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林先生の受験対策講座

林 和美 (はやし かずみ)

合格率が15.6%という超難関のケアマネ試験。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率よい学習が不可欠です。このコーナーでは、「介護支援分野」について、その秘訣をガイドします。
※毎週火曜日更新!

プロフィール林 和美 (はやし かずみ)

国際医療福祉大学医療福祉学部准教授。
研究領域は、ケースマネジメント・高齢者福祉・地域支援ネットワーク。特養、在宅介護支援センター勤務などを経て、教育の場へ。現在は大学でソーシャルワーカー育成に尽力されています。

第19回 介護支援専門員実務研修受講資格試験の講評

試験の講評をする前に

 本当にみなさまお疲れさまでした。

 受験勉強と受験生であるという何ともいえない毎日のプレッシャーは終わってみれば気分よく、何か解き放たれた気分爽快となるかと思いきや、あの試験問題では多くの受験生が怒りにも似た、不満と何ともいえない気持ちで過ごしておられることと推察いたします。

 「けあサポ」受験対策講座では「試験講評」を「10月6日くらいにアップします」と自ら予告していたのですが、中央法規さんから問題文をもらい、読んでみると、いろいろな思いが私のなかで湧きあがり、10月7日の掲載となってしまいましたことをお詫びします。

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出題者の意図を知りたい

 私は今年のケアマネジャー試験の問題を解いてみてまず思ったのは、「出題者の意図を知りたい」ということでした。

 このいわゆる“ケアマネジャー試験”と呼ばれている試験の正式名称は、「介護支援専門員実務研修受講試験」であり、当初は「介護支援専門員実務研修受講資格試験」と呼ばれていました。介護支援専門員の養成において、第一段階として実施される「実務研修」を受講するための一定のレベルの知識が備わっており、「実務研修」を受ける人のスタートラインでのレベルを、ほぼ同じにするために行われるものです。

 すなわち介護保険制度における適切なケアマネジメントを推し進め、介護保険制度運用の要となる介護支援専門員(ケアマネジャー)を育てるプロセスとして、「介護支援専門員実務研修受講試験」が設定されているのです。

 しかしながら、試験の合格率をはじめ、試験問題として問うている内容にしても出題者として「何をポリシーにして作問しているのか」がわからないのです。つまり、「どんな介護支援専門員になってほしいか」という大前提を理解している作問とは今回の試験からは思えないからです。

  『[七訂]介護支援専門員基本テキスト』(以下「基本テキスト」)には、本試験について「介護支援専門員の業務に関する基礎的知識及び技術を有することを確認する」(「基本テキスト」1巻249ページ)目的で、都道府県が実施主体となって行うと記載されています。

 さらにその基礎的知識については「制度自体の詳細な内容、要介護認定の申請から保険給付、介護報酬、給付管理、審査・支払までの手続きをよく把握し、要介護者等に不利のない運用を行うとともに、介護保険のあらゆる相談等に相当程度対応し得ることが必要となります」(「基本テキスト」1巻226ページ)とされています。また、ケアマネジメントの一連のプロセスおよび保健・医療・福祉にわたる総合的な基礎知識とサービスや施設等の機能や事業内容の熟知が、介護支援専門員に求められる「基礎知識等」として掲載されています。

 であるならば、「基本テキスト」に書かれているように、利用者からの相談に相当程度対応できる知識と技術について、ケアマネジャー試験の問題として問うことが求められていると、私は考えます。

 近年の介護保険制度の実施状況を見ると、ケアマネジャーには充分な医療的な知識が求められるとともに、生活困窮者などの複雑で複合的な生活課題をもつ家族も多く、介護保険制度だけの対応ではなく、さまざまな社会福祉の制度の活用も求められているのは事実です。そのため、今回の「保健医療サービス知識等」「福祉サービス知識等」の試験問題については充分検討されており、基礎知識としては難問も多くはなく、例年同様の問題であったと私は感じています。

