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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第3回 精神疾患とその治療

 皆さんこんにちは。春の花々が目を楽しませてくれています。新年度、それぞれ新たな思いでスタートを切ったことと思います。受験対策は早すぎることはありません。少しずつ着実に学習を進めていきましょう。

 この講座では、まず専門科目、共通科目の順で受験対策を行っていきたいと思います。今回は「精神疾患とその治療」を取り上げていきます。出題基準と過去の出題実績をふまえて傾向を分析し、どのような対策を立てていったらよいのかを一緒に考えていきたいと思います。

出題範囲

 この科目の出題範囲は、大きく、「1.精神疾患総論」「2.精神疾患の治療」「3.精神科医療機関の治療構造及び専門病棟」「4.精神科治療における人権擁護」「5.精神科病院におけるチーム医療と精神保健福祉士の役割」「6.精神医療と福祉及び関連機関との間における連携の重要性」という6つの分野に分かれています。

 第19回の精神保健福祉士国家試験をみると、「1.精神疾患総論」から6問、「2.精神疾患の治療」から2問、「3.精神科医療機関の治療構造及び専門病棟」から平成27年度自殺対策白書で1問、平成26年患者調査(厚生労働省)で1問という構成でした。

 この出題構成からわかるように、重点的に学習する必要があるのは、「1.精神疾患総論」と、「2.精神疾患の治療」の分野になるでしょう。「4.精神科治療における人権擁護」の分野では、入院形態、隔離・拘束、精神保健指定医の判断の必要の有無や行動制限に関して、入院時の処遇という視点からも学習しておく必要があるでしょう。「6.精神医療と福祉及び関連機関との間における連携の重要性」の分野からは、過去に医療観察法の出題実績があります。

 では、出題頻度の高い分野について、学習しておくべき内容を見ていきたいと思います。

1.精神疾患総論

 「精神医学、医療の歴史と現状」からは、今回は出題がありませんでした。第18回では、ブロイラー、クラーク、ピネル、バザーリア、ジョーンズという人名が提示されています。これらの人物について、それぞれの業績を理解しておきましょう。また、精神医学の発展の歴史も押さえておきたいところです。クレペリンやブロイラー、シャルコー、フロイト、シュナイダー、呉秀三、森田正馬、野口英世等の業績を確認しておきましょう。

 「精神現象の生物学的基礎」からは、第19回では脳と神経というテーマで出題されました。小脳と脳幹の違いや仕組みと役割は定番問題でしたが、視床、視床下部、末梢神経、体性神経、自律神経については、少し目先の変わった出題でした。この分野は、共通科目の「人体の構造と機能及び疾病」と重なる内容なので、並行して学習しておくとよいでしょう。

 第18回では、脳の障害部位と症状に関する出題がありました。脳の仕組みと機能については必ず押さえておきたいところです。具体的には、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、小脳、偏頭体、大脳基底核等のそれぞれの部位の働きと、それぞれの箇所の損傷時の症状を確認しておきましょう。失語症や認知症等との関係でも出題されていますので、気をつけておきましょう。

 「精神疾患の成因と分類」からは、第19回では国際分類法として、ICD-10に基づく疾患分類について、「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(F4)」に該当する疾患が出題されています。ICD-10による疾病分類は非常に出題率が高く、ほとんど毎回出題されていますから、F0からF9の疾病分類とそれぞれの疾病の症状をよく学習しておいてください。

 精神疾患の成因については、第18回、第19回とも出題がありませんでした。第17回では、「精神疾患の診断分類と発症要因」として出題されています。精神的ストレスによるものは心因性、統合失調症や気分障害は内因性、身体的原因や器質的原因によるものは外因性と、全体の枠組みを押さえておくと理解しやすいでしょう。

 「代表的な疾患」として、第19回では「認知症」、「解離性(転換性)障害」が出題されました。このほか、アルコール関連障害、統合失調症、気分障害、睡眠障害、パーソナリティ障害、行動障害、発達障害などの代表的な疾患についても学習しておきましょう。

