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福祉マイスターへの道 毎日更新

介護老人福祉施設の待機期間の支援

【Q】
 76歳の女性です。脳梗塞後遺症と認知症があり要介護2の認定を受けていた方です。78歳の夫との2人暮らしであり、2年前から週1回の通所介護を利用しながら在宅介護を続けてきました。風邪をきっかけに肺炎となり入院。1か月の入院で寝ていることが多く、すっかり足腰が弱くなってしまい、退院後は要介護4と認定されました。
 入院中に3つの介護老人福祉施設への入所申請を行いました。認知症も進行し、退院後は夜間の排泄介護のため、夫の疲労が続いていますが、献身的な介護からSOSのサインを感じます。有料老人ホームやグループホームに入所するほど経済的なゆとりはありません。介護老人福祉施設の待機の間、どのようにこの夫婦を支えたらよいでしょうか。

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【A】
 「気づいたら、家のおばあさんが特別養護老人ホームに入所していた」などということはなく、介護が必要となり介護保険の申請をして、ケアマネジメントを受けるまでにはさまざまな過程があり、施設入所に至っては、長い経過をたどることが実際は多いものです。この方のように、在宅で介護サービスを利用しながらなんとか配偶者が支えているケースは珍しくありません。
 入院をきっかけにADL(日常生活動作)が低下し、これまでの在宅介護を維持することが困難になることも多くあります。特に夜間の排泄の介護が続くと、在宅介護は限界を迎える傾向があります。食事と排泄はその場から離れることができず、またなくてはならない生活と介護の柱になります。そのため夜間トイレに起こされる介護者は睡眠不足になります。「おしっこは一度にたくさんして」とは、なかなかできない注文なのです。
 質問の方の場合、介護者である夫の介護負担は重く、相当に負担を感じているにもかかわらず、できるだけ自分がみてあげたいという思いが強かったようです。通所介護の頻度を増やしたり、短期入所を利用するには介護者の気持ちの整理が必要でした。
このように夫が介護に献身的であればあるほど、先々の見通しを悲観し、いわゆる介護殺人や無理心中をはかる可能性は否定できません。介護疲れが悲劇につながらないように、ケアマネジャーをはじめ関係者のネットワークによる支援が必要です。
 まずケアマネジャーはじっくりと夫の思いに耳を傾け、配偶者としてできる介護を十二分に行っていることを率直に伝えました。そして、ケアプランの見直しを提案し、退院後は早急に通所介護を週4回に増やし、待機先介護老人福祉施設への短期入所を月に1回、3日間を定期的に利用するようになりました。
 しばらくして夫自身が、妻がサービス利用をしている間の自宅にいない状況に少しずつ慣れ、通所介護から帰ってきた妻に、以前より精神的にゆとりをもって接することができるようになりました。また、最初の頃は短期入所の施設へ電話をして、妻の様子を確かめることが頻回にありましたが、最近ではほとんどなくなり喫茶店に行ったり、甥に誘われてしばらくやっていなかった釣りにも行くようになりました。そしてこの間に入院中に医療ソーシャルワーカー(MSW)から勧められた、介護老人保健施設への入所が決まり、在宅介護が破綻せずに介護老人福祉施設への待機ができるようになったのです。
 介護老人保健施設の入所までは2か月近くかかりましたが、この間にMSWとケアマネジャーがその介護老人保健施設の支援相談員へ随時情報提供を行うことにより、入所の順番が考慮されました。最優先での入所を決断し調整した支援相談員の力量はこのようなかたちで発揮されます。この夫婦を地域で支えるにはこのようなケアマネジャーも含めて相談員同志の連携が重要です。
 今では1日おきに夫が介護老人保健施設に行き、妻の側にいます。何を話すわけではないですが、妻もにこにこ笑っています。今後は、妻の要介護度や介護者の状態が変わればそのつど、介護老人福祉施設へ状況を伝えることを忘れないようにしましょう。


医療福祉相談研究会=編集 『<加除式>医療福祉相談ガイド』 中央法規出版、1988年


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