「介護支援分野」について

 しかし、「介護支援分野」については、前述したとおり、私が「出題者の意図を知りたい」問題が多く見受けられました。

 「介護支援分野」について、私はみなさんに「けあサポ」や中央法規さんの受験対策セミナーでも、これまで次のようなことを述べてきました。

  • (1)問題1問題2は受験者を呪文にかける難問が出る。
  • (2)事例問題は比較的にやさしく、得点しやすいので、問題24問題25からやるとよい。
  • (3)改正された「地域支援事業」や「地域包括支援センター」については必ず出題されるので、全体像を理解したうえで学習をしてほしい。
  • (4)「介護予防支援」の運営基準についての問題は、2015年は多かったが、介護支援専門員が主になる業務ではないので出題してほしくない。したがって、介護予防支援の運営基準については、2016年は出題されないでしょう。
  • (5)介護保険の制度導入の目的や実施状況は出題されない。

 (1)~(5)についてはことあるごとにお話させていただいたので、それを信じてくださって、勉強された方も多いと思います。そこでまずその5点について、私のコメントをしてみたいと思います。

(1)について

 いきなり介護保険法第1条、第2条、第8条を条文もってきました。まさに呪文のようでした。

(2)について

 事例問題の指定席は問題24問題25の2問だったのですが、1問だけの出題となりました。それも「災害時」のケアマネジャーとしての対応の問題であり、時期としてのテーマはあっているかもしれませんが、事例問題を通して、介護支援専門員としての判断能力や、あわせて基礎的な技術を問うというのが、本来的な事例問題の位置づけであると考えると、事例問題が1問とされ、しかも災害時という非常時の場面設定というはいかがなものでしょうか。

(3)について

 改正された「地域支援事業」や「地域包括支援センター」の事業は出題されるだろうと予想していましたが、内容として関係があるものとして、問題3問題4問題7問題11問題22などに含まれました。問題3問題4については何のために、これからケアマネジャーとなる人に問うているのか、その出題意図がまったく理解できません。

(4)について

 介護支援専門員が主になる業務ではないので出題してほしくないと思っていた「介護予防支援」についても、問題18問題20問題22などに相変わらず出題されました。問題18の「基本チェックリスト」の出題は、2年間にわたり、要介護認定の「基本調査項目」を出題しているため、少し目先を変えて「基本チェックリスト」を出題し、「過去問」で受験対策をしてきた受験者を振り落す考えが見え隠れしました。

(5)について

 やはりこのカテゴリーは出題されませんでしたね。

 ということで、私が「けあサポ」の受験対策講座で記載した内容については、事例問題が1問のみとなったのは驚きましたが、それにしても全体的に見て「出題者の意図」を問うてみたい問題が多かったように思いました。

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試験問題の“記述”の傾向

 さらに試験問題として全体を見ると「選択肢の短文化」がみられます。この傾向は一昨年くらいからみられていますが、今年のケアマネジャー試験の特に「選択肢の短文化」の流れを感じました。

 この「選択肢の短文化」は、実は適切な読解力と正確な知識がないと○×の判断が困難となります。したがって、受験者は選択肢の短い文章から、詳細なことまで読み取り、身につけた知識と自問自答しながら○×を一つひとつ判断しなければならないこととなります。

 また、問題文の「○○○について、正しいものはどれか。」となっていますが、「〇〇〇」のカテゴライズの仕方と、選択肢のそれぞれつながりが無理やり的になっていると感じる問題も多かったと思います。ましてや、「次の記述のうち適切なものはどれか。」と、そもそもカテゴライズもされていない、ただ○×を一問一答的に問うている問題も見られました。

 そのようななかでも、特にみなさんも問題6の解答は、判断が難しい問題であったと思いますね。

 問題6は「住所地特例」について正しいものはどれかと問うているにもかかわらず、「短文化」したため、たとえば、選択肢2の「入所する施設が所在する市町村の地域密着型サービスは対象外である」という文章から判断しようとすると、選択肢は意味不明となって、判断しにくいのではないでしょうか。さらに○と予想される選択肢3の「介護予防給付は対象となる」は、いったい住所地特例とどのように関係するのか、9種類の介護予防サービスと住所地特例をつなげるには、頭のなかを相当に回転させなければならないような問題です。問題6選択肢4選択肢5のような住所地特例の対象施設を「サービス付き高齢者住宅」などを改正ポイントと絡めて、また、実際のケアマネジャーとしての業務を考えると、素直な問題として出題すべきであると考えましたが…。

 いやいやこうして介護支援分野の問題をみていくと、介護保険の制度の中の人が覚えるような問題となっているような問題10問題15は、なぜこれがケアマネジャー試験で問われるのかと、見ていても腹立たしくなってしまうのは私だけでしょうか。

