の目的が出題されましたが、いずれも基本的な内容でした。

 今回は、精神医学、医療と歴史の現状や、向精神薬と副作用、データ関係の出題はありませんでした。全体的に、大変取り組みやすい内容であったといえるでしょう。

精神保健の課題と支援

 いじめ防止対策推進法、過労死等防止対策推進法、精神保健に関する法律等の、法制度に関する出題は、例年通りの内容で、それほど難しいものではありませんでしたが、ICFについては、概念の理解が求められる内容でした。

 積極的精神保健活動については、初出問題で、少々とまどった受験生も多かったと思われます。がん患者支援の緩和ケア、トータルペインクリニックやQOL、グリーフケアについては、基礎的な知識で対応できる内容でした。

 精神保健福祉活動を行っている民間団体の歴史的背景、DALY(障害調整生命年)の算出方法は、少々難易度が高かったかと思います。

 統計的なデータを問うものもありましたが、科目を全体的に見ると、昨年より難易度は低かったのではないかと思われます。

精神保健福祉相談援助の基盤

 精神保健福祉士法における精神保健福祉士の業務、国際ソーシャルワーカー連盟の倫理綱領における倫理基準、援助の理念としてのストレングス、アドボカシー、スーパービジョンは、定番問題といえるでしょう。

 社会福祉に関する職能団体の設立は、詳しい年号がわからなくても、ある程度推測で解けたのではないでしょうか。法に規定されている専門職の業務、ソーシャルワーク支援のミクロ領域、マクロ領域についても、基礎的な内容でした。

 ソーシャルワーク理論と代表的な人物は、診断主義、機能主義、生態学、システム理論、生活モデルの流れについての理解を問うもので、少々難易度が高かったかもしれません。

 チームビルディングの展開過程という出題は初出問題で目を引きました。また、長文事例問題では、性同一性障害が取り上げられており、今後も時事性のある出題傾向になって行くと思われます。全体的に出題基準に沿ったバランスの良い内容であったといえるでしょう。

精神保健福祉の理論と相談援助の展開

 諸外国の精神保健福祉は、少々難易度が高かった内容でした。我が国の精神保健福祉については、基本的な知識で解けるものでした。精神科リハビリテーションの原則は、繰り返し出題されている内容なので、過去問を解いていれば対応できたでしょう。

 職業リハビリテーションのプロセス、マッピング技法、面接技法も基礎的な内容で特に問題はなかったと思います。精神科病院の入院形態については、医療保護入院における「家族等」の定義や退院請求権者など、丁寧な学習が求められる内容でした。

 精神障害者の地域移行や地域定着を進めるための、諸制度に関する基本的な知識と地域生活を支援するための援助技術と展開過程に関する問題が多くを占めていました。今後も地域移行、地域定着、地域生活の支援のための出題が多くなっていくと思われます。

 うつ病の短文事例では、共通科目の社会保障制度や児童福祉制度の具体的な子育て支援の制度についての知識を問うもので、今後も関連制度についての知識を押さえておくことが必要でしょう。

 長文事例では、アスペルガー症候群、高次脳機能障害の学習支援と就労支援、認知症患者と家族への支援、発達障害児を抱える統合失調症患者の子育て支援という内容で、それぞれ、支援のための諸制度に関する知識と、援助者の役割とあるべき姿を問うものでした。全体的に内容が豊富で、限られた時間内に状況を把握し、的確に解答を導き出すのは、少々困難を覚えたのではないでしょうか。

 一部選択に迷う設問がみられましたが、全体的には、それほど難易度の高い問題はなかったと思われます。

精神保健福祉に関する制度とサービス

 医療保護入院、精神医療審査会、障害者総合支援法における地域定着支援、障害年金制度、精神保健福祉センター、更生保護制度、保護観察所、社会復帰調整官の役割と、制度系の頻出問題でしたから、対応しやすかったと思われます。
 長文事例問題も制度に関する知識を問う内容で、基本的な知識で対応できたでしょう。

 社会調査に関しては、有意抽出、無作為抽出、多段抽出、横断調査、縦断調査、ミックス法、シングルシステムデザイン等の理解を問うものでした。ダブル受験の方は、社会福祉士の試験科目の「社会調査の基礎」で対応できたかと思いますが、ダブル受験でなかった方には、少々難易度が高かったかと思われます。

精神障害者の生活支援システム

 障害者についての法律上の定義、障害者の権利条約、包括型地域生活支援プログラム(ACT)、クラブハウスモデル、障害者を支援する機関など、基本的な知識で十分対応できる内容でした。

 事例問題も、精神障害者の地域移行に関する諸サービスについての制度的な知識を問うものでしたから、全体的に得点しやすかったかと思われます。

 以上、各科目の出題傾向と難易度を見てきましたが、今回の全体の出題傾向をみると、特に受験生を悩ませるためにつくられた問題は多くはなく、大変素直な、解きやすい問題が多かったという印象を受けました。

 皆さん、試験が終わりホッとした思いと、合格発表までの不安で落ち着かない日々を過ごされていると思います。1年間本当にお疲れさまでした。皆さんの頑張りに心からの拍手を送ります。今までの自分の頑張りを褒めてあげてください。そして、しばらくは受験勉強からゆっくり解放され、明日の活躍に備えてください。
 次回は、共通科目の出題傾向を分析していきたいと思います。