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伊東先生の実技試験ポイント解説

石橋 亮一(いしばし りょういち)

 3月6日(日)に第28回介護福祉士国家試験「実技試験」が行われました。受験された皆様、お疲れ様でした。いかがだったでしょうか。試験委員が見守るなか、緊張してしまって、いつものようには実施できなかったという方もいらっしゃるかと思います。
 今回の試験について、伊東利洋先生に解説をお願いしました。

プロフィール伊東 利洋(いとう としひろ)

有限会社いとう総研 代表取締役
 長年の介護現場、介護研究において身に付けた、「魅せる介護」の研修で多くの支持を得てきた。現在は、経営から接遇研修まで介護企業をサポートする会社に従事している。
 介護福祉士試験の実技試験対策では、緊張下でも実践できる独自の研修プログラムで、ほとんど受講生が合格してきた。
 著書に、『介護福祉士国試ナビ』(中央法規出版)、『社会福祉士国試ナビ』(中央法規出版)、『ケアマネジャー試験合格指南書』(日総研出版)、『社会保障制度指差しガイド』(日総研出版)などがある。

第28回 介護福祉士国家試験 実技試験のポイント解説

 介護福祉士「実技試験」を受験された皆さま、お疲れさまでした。とても緊張した時間だったと思います。普段の実力が発揮できたでしょうか。

 直近2年は変則的な問題でしたが、今年はオーソドックスな車いすからの移乗の問題が出題されました。直近の出題としては、第24回の試験『椅子→車いす→段差越え』の問題と第25回の試験『車いす→椅子』に近い出題でしたので、準備ができている受験生も多かったのではないでしょうか。
 早速、第28回介護福祉士実技試験について、問題の整理とポイントの解説をしていきたいと思います。

第28回 実技試験問題

試験課題

 山田さん(85歳)は、右上下肢に麻痺があります。移乗は一部介助が必要です。車いすを使用して、全介助で移動しています。

 山田さんは、テラスでレクリエーションを終えて、車いすに浅く座っています。
 山田さんは、「少し疲れた」と言って、飲み物を希望しています。
 途中にある段差を越えて、食堂まで移動してください。そして、椅子に移乗して、飲み物をすすめるまでの介護を行ってください。

 山田さんの返事は、「はい」または、うなずくだけです。

(試験時間は5分間以内です。)

試験室見取図

(注)試験室の出入口は、見取図と異なる場合があります。


問題の整理

1.「利用者」の心身の状態

  • (1)山田さん(85歳)⇒「名前」で呼びかける
  • (2)右上下肢に麻痺がある ⇒ 移乗時は「左」側から移乗する
  • (3)移乗には一部介助が必要 ⇒ 椅子に移乗時などに残存能力を活用する
  • (4)全介助で移動している ⇒ 車いす操作は全介助で行う
  • (5)返事は「はい」または「うなずく」だけ ⇒「閉じられた質問」をする

2.「利用者」の現在の状況

  • (1)テラスでレクリエーションを終えて、車いすに浅く座っている
  • (2)「少し疲れた」と言って、飲み物を希望している

3.介護内容

  • (1)車いすでの姿勢を整える
  • (2)車いすで移動し、途中で段差を越え、食堂まで移動する
  • (3)車いすから食堂の椅子に一部介助で移乗する
  • (4)飲み物をすすめる

4.試験環境について(試験問題には、表記されていない内容)

  • (1)車いすに浅く座っているとき、フットレストには足がのっていない状態だった
  • (2)車いすは自走用の車いすだった
  • (3)段差は、数センチの高さの長細い板が置いてあった
  • (4)椅子は、ひじ掛けのないタイプの椅子であった
  • (5)飲み物は、2種類用意されていた

5.試験時間

 5分間以内

ポイント解説

 採点のポイントになりそうな点を「出題基準」と「介護の内容」「制限時間」にわけて考えてみたいと思います。

1.出題基準の点から

実技試験の出題基準
 大項目中項目28回試験の出題内容
1介護の原則1)安全・安楽転落・転倒・強打の防止
麻痺側の保護
誤嚥の予防
2)自立支援残存機能の活用
意欲の促進
3)個人の尊厳コミュニケーション
事前の説明と承諾
自己決定
接遇(言葉遣い・態度)
2健康状況の把握1)利用者の健康状況の把握外見(観)の変化を察知する観察
意識(反応)状況の変化を察知する能力
体温、脈拍、呼吸の測定
2)介護者の健康管理ボディメカニクス
感染予防
3環境整備1)室内環境換気
温度、湿度
冷暖房
清潔
採光
2)ベッドベッドの機能
ベッドメイキング、リネン交換
4身体介護1)体位と体位変換体位の種類
体位(身体)の保持と膝折れ防止
テコの原理、ボディメカニクスの活用
体位の変換
2)移乗動作車いす
ポータブルトイレ
ストレッチャー
椅子
3)移動・歩行介助ベッド上での移動
車いす、ストレッチャーでの移動
肢体不自由者の歩行介助
視覚障害者の歩行介助
4)食事の介助食事の種類と介助
食前の介助
摂食の介助
食後の介助
5)排泄の介助トイレ及びポータブルトイレへの誘導と介助
便器・尿器の介助
おむつの介助
6)保清の介助清拭
入浴・シャワー浴
足浴・手浴
洗面
口腔ケア・義歯の取り扱い
洗髪
7)衣服の着脱衣服の着脱
寝衣の交換
衣服のたたみ方
8)整容の介助髪をとかす
ひげそり

