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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第26回 精神障害者の生活支援システム

 皆さん、こんにちは。学習は順調に進んでいますか。受験申込書の受付期限は、10月7日(金)まで(消印有効)です。手続きがまだの方は、なるべく早めにすませておきましょう。

 今回の「精神障害者の生活支援システム」は、精神障害者の概念、精神障害者の生活の実態、精神障害者の生活と人権、居住支援、就労支援、地域における精神障害者の生活を支援するシステム、市町村における相談援助等が出題範囲になっています。

 実際に地域で生活する精神障害者に必要な制度を具体的に想定しながら、学習していきましょう。では、最初に前回の課題の解説をしておきましょう。

第18回 精神保健福祉士国家試験 「精神保健福祉に関する制度とサービス」

問題65 更生保護制度に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 更生保護施設は、保護観察対象者等のための通所施設である。
  • 2 BBS会は、更生保護女性会の略称である。
  • 3 保護観察官の任期は、2年であるが再任可能である。
  • 4 協力雇用主の業種は、サービス業が約半数を占める。
  • 5 保護司は、非常勤の国家公務員である。

正答 5

解答解説

  • 1 誤り。更生保護施設は、保護観察対象者等のための入所施設です。保護観察所長の委託による宿泊保護対象者としており、保護観察期間中の者および更生緊急保護者で、自立困難な者が利用できます。更生保護施設は、法務大臣が認可する更生保護法人、社会福祉法人、NPO法人等が運営主体となっています。更生保護施設には補導員が配置されており、被保護者に対して社会復帰のための処遇を実施します。
  • 2 誤り。BBS会は、更生保護女性会の略称ではなく、Big Brothers and Sisters Movementの略称で、犯罪、非行予防の青年ボランティア団体です。様々な問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援するとともに、犯罪や非行のない地域社会の実現を目指しています。
  • 3 誤り。保護観察官は、常勤の公務員ですから任期はありません。地方更生保護委員会と保護観察所に配置され、保護観察所長の指示の下、保護観察および生活環境の調整等を実施します。任期が2年で再任が可能なのは保護司です。
  • 4 誤り。協力雇用主の業種としては、建設業、サービス業、製造業の順となっています。 協力雇用主制度は、受刑者および少年院在院者が、施設から出所後あるいは退院後の就職先をあらかじめ確保することによって、円滑な社会復帰を進め再犯防止につなげるために、平成18年度から法務省が厚生労働省と協力して実施している制度です。
  • 5 正しい。保護司は、保護司法に基づく非常勤の一般職の国家公務員です。無報酬のボランティアで、任期は2年で再任が可能です。保護司は、地方更生保護委員会、保護観察所長の指揮監督を受けながら、社会奉仕の精神をもって、犯罪をした者の改善および更生を助け、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、地域社会の浄化をはかり、個人および公共の福祉に寄与することを使命としています。保護観察所長が保護観察所に設置されている保護司選考会の意見を聴取したうえで、法務大臣に保護司を推薦し、法務大臣が委嘱します。

 いかがでしたか。「精神保健福祉に関する制度とサービス」では、精神障害者関連法と諸制度について幅広く学習しておきましょう。では、今回の「精神障害者の生活支援システム」に入っていきましょう。今回は、精神障害者の就労支援のモデルについて取り上げていきたいと思います。

障害者の就労支援モデル

 障害者の地域生活を支援するためのモデルの一つに、就労支援モデルがあります。就労支援モデルには、身体障害者モデル、知的障害者モデル、ジョブコーチモデル、ACTモデル、IPSモデル等があります。

身体障害者モデル

 我が国の障害者への就労支援は、身体障害者の分野からはじまりました。身体障害者モデルは、医学的リハビリテーションを終了した段階で、職業訓練を行い、十分な職業的能力を習得してから、雇用の現場に移行するというモデルです。これは、軽度の身体障害者には適用が可能ですが、重度障害者には適用が困難でした。

知的障害者モデル

 その後、徐々に知的障害者に対する就労支援が行われるようになってきました。知的障害者モデルは、専門職が主導してアセスメント、プランニングを行い、知的障害者がそれに従って就労していくというモデルです。

 このモデルも、軽度の知的障害者に対しては有効でしたが、重度の知的障害者に対しては、適用が困難でした。また職場定着にも困難がありました。

ジョブコーチモデル

 ジョブコーチモデルは、知的障害者を対象にアメリカで、援助つき雇用モデルとして制度化されました。我が国ではこの援助つき雇用モデルを取り入れ、雇用前の職場実習において生活支援パートナーが支援し、障害者雇用に成果をあげてきました。

 雇用後に不適応になり離職してしまう障害者に対し、雇用後の支援を継続して試行的に実施してきた結果、職場への定着率も上がり、その支援を事業主も肯定的に評価するようになりました。我が国でこれらの支援は、最初、民間の有志によって草の根的に行われてきましたが、障害者雇用促進法に規定され、現在のように制度化されました。

IPSモデル

 ジョブコーチモデルは、知的障害者には有効でしたが、精神障害者については、職場定着率があまり上がりませんでした。そのため、精神障害者については、ストレングス視点に立った支援の重要性が認識されてきました。

 精神障害者自身の本来の力を引き出すエンパワメントを重視した、精神障害者の地域生活を支援する包括型地域生活支援(ACT)が実践されるようになり、この、本人のニーズを重視した支援方法を、就労支援に導入した、IPSモデルが提唱されるようになってきました。


 IPSモデルは、Individual Placement and Supportの頭文字をとった略で、「個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用」という意味で、個別の就労支援と個別の職場定着支援を中心としたモデルです。

 このモデルでは、重い精神障害をもつ人であっても、本人の興味や強みにあわせて職場を選び、働くことができるという、基本的な考え方に立っています。働きたいという気持ちを最優先し、就労そのものが治療であると考え、重度障害であっても一般就労を目指すモデルです。

 IPSモデルは、症状が重いことを理由に就労支援の対象外とはしません。就労支援の専門家と医療保健の専門家でチームを作り支援します。職業については、援助者や専門家が判断するのではなく、本人の興味や好みに基づいて選択します。保護的就労ではなく一般就労をゴールとする、生活保護や障害年金などの経済的な相談に関するサービスを提供する、働きたいと本人が希望したら迅速に就労支援サービスを提供する、就業後のサポートは継続的に行うということを特徴としています。