メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第3回 精神疾患とその治療

 皆さんこんにちは。春の花々が目を楽しませてくれ、初夏の気配が感じられる頃となってきましたね。新年度の環境の変化にはもう慣れましたか。今回から、専門科目の対策を行っていきたいと思います。

 今回は「精神疾患とその治療」を取り上げていきましょう。出題基準と過去の出題実績を踏まえて、どのような対策を立てていったらよいのかを一緒にみていきたいと思います。

出題範囲

 この科目の出題範囲は、大きく「1.精神疾患総論」、「2.精神疾患の治療」、「3.精神科医療機関の治療構造及び専門病棟」、「4.精神科治療における人権擁護」、「5.精神科病院におけるチーム医療と精神保健福祉士の役割」、「6.精神医療と福祉及び関連機関との間における連携の重要性」という6つの分野(大項目)に分かれています。

 第18回の精神保健福祉士国家試験をみると、「精神疾患総論」から6問、「精神疾患の治療」から2問、「精神科医療機関の治療構造及び専門病棟」から1問、「精神科治療における人権擁護」から1問という構成で出題されており、例年に比べて大きな変化はありませんでした。

 以上でわかるように、重点的に学習する必要があるのは、「精神疾患総論」と、「精神疾患の治療」の分野になるでしょう。また第17回および第18で連続して出題されている「精神科治療における人権擁護」の分野の、入院形態、隔離・拘束、精神保健指定医の判断の必要の有無や行動制限に関して、入院時の処遇という視点からも学習しておく必要があるでしょう。

 「精神医療と福祉及び関連機関との間における連携の重要性」の分野では、医療観察法についての学習も求められています。

 では、出題頻度の高い分野について、学習しておくべき内容を見ていきたいと思います。

精神疾患総論

 「精神医学、医療の歴史と現状」からは、第17回は出題がありませんでしたが、第18回では、精神科病院の廃止を訴えた人物についての出題がありました。ブロイラー、クラーク、ピネル、バザーリア、ジョーンズという人名が提示されています。これらの人物について、それぞれの業績を理解しておきましょう。

 また、西欧における精神医療の理念と、我が国の精神医学の発展の歴史を押さえておきたいところです。具体的には、クレペリンやブロイラーによる精神疾患分類の基礎的概念の体系化、シャルコーの催眠研究を基盤としたフロイトの精神分析理論、シュナイダーの統合失調症の1級症状、呉秀三、森田正馬、野口英世等の業績を確認しておきましょう。

 「精神現象の生物学的基礎」からは、第17回では出題がありませんでしたが、第18回では、脳の障害部位と症状に関する出題がありました。脳の仕組みと機能については必ず押さえておきたいところです。具体的には、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、小脳、偏頭体、大脳基底核等のそれぞれの部位の働きと、それぞれの箇所の損傷時の症状を確認しておきましょう。失語症や認知症等との関係でも出題されています。

 「精神疾患の成因と分類」では第18回では「精神疾患の成因」についての出題がありませんでしたが、第17回では「精神疾患と診断分類と発症要因」として出題されました。精神的ストレスによるものは心因性、統合失調症や気分障害は内因性、身体的原因や器質的原因によるものは外因性と、全体の枠組みを押さえておくと理解しやすいでしょう。

 「精神疾患の分類」については、第18回では「国際分類法」から、ICD-10の「精神及び行動の障害に関する疾病分類」が出題されました。この分野は大変出題率が高いので、F0からF9の各疾患と症状、診断基準を整理しておきましょう。今回は後ほど、この箇所を重点的に取り上げていきたいと思います。

 なお、アメリカ精神医学会の新たなDSM-5による分類法の概念と構成、特徴についても理解を深めておきましょう。DSM-5は、多元(ディメンション)診断を採用し、障害を明瞭に区別して捉えるのではなく、障害をスペクトラム(連続体)として捉え、統合失調症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害等の概念で分類するようになったことを押さえておきましょう。

