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福祉マイスターへの道 毎日更新

音楽療法

【Q】
 施設や病院において、心身機能の向上を図るために、さまざまな取り組みがなされているようですが、認知症老人などに「音楽療法」が効果があると聞きました。具体的にどのようなものでしょうか。

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【A】
 音楽療法は、集団療法が基本ですが、音楽の特性を生かし、高齢者や障害者の心身に快い刺激を与え、対人関係の質を向上させ、情緒の回復や安定を図ることをねらいとしています。さらには、運動感覚や知的機能の改善を促し、心身に好ましい変化を与えることです。
 高齢者や障害児・者の施設などでは、その人がその人らしく生きていくためのひとつのケアの手段として導入しているところが見られます。具体的には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、デイサービス施設、知的障害・自閉症・言語障害・脳性麻痺の児童または成人関係の福祉施設、養護学校、要介護老人など地域ケアの場などです。
対象者は、老人性認知症や脳性麻痺、小児麻痺、自閉症、脳血管障害や交通事故の後遺症などにより脳障害をもちながら生きる人々に効果をもたらすとされています。

■音楽療法の歴史
 音楽療法は、20世紀初頭からアメリカやイギリスを中心に、回想法やリアリティオリエンテーションなどとともに心理療法の1つとして臨床の場に取り入れられてきました。アメリカでは、すでに1万人を超える音楽療法士(セラピスト)が専門職として活躍しています。
 一方、日本では、約50年前に精神科病院や障害児施設で活動が始まりました。現在では、音楽療法を音楽による心理療法と考え、病気や障害をもった人々と一緒になって創造的に生きることの喜びを分かち合うことをめざす療法として捉えられるようになってきています。1995年には「全日本音楽療法連盟」が発足し、1997年4月から同連盟認定による音楽療法士が誕生しています。それ以外の養成では、認定資格といった形でわずかの大学や音楽学校などの機関が養成を行っている現状にあり、専門職としては社会的認知や確立がまだまだのようです。
 アメリカにおける音楽療法は、精神療法等の臨床・治療の場で用いられていますが、日本の病院や施設で行われているものは、精神的癒し、援助者とのコミュニケーション、人間関係の改善等情緒的安定を目的とした活動が中心となっています。

■音楽療法の効果
 音楽療法の効果には、脳の活性化、心肺機能の向上、体内リズムを含めてのリズム感の向上などがあげられます。脳の活性化については、耳から入る音の刺激や回想法との関係で考えると、昔懐かしい歌を耳にし口ずさむことにより、何年も忘れていたような出来事を想起し自分自身の存在を再認することもあります。脳の機能で考えますと、音楽は右脳の働きといわれますが、確かに左脳に損傷のある右麻痺の方で言語障害があり言葉がまったくでない人でも、音楽療法の場面で昔なじんだ歌を歌えるという方も少なくないようです。
 心肺機能の向上については、歌を歌うことで安静時の3倍の肺活量が必要となっており、心肺機能の強化ひいてはADLの向上にもつながっていきます。

■実施上の留意点
 音楽療法を進めるにあたっていくつかの留意点があります。最も基本的なことは援助者も対象者も楽しく参加できるかどうかです。決して無理強いはせず、提供場面の事前の準備と検討が必要です。
 援助者としては、後方からの援助ではなくできるだけ前方の位置に立ち、対象者の小さな表情の変化も見逃さないことが次の展開へとつながり、同時に視覚的アプローチとして有効です。また、個々の障害や心身の状況にも個別の対応ができるように配慮し、たとえば、難聴の方には耳元で大きな声で一緒に歌ったり、認知症の方には目の前で振りも交えながらアプローチしたり、歌詞の先読みや楽器の利用、ミュージックテープの活用など、その時々の状況に応じて、対象者・援助者共に音楽の楽しさを共有できる場の設定に工夫していきます。
 楽器については、市販のタンバリンや鈴、カスタネットのような簡単な楽器から手作りシェーカー、ウッドブロックなどプログラムにより使用する楽器を選んでいきます。また、テンポやキーについても年齢や障害により変えます。高齢者の場合は一般的には、ゆっくりとしたテンポではっきり大きく、声の高さにあわせて少し低めの歌いやすいキーを選ぶことも大切です。


医療福祉相談研究会=編集 『<加除式>医療福祉相談ガイド』 中央法規出版、1988年


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