 このように問題を一つひとつみていくと、ケアマネジャー試験の意味がわからなくなってしまったところです。

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私が思ったこと

 受験したみなさんには、合格基準点のことが心配で、発表される11月22日まで気持ちの整理がつかないという人もたくさんいらっしゃると思います。

 しかし、私は「作問者と試験問題作成事務にかかる専任の管理者」そして試験に関して「厚生労働大臣の登録した法人」および試験問題作成を依頼している都道府県知事に、その合格基準点がどうなのかということよりも、試験問題の質について検証していただきたいと思っています。

 たとえば、「介護支援分野」の問題3は、各選択肢の文末が「できない」「できない」「できる」「できない」「できる」というように並んでおり、読み間違えるとひっかかります。このような問題を見ると、「知識」というより「注意力」が必要な問題となっているように感じるのです。ケアマネジャー試験の内容が前述したように、介護支援専門員としての「基礎知識の範囲」であるのかといった検証はすべきではないだろうかと言いたいのです。

 介護保険法第69条の11第1項では、「都道府県知事は、厚生労働大臣の登録を受けた法人(以下「登録試験問題作成機関」という。)に、介護支援専門員実務研修受講試験の実施に関する事務のうち試験の問題の作成および合格の基準の設定に関するもの(以下「試験問題作成事務」という。)を行わせることができる」と規定され、さらに同法同条第3項として「都道府県知事は、第1項の規定により登録試験問題作成機関に試験問題作成事務を行わせるときは、試験問題作成事務を行わないものとする」と規定しています。

 つまり、本来、試験問題作成事務は、介護支援専門員の養成の事務として都道府県知事が行うのですが、全国の都道府県知事がすべて、その厚生労働大臣の登録を受けた法人に試験問題作成事務を依頼していることになるのです。

 また、その登録を受けた法人は、全国に1つであり、この「登録試験問題作成機関」は国家資格である介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験を実施する機関でもあります。

 ただし、国家試験である介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の試験問題については、毎年「官報」により試験概要が発表され、試験の作問をする人については「試験委員」として公表されていますが、ケアマネジャー試験については国家試験ではないという理由からでしょうか、試験委員名等の公表はされていないと違いがあるのです。

 また、実施された試験問題についても、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士などの国家資格の試験のように、職能団体や養成施設団体などから、不適切問題等の疑義や出題意図を問うような動きができないことも相違点としてあります。

 さらには今年ほど、「高額な受験料を都道府県ごとに設定し利益を得ている」とか「合格率を15%程度にするための操作をしている」とか憶測の情報が、飛び交っている状況はこれまでにないように感じられます。

 もう一度 都道府県は、どんな「介護支援専門員」を養成したいのか、そのための「介護支援専門員実務研修受講試験」はこの内容でよいのか、介護保険法では都道府県が試験問題を作成することも可能としていると読めるのですが、そんな都道府県もあってもよいのではないでしょうか。

 いろいろ不満の残る講評となってしまいましたが、私は受験者の声をアドボケートしておきたいと思っています。

 「来年は、よい試験問題を作成してほしい。試験の先にどんな介護支援専門員が見えているのですか?」

 といいつつも、今年の試験問題の傾向から、来年の受験対策に向けての分析と対策を考えてみたいと思います。

 ほんとうにみなさん! 4月から毎週、全27回にわたりお読みいただいたこと感謝いたします。

 合否の結果はともかく、ほんとうにお疲れさまでした!

【けあサポ編集部予想解答例】

問題6
選択肢2:たとえば、A市のSさん(住所地特例で保険者はA市)が、B市にある軽費老人ホームへ入所した場合、B市にあるC定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所が利用する場合、保険者は住所地特例でA市のままとなるか? →2015(平成27)年4月から住所地特例の対象となりました(『ケアマネジャー試験ワークブック2016』(以下「ワークブック」)43ページ参照)。よって、「対象である」ので、選択肢の「対象外である」は×。ただし、保険者A市がB市にあるC定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所を地域密着型サービスとして指定している必要があり、また、住所地特例で保険者がA市のSさんはすべてのB市の地域密着型サービスを利用できるわけではない。
選択肢3:A市のSさん(住所地特例で保険者はA市)がB市にある軽費老人ホームへ入所した場合、Sさんが例えば介護予防訪問看護を利用する際は、Sさんの保険者は住所地特例でA市のままとなる。→○

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