 「精神症状と状態像」の分野は出題率が高く、第17回、第18回、第19回とも連続して出題されています。統合失調症や気分障害、解離性障害、認知症等、具体的な疾患とそれぞれの症状を整理しておきましょう。今回は後ほど、この分野を取り上げていきたいと思います。

 「診断の手順と方法」の分野からは、過去数年間、出題実績はありません。面接の手順と留意事項について、「3.精神科医療機関の治療構造及び専門病棟」の分野の「外来診療」とも重なる分野ですので、並行して学習しておくとよいでしょう。

 「身体的検査と心理的検査」については、第17回では身体的検査として頭部CT検査が、第18回では脳波による診断の疾患について、第19回では質問紙法による心理検査についての出題がありました。

 身体的検査を必要とする疾患は限られていますから、必要最低限の疾患については押さえておくとよいでしょう。心理検査としての精神症状の評価尺度や一般的な心理テストについては、共通科目の「心理学と心理的支援」と重なる内容ですから並行して確認しておきましょう。

2.精神疾患の治療

 大項目の2番目に位置するこの分野は、ほとんど毎回の出題がみられます。

 「精神科薬物療法」については、第17回試験では抗精神病薬による治療が、第18回試験では向精神薬とその作用について、第19回では向精神薬とその副作用が出題されました。

 定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬、精神刺激薬、抗てんかん薬などの薬理作用や効果と副作用、使用に際して注意すべきことについて整理しておきましょう。

 「電気けいれん療法などの身体療法」については、第15回、第16回に連続して出題がありましたが、それ以降の出題はありません。修正型電気けいれん療法について、適用対象疾患、適用症状と適用方法、適用時の留意事項、副作用などを理解しておきましょう。

 「精神療法」は出題率が高い分野です。第19回では認知療法についての出題でした。精神療法の種類とその基盤となる考え方、適用対象疾患を押さえておきましょう。認知行動療法、森田療法、自律訓練法、精神分析療法、家族療法、支持的精神療法等についても、共通科目の「心理学理論と心理的支援」と重複する分野ですので、並行して学習しておくとよいでしょう。

 「精神科リハビリテーション」の分野からは、第19回は出題がありませんでしたが、第18回では、社会生活技能訓練(SST)の具体的技法が出題されています。家族療法、心理教育などについても、精神保健福祉援助技術とあわせて学習しておきましょう。

 「環境・社会療法」では、作業療法やデイケア、ナイトケア、デイナイトケア、ショートケア等の制度的な内容も含めて学習しておきましょう。

3.精神科医療機関の治療構造及び専門病棟

 この分野からは、第18回、第19回に連続して患者調査が出題されました。患者調査については「精神保健の課題と支援」の科目で出題されることもあります。出題傾向をみると、細かい数字というより、全体の推移や動向に関する内容を問うものになってきています。入院患者、通院患者について、疾患と傾向を押さえておくとよいでしょう。

 第16回試験で「外来診療」として初診時の面接についての出題がありました。主訴や既往歴、家族の状況等の情報収集の手順や留意すべき事柄、面接者の言動が与える影響等についても理解をしておくとよいでしょう。

4.精神科治療における人権擁護

 第19回では出題がありませんでしたが、第17回、第18回と連続して出題がありました。第17回は身体拘束や隔離の際の精神保健指定医の役割が、第18回は入院形態に関する問題でした。入院形態や入院時処遇における精神保健指定医の役割等について整理しておくとよいでしょう。また、「隔離、拘束のあり方」については、そのための条件、遵守事項等を確認しておいてください。「移送制度による入院」についての出題もまだありませんが、移送のための条件、移送の対象、手順等についても確認しておくとよいでしょう。

6.精神医療と福祉及び関連機関との間における連携の重要性

 この分野からの出題実績はあまりありませんが、「退院促進の支援」では包括型地域生活支援プログラム(ACT)の基本的内容を、「医療観察法」では医療観察制度の概要を整理学習しておきましょう。医療観察制度は、他科目においても出題されていますから、十分な学習をしておくことをおすすめします。

 以上、この科目の全体を概観してきましたが、今回は解離性(転換性)障害の症状について取り上げていきたいと思います。