  • (1)安全・安楽
    ⇒ 車いすの移動の前に、フットレストに足を乗せたか
    ⇒ 「段差を越える」「椅子に移乗する」際、転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか
  • (2)自立支援
    ⇒ 「車いすに深く腰掛ける」「椅子への移乗」の際に、利用者の残存機能を活用する介護を行うことができたか
  • (3)個人の尊厳
    ⇒ 言葉遣いは適切であったか
    ⇒ 「山田さん」と名前で呼ぶことができたか
    ⇒ 声かけの際は、目線を揃えて話しかけたか。
  • (4)事前の説明と同意
    ⇒ 介助開始時」「車いすに深く腰掛ける」「段差を越える」「椅子への移乗」の際に、介助方法などを事前に説明し同意を得たか
  • (5)自己決定
    ⇒ 「椅子への移乗方法」「飲み物の選択」など、自己決定を促す声かけができたか
  • (6)健康状態の把握
    ⇒ 「介助開始前」「椅子に移乗後」などに「気分は悪くないですか」など、体調に配慮する声かけができたか

2.「介護内容」の点から

  • (1)車いすでの姿勢を整える
    ⇒ 車いすに深く腰掛ける介助を適切に行えたか
    ※介助方法は、前方から介助、後方からの介助が考えられますが、どちらでも、利用者に事前の同意を得て行えば大丈夫だと思われます
  • (2)車いす操作
    ⇒ 適切に全介助で、移動できたか
    ⇒ 段差を越えるときは、ティッピングレバーを活用し、安全・安楽に行えたか
  • (3)椅子に移乗する
    ⇒ 健側から一部介助で移乗できたか
    ※椅子への移乗方法は、オーソドックスに椅子にサイドから移乗、長机を活用して移乗するなど、安全・安楽であればどのような方法でもよいと思われます
  • (4)飲み物をすすめる
    ⇒ 2種類ある飲み物を説明し、利用者に選んでもらったか


3.制限時間

 「5分間以内」に課題を終了することができたか。

合格基準

過去問題の傾向と分析
 時間名前年齢身体状況種別介護内容
移動・移乗着脱その他
第20回5分鈴木85右半身麻痺歩行ベッド⇒端座位⇒歩行⇒いす 飲み物の選択
第21回5分田村79右上下肢麻痺移乗いす⇒車いす⇒車いす操作上着の着替え衣服の選択
第22回5分金子80左上下肢麻痺移乗ベッド⇒端座位⇒ポータブルトイレズボンを下ろす 
第23回5分山下75右上下肢麻痺歩行いす⇒歩行介助⇒テーブル 用具の選択と用具を持つ介助
第24回5分田中87左上下肢麻痺移乗いす⇒車いす⇒車いす操作⇒段差越え上着の着用 
第25回5分坂田85右上下肢麻痺移乗立位(歩行器型つえ)⇒車いす⇒いす  
第26回5分遠藤80視覚障害歩行いす⇒歩行介助⇒テーブル上着を整えるスプーンを手渡す
第27回5分青木93下肢筋力が低下歩行布団→立ち上がり→杖歩行→いす  
第28回5分山田85右上下肢麻痺移乗車いす⇒車いす操作⇒段差越え⇒いす 飲み物の選択

 今年の試験は、第24回、第25回試験に似ていますので、合格基準は、第24回、第25回試験と同様に、「53.33点」になると予想されます。


 途中で制限時間を迎えた人も、5分間で実施した内容が、半分の出来栄えであれば大丈夫ですので、期待をもって合格発表を待って下さいね。

 3月28日(月)の合格発表まで緊張した日々が続くと思いますが、心穏やかにその時を待ちましょう!

 来年からは実務者研修修了者のみが受験できる仕組みに変わるため、28年続いた実技試験は、基本的には今年で終了となるそうです。
 実技試験の受験生の皆さま、試験委員の皆さま、利用者を演じてくれたモデルさんなど、試験に携わった方々、今まで、本当にお疲れさまでした。