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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

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第4回 精神保健の課題と支援

 皆さんこんにちは。新年度を迎え早くも1か月が過ぎ、毎日忙しい日々を送っておられることと思います。学習の態勢は整ってきましたか。毎日少しずつでも学習する習慣を身につけましょう。

 今回は、「精神保健の課題と支援」を取り上げていきたいと思います。現代社会は多くの精神保健福祉の課題が山積しています。社会生活のあらゆる分野を対象とするため、この科目は範囲が広く、苦手意識があるかもしれませんが、問題を解いてみると、常識の範囲で解答を導きだせるものが多くみられます。基本的な知識をしっかりと身につけておくことで得点が可能です。着実な学習を重ねて合格の力を身につけていきましょう。

 では最初に、前回の課題の解説をしておきたいと思います。

第19回 精神保健福祉士試験 「精神疾患とその治療」

問題5 次のうち、解離性(転換性)障害の症状として、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 運動失語
  • 2 小脳失調
  • 3 けいれん
  • 4 左右失認
  • 5 視覚失認

正答 3

解答解説

  • 1 誤り。運動失語は、解離性(転換性)障害の症状ではみられません。解離性運動障害で、これに類似しているのは失声です。失声は、脳の器質性障害によるものではなく、過重なストレスや環境が原因で発症するものです。選択肢の運動失語は、ストレスによるものではなく、大脳の前頭葉にある運動性言語中枢(ブローカ中枢)が、事故や脳梗塞等で障害されたことによって引き起こされる失語で、相手の言っている言葉の意味は理解できますが、言葉を発することができないという障害の症状です。
  • 2 誤り。小脳失調は、ウイルスや小脳に影響を与える病気によって小脳が麻痺したり、小脳変性症により小脳が変性することによって起こる、小脳の障害を原因とする運動の失調状態をいいます。解離性(転換性)障害の解離性運動障害で起こる似た症状に、運動麻痺や運動失調がありますが、これは、心的葛藤による耐えがたいストレスにより、解離状態が起こり、自分で自分を統制する能力が失われるために起こる、運動麻痺症状や運動失調です。
  • 3 正しい。解離性(転換性)障害のなかの一つの症状として、心因性非てんかん性発作があります。これは、意識消失を伴う解離性けいれんを症状とします。解離と同時に意識が消失し、身体の硬直、首の規則的な左右への横振り、両上下肢の規則的・反復的なけいれんなどがみられます。この心因性非てんかん性発作は、本来のてんかん発作が1分以内に収まるのに対して、30分ほどの比較的長時間みられるのが特徴です。
  • 4 誤り。解離性(転換性)障害の症状に、左右失認はありません。左右失認は、大脳の頭頂葉の特定の部位の損傷が引き起こす症状です。脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、交通事故などが原因になります。失認とは、視覚、聴覚、触角等の感覚器に障害がないにもかかわらず、対象の物を認識できないことです。左右失認とは、左右の識別が困難になることで、左の位置と右の位置の区別がつかなくなるという症状です
  • 5 誤り。解離性(転換性)障害の症状に、視覚失認はありません。視覚失認は後頭葉の損傷によって起こる症状です。意識障害もなく認知症でもなく、正常な視力があるのに、目の前にあるものがなんであるのか認識できないという障害の状態です。触角等の感覚によれば認識できますが、網膜に映された映像が何であるか認識するための、視覚を統合する後頭葉が損傷されるために起きるものです。

 いかがでしたか。では、今回の「精神保健の課題と支援」に入っていきましょう。過去の出題の傾向を分析しながら、出題率の高い分野を中心に取り上げて、対策を立てていきたいと思います。

精神の健康と、精神の健康に関連する要因及び精神保健の概要

 健康の定義として、アルマ・アタ宣言のプライマリ・ヘルスケアやオタワ憲章のヘルスプロモーションの概念、公衆衛生の定義等が出題されています。第18回試験では、WHOのメンタルヘルスアクションプラン2013-2020における、メンタルヘルスの定義が出題されました。

 発達課題として、第17回では注意欠陥多動性障害が、第18回ではエリクソンの発達理論が、第19回では発達と心理に関する理論と学説・人物というテーマで、ピアジェの発生的認識論、サリヴァンの対人関係論、ゲゼルの成熟優位説、エリクソンの心理社会的発達理論、ボウルビィの愛着(アタッチメント)理論が出題されています。

 共通科目の「心理学理論と心理的支援」と重なる内容ですから、並行して学習しておくとよいでしょう。

 生活習慣と精神の健康としては、第15回で我が国の平均の睡眠時間が出題されています。実際のデータを正確に理解していなくても、日ごろ取り上げられているニュース等に注意していれば、常識の範囲で対応できる内容が多いので、日ごろから、メディアが取り上げて報道しているさまざまなニュースにアンテナを張り巡らせておく習慣を身につけておくことをおすすめします。

 ストレスと精神の健康として第17回では、燃え尽き症候群(バーンアウト)の主たる症状が出題されています。ストレスとコーピング、急性ストレス障害、外傷後ストレス障害等についても学習しておきましょう。

 自殺予防の分野では、自殺の実態、自殺総合対策大綱等が出題されています。自殺対策基本法、自殺予防などとともに、自殺の実態等を把握しておきましょう。自殺の実態は、内閣府による「自殺対策白書」で確認することができます。

