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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第25回 精神保健福祉に関する制度とサービス

 皆さんこんにちは。今回は「精神保健福祉に関する制度とサービス」を取り上げていきたいと思います。この科目は、障害者関連法における精神障害者のための諸制度、更生保護制度、医療観察制度、社会資源の調整・開発に係る社会調査の意義、目的、具体的な方法などがその主な内容となっています。

 では最初に、前回の「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」の課題の解説をしておきましょう。

第18回 精神保健福祉士国家試験 「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」
[ 事例 ]
 Mさん(67歳、男性)は大学を卒業し会社員として勤めていたが、35歳で統合失調症を発症したため退職し、障害厚生年金を受給した。56歳からU精神科病院に6回目の入院をしていた。両親は既に他界しており、きょうだいがいないMさんには身寄りがない。Mさんは時に幻聴と被害妄想が再燃して頭を抱えて臥床することもあるが、同室の患者と談笑する一面もあった。長期間の入院で生活能力や身体的機能の低下がみられ、身の回りの整理や着替えなどに一部介助が必要な状態である。U精神科病院のA精神保健福祉士は、退院に消極的なMさんを何とか退院に導きたいと、2年前からMさんに外出グループのリーダーをお願いしていた。また、長期入院経験者を病院に招いて、退院後に利用できるサービスや、自分なりの生活が送れる楽しさを語ってもらうなど、退院後のイメージが持てるように、様々な働きかけを続けた。その結果、少しずつMさんの気持ちが退院に向くようになってきた。(問題49)

問題49 次のうち、A 精神保健福祉士が行ったアプローチとして、適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 ナラティブアプローチ
  • 2 エンパワメントアプローチ
  • 3 心理社会的アプローチ
  • 4 問題解決アプローチ
  • 5 課題中心アプローチ

正答 2

解答解説

  • 1 誤り。ナラティブアプローチは、クライエントが体験した人生を通して作り上げてきた、クライエント自身の人生観を尊重しながら、ワーカーはクライエントとの対話によって、クライエントのものの見方や考え方、受け止め方を、再構築していくことを援助するアプローチ方法です。ものの見方や考え方や受け止め方を再構築(リフレーミング)し、否定的なものの見方を、肯定的なものの見方に変えられるように援助します。この事例では、A精神保健福祉士は、Mさんに対して、認知の再構築にかかわる対話によるアプローチは行っていないので該当しません。
  • 2 正しい。エンパワメントアプローチは、社会的抑圧によって、本来もっていたパワーを出し切ることができずに、パワレス状態に陥っていたその状態から、本来のパワーを取り戻す運動理念から生まれたアプローチ方法です。A精神保健福祉士は、Mさんに対して、外出グループのリーダーを依頼したり、長期入院経験者の退院後の様子を語ってもらうなどして、Mさんの本来もっている能力を活かせるような働きかけを行っています。
  • 3 誤り。心理社会的アプローチとは、人を「状況の中の人」としてとらえ、利用者とワーカーとのコミュニケーションによって、利用者のパーソナリティの変容を実現し、人と環境との機能不全を改善しようとするアプローチ方法です。置かれた環境や状況の中で、その環境との関係がマイナスに機能してしまっている状況から、プラスに機能していくように、ソーシャルワーカーがクライエントの人格に働きかけて、クライエントの人格を変容させていこうとするアプローチです。A精神保健福祉士は、Mさんに対して、このアプローチはとっていないため該当しません。
  • 4 誤り。問題解決アプローチは、ケースワークは援助を必要としている人(Person)、抱えている問題(Problem)、援助が展開される機関としての場所(Place)、援助の過程(Process)の4つのPから構成されるとし、問題解決の主体はクライエントであるとして、ワーカビリティという概念で課題を解決しようとするアプローチです。クライエントが自分自身で問題を解決しようとする動機づけをし、クライエント自身の問題解決能力を発揮できるよう支援していくというアプローチ方法ですが、A社会福祉士は、Mさんのワーカビリティを活用するという明確なアプローチはみられないので該当しません。
  • 5 誤り。課題中心アプローチとは、利用者自身が課題を自覚し、短期目標を設定して援助を行うアプローチ方法です。援助者は、クライエント自身が課題を自覚できるように、一緒に生活における課題を明確化し、短期間に取り組めるような具体的な課題を設定し、それに取り組むことで、問題の解決を図っていこうとするアプローチ方法です。Mさんは、明確に自分自身の課題を自覚しているという記述は見られませんので、該当しません。

 いかがでしたか。「精神保健福祉援助技術の理論と相談援助の展開」では、精神科リハビリテーションの概念、精神科専門療法、家族教育プログラム、チーム医療、ケースワーク、グループワーク、スーパービジョン、ケアマネジメント等の各援助技術の理論と展開方法もよく学習しておきましょう。

 では、今回の「精神保健福祉に関する制度とサービス」に入っていきます。今回は、更生保護制度について取り上げていきたいと思います。目的やしくみ、手続き、支える制度や人材等に注意して学習していきましょう。