 「代表的な疾患」の分野では、認知症、アルコール関連障害、統合失調症、気分障害、神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害、摂食障害、睡眠障害、パーソナリティ障害、行動障害、発達障害などの代表的な疾患について、学習しておいてください。

 「精神症状と状態像」の分野は出題率が高く、第17回、第18回とも「状態像と症状」として出題されています。統合失調症や気分障害、解離性障害、認知症等、具体的な疾患とそれぞれの症状を整理しておくとよいでしょう。

 「診断の手順と方法」の分野は、過去第16回、第17回、第18回とも出題実績はありませんでした。面接の手順と留意事項について、【精神科医療機関の治療構造及び専門病棟】の「外来診療」とも重なる分野ですので、並行して学習しておくとよいでしょう。

 「身体的検査と心理検査」については、第17回試験では身体的検査として頭部CT検査が、第18回では脳波による診断の疾患について出題されました。身体的検査を必要とする疾患は限られていますから、必要最低限の疾患については押さえておくとよいでしょう。心理検査としての精神症状の評価尺度や一般的な心理テストについても、共通科目の「心理学理論と心理的支援」と並行して確認しておきましょう。

精神疾患の治療

 大項目の2番目に位置するこの分野は、ほとんど毎回の出題がみられます。

 「精神科薬物療法」については、第17回試験では抗精神病薬による治療が、第18回試験では向精神薬とその作用について、出題されました。

 定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬、精神刺激薬、抗てんかん薬などの、薬理作用や効果と副作用、使用に際して注意すべきことについて整理しておきましょう。

 「電気けいれん療法などの身体療法」については、第15回、第16回に連続して出題がありましたが、17回、18回は出題がありませんでした。修正型電気けいれん療法について、適用対象疾患、適用症状と適用方法、適用時の留意事項、副作用などを理解しておきましょう。

 「精神療法」は出題率が高い分野です。精神療法の種類とその基盤となる考え方、適用対象疾患を押さえておきましょう。認知行動療法、森田療法、自律訓練法、精神分析療法、家族療法、支持的精神療法等についても、共通科目の「心理学理論と心理的支援」と重複する分野ですので、並行して学習しておくとよいでしょう。

 「精神科リハビリテーション」については、第18回では社会生活技能訓練(SST)の具体的技法が出題されました。家族療法、心理教育などについて、精神保健福祉援助技術とあわせて学習しておきましょう。

 「環境・社会療法」としては、作業療法やデイケア、ナイトケア、デイナイトケア、ショートケア等の制度的な内容も含めて学習しておきましょう。

精神科医療機関の治療構造及び専門病棟

 この分野からは、第18回では「平成23年患者調査」が出題されました。患者調査については、「精神保健の課題と支援」の科目で出題されることもあります。細かい数値というよりも、推移や動向を理解しておくと、応用力が身につきます。

 第16回試験では、「外来診療」の分野から、初診時の面接についての出題がありました。主訴や既往歴、家族の状況等の情報収集の手順や留意すべき事柄、面接者の言動が与える影響等について理解を深めておきましょう。

精神科治療における人権擁護

 「精神科治療と入院形態」として、第17回、第18回と連続して出題がありました。第17回は医療保護入院に関して、第18回は入院形態に関する問題でした。入院形態や入院時処遇における精神保健指定医の役割等について整理しておくとよいでしょう。また、「隔離、拘束のあり方」については、そのための条件、遵守事項等を確認しておいてください。「移送制度による入院」についての出題はまだありませんが、移送のための条件、移送の対象、手順等についても確認しておくとよいでしょう。

精神医療と福祉及び関連機関との間における連携の重要性

 この分野からの出題実績はあまりありませんが、「退院促進の支援」では包括型地域生活支援プログラム(ACT)の基本的内容を、「医療観察法」では医療観察制度の概要を整理学習しておきましょう。医療観察制度は、他科目においても出題されていますから、十分な学習をしておくことをおすすめします。

 以上、この科目の全体を概観してきましたが、今回は、ICD-10における「精神及び行動の障害」に関して取り上げていきたいと思います。