 また、2016(平成28)年4月から、改正自殺対策基本法が施行されています。従来の「自殺予防総合対策センター」が改組され、平成 28 年度より新たに「自殺総合対策推進センター」として、関係者が連携して自殺対策の PDCA サイクルに取り組むためのエビデンスの提供や、民間団体を含めた地域の自殺対策を支援することになりました。また、都道府県、市町村ともに、自殺対策計画の策定が義務づけられました。これらの自殺対策基本法の改正内容をよく学習しておいてください。

精神保健の視点から見た家族の課題とアプローチ

 家族の課題として、ドメスティック・バイオレンス、子育て不安と児童虐待、介護負担と高齢者虐待、ひきこもり、グリーフケア等が繰り返し出題されています。第18回では、マタニティブルーズが産後うつとの比較で出題されました。

 第19回では、要保護児童対策地域協議会の児童福祉法上の規定が出題されました。また家庭内の問題を相談する機関とその役割として、配偶者暴力相談支援センター、ひきこもり地域支援センター、地域包括支援センター、児童家庭支援センター、発達障害者支援センターが出題されています。それぞれの機関の法的位置づけと役割を把握しておきましょう。

 配偶者からの暴力、児童虐待、高齢者虐待等については、それぞれの法律における規定である法制度を理解し整理しておきましょう。また、それぞれの暴力や虐待の実態についてもよく出題されていますので、報告書等で実態を把握しておきましょう。

精神保健の視点から見た学校教育の課題とアプローチ

 第19回では、この分野からの出題はありませんでしたが、いじめや不登校、校内暴力、自殺、非行等についての出題がみられます。文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動等指導上の諸問題に関する調査」について、文部科学省のホームページで内容を確認しておきましょう。また、いじめや不登校については、それぞれの定義も正確に理解しておきましょう。

 第18回では、「子どもの自殺が起きた時の緊急対応の手引き(平成22年)」(文部科学省)からの出題がありました。今後もこの手引きに関しては出題の可能性が考えられますので、一度は目を通しておくことをおすすめします。

 教師のバーンアウトや精神疾患による休職の実態、学校保健安全法等も出題範囲になっており、第18回ではスクールソーシャルワーカーの業務に関する出題がありました。

 いじめや不登校、貧困などが複雑に絡み合っている、学校現場における児童の諸課題に対して、スクールソーシャルワーカーの役割の重要性が増してきていますので、スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領(平成25 年4 月1 日付:初等中等教育局長決定)等にも目を通して、スクールソーシャルワーカーの位置づけ、役割等についての具体的な事例問題にも対応ができるようにしておきましょう。

精神保健の視点から見た勤労者の課題とアプローチ

 この分野は極めて出題率が高く、第17回では労働者の健康について労働関係法規が、第18回では「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度」が、第19回では労働安全衛生法、過労死等防止対策推進法、産業保健総合支援センター、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き、男女雇用機会均等法が出題されました。

 非正規職員の増加と正規職員の過重労働、また、職場におけるうつ病の増加や過労死など、長期休業や自殺との関連において、職場でのメンタルヘルス対策が急務となっていますので、今後も出題の可能性は高いと思われます。

 労働契約法、労働基準法、労働安全衛生法のそれぞれの法律の目的と性格、内容を整理し、法体系を理解するとともに、「心理的負荷による精神障害の認定基準(精神障害者の労災認定基準)」「事業場における労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」等にも目を通しておきましょう。

精神保健の視点から見た現代社会の課題とアプローチ

 災害関係では、災害対策基本法における施策と、被災者の精神的な外傷への対応を押さえておきましょう。第19回では、災害時の精神保健福祉活動に関する用語とその内容が出題されました。今回は後ほど、この分野を取り上げていきたいと思います。

 犯罪被害者への支援については、犯罪被害者等基本法等の被害者への支援体制施策をよく理解しておきましょう。第16回では犯罪被害者等基本法が、第17回では「犯罪被害者に対する急性期心理社会支援ガイドライン」が出題されました。精神保健福祉士として踏まえておくべき留意事項を整理しておくとよいでしょう。

 現代社会の課題としてのニートや貧困問題、フリーター、ホームレスの実態については、全国調査の結果等を確認しておきましょう。また、ホームレス自立支援法におけるホームレスの定義やホームレス対策、ホームレスの実態についても理解しておきましょう。

 性同一性障害については第16回で出題されています。それほど頻出の分野ではありませんので、「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」に目を通しておく程度でよいでしょう。

精神保健に関する対策と精神保健福祉士の役割

 アルコール対策は、頻出分野です。アルコール患者の実態と特徴、うつ病や自殺との関連、WHO(世界保健機構)によるアルコール対策、健康日本21(第2次)などのわが国のアルコール施策について学習しておきましょう。また第17回試験で、アルコール健康障害対策基本法が出題されていますので、アルコール健康障害の定義や基本計画策定等についての規定を整理しておきましょう。

 薬物依存対策は、しばらく出題がみられませんでしたが、第19回で精神作用物質の乱用対策として、アルコール依存、薬物乱用対策について総合的な出題がありました。危険ドラッグの使用やそれによるさまざまな事故が社会的にも注目されています。第四次薬物乱用防止5か年戦略の要点やダルク等の薬物依存症当事者活動についても、理解を深めておきましょう。

 認知症高齢者施策については、制度的な面として、認知症疾患医療センター、認知症地域支援推進員、認知症サポーターキャラバン、認知症サポート医、認知症地域支援施策推進事業等について整理しておくとよいでしょう。

 ひきこもり対策としては、「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」が厚生労働省から出されています。ひきこもりの定義や実態、地域若者サポートステーション等について第16回で出題されていますので、気をつけておきましょう。