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どうなる? 介護保険

“難病”へのサービス

 今年4月から障害者自立支援法は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下、障害者総合支援法)に変わり、サービスの対象に“難病”が加わります。
 2月12日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部と健康局は「障害者の範囲への難病等の追加に係る自治体担当者会議」(以下、担当者会議)を開きました。
 担当者会議では、障害者サービスに「難病患者等」が追加されたことにともなう、(1)難病等の範囲、(2)難病患者等に配慮した障害程度区分の調査・認定、(3)事業者指定、(4)障害福祉サービス・障害児支援の支給決定、(5)地域生活支援事業等の取扱い、などの説明が行なわれました。
 介護保険制度では、第2号被保険者(40~64歳)は末期がんを含む特定疾病15種類に該当した場合はサービスを利用することができますが、「難病患者等居宅生活支援事業」の対象となっている病気は130種類になり、1割程度しかカバーされないうえ、40歳未満の難病の人たちは“制度の谷間”に置かれていました。
 障害者総合支援法では “当面の措置”として、「難病等の範囲」を130種類(表参照)にして、今後、見直しを行うとしています。
 なお、医療費負担軽減のために実施されている「特定疾患治療研究事業」(56種類)の対象者は約78万人と報告(厚生労働省大臣官房統計情報部「2011年度衛生行政報告例の概況」特定疾患〈難病〉関係より)されていますが、原因不明で治療法・治療薬がなく、患者が少ない「難治性希少疾患」(希少難病)は約5,000~7,000種類になるそうです。

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難病対策委員会の議論
 障害者サービス(障害者総合支援法)に難病の人が追加されることについては、2011年6月30日「社会保障・税一体改革成案」(政府・与党社会保障改革検討本部)で、「希少・難治性疾患の患者・家族を我が国の社会が包含し、支援」することが目指され、厚生科学審議会疾病対策部会(金澤一郎・部会長)難病対策委員会(金澤一郎・委員長)で、ワーキンググループ(難病研究・医療体制ワーキンググループ、在宅看護・介護等ワーキンググループ)など具体的な検討が行なわれました。
 難病対策委員会では、「今後の難病対策の検討に当たって(中間的な整理)」(2011年12月1日)、「今後の難病対策の在り方(中間報告)」(2012年8月16日)を経て、2013年1月25日「難病対策の改革について(提言)」をまとめました。

難病事業から障害者サービスへの移行
 難病の人への生活支援サービスは、これまで130種類を対象に「難病患者等居宅生活支援事業」(難病患者等ホームヘルプサービス事業、難病患者等短期入所事業、難病患者等日常生活用具給付事業)が行なわれていましたが、障害者総合支援法に移行することにともない、2012年度末で同事業は廃止になります。
 なお、難病患者等ホームヘルパー養成研修事業は、難病に配慮した研修を行う必要があるという理由で、継続することになっています。
 「難病患者等居宅生活支援事業」は国50%、都道府県と市区町村がそれぞれ25%の財源負担で運営されています。
 2010年度段階で、ホームヘルプサービス事業は市区町村実施率42.0%で利用者315人、短期入所事業は市区町村実施率29.0%で利用者10人、日常生活用具給付事業は市区町村実施率54.5%で利用者729件(厚生科学審議会疾病対策部会第19回難病対策委員会〈2013.01.17〉資料4「難病患者の在宅看護・介護等の現状について」2012年1月より)と低調であることが報告されています。

「普遍」に向けた議論は?
 一方、障害者サービスの対象外となった難病の人からは「病名だけで決めないで 患者らが訴え 障害者総合支援法『難病』の範囲を限定」(2013.01.11朝日新聞)という声もあがっています。
 介護保険制度では、高齢や障害で区別することなく普遍的なサービスを求める意見が繰り返し出ていますが、「『被保険者・受給者の範囲』の拡大に関する意見」(2004年12月10日、社会保障審議会介護保険部会)や「介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する中間報告」(2007年5月21日、厚生労働省老健局・介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議)にあるように、利用者負担が大きいことから障害者団体を中心に反対の声が大きく、議論は足踏み状態が続いています。
 しかし、所得格差が最も大きいと言われる高齢者のなかには、介護認定を受けても、利用料負担ができないためにサービスをあきらめているケースもあります。
 今回は障害者サービスに“難病”の一部が組み込まれましたが、高齢と障害の分断は続き、障害者サービス利用者は65歳になると介護保険制度が優先となり、利用者負担が発生するケースもあります。
 利用料負担のあり方の問題も含めて、“制度の谷間”を埋める「普遍」をめざす議論は、繰り返し行なわれる必要があるのではないでしょうか。

表 障害者サービスの対象となる難病130種類
1IgA腎症67成人スチル病
2亜急性硬化性全脳炎68脊髄空洞症
3アジソン病69脊髄小脳変性症
4アミロイド症70脊髄性筋萎縮症
5アレルギー性肉芽腫性血管炎71全身性エリテマトーデス
6ウェゲナー肉芽腫症72先端巨大症
7HTLV-1関連脊髄症73先天性QT延長症候群
8ADH丌適合分泌症候群74先天性魚鱗癬様紅皮症
9黄色靭帯骨化症75先天性副腎皮質酵素欠損症
10潰瘍性大腸炎76側頭動脈炎
11下垂体前葉機能低下症77大動脈炎症候群
12加齢性黄斑変性症78大脳皮質基底核変性症
13肝外門脈閉塞症79多系統萎縮症
14関節リウマチ80多巣性運動ニューロパチー
15肝内結石症81多発筋炎
16偽性低アルドステロン症82多発性硬化症
17偽性副甲状腺機能低下症83多発性嚢胞腎
18球脊髄性筋萎縮症84遅発性内リンパ水腫
19急速進行性糸球体腎炎85中枢性尿崩症
20強皮症86中毒性表皮壊死症
21ギラン・バレ症候群87TSH産生下垂体腺腫
22筋萎縮性側索硬化症88TSH受容体異常症
23クッシング病89天疱瘡
24グルココルチコイド抵抗症90特発性拡張型心筋症
25クロウ・深瀬症候群91特発性間質性肺炎
26クローン病92特発性血小板減少性紫斑病
27劇症肝炎93特発性血栓症
28結節性硬化症94特発性大腿骨頭壊死
29結節性動脈周囲炎95特発性門脈圧亢進症
30血栓性血小板減少性紫斑病96特発性両側性感音難聴
31原発性アルドステロン症97突発性難聴
32原発性硬化性胆管炎98難治性ネフローゼ症候群
34原発性側索硬化症99膿疱性乾癬
35原発性胆汁性肝硬変100嚢胞性線維症
36原発性免疫丌全症候群101パーキンソン病
37硬化性萎縮性苔癬102バージャー病
38好酸球性筋膜炎103肺動脈性肺高血圧症
39後縦靭帯骨化症104肺胞低換気症候群
40拘束型心筋症105バッド・キアリ症候群
41広範脊柱管狭窄症106ハンチントン病
42高プロラクチン血症107汎発性特発性骨増殖症
43抗リン脂質抗体症候群108肥大型心筋症
44骨髄異形成症候群109ビタミンD依存症二型
45骨髄線維症110皮膚筋炎
46ゴナドトロピン分泌過剰症111びまん性汎細気管支炎
47混合性結合組織病112肥満低換気症候群
48再生丌良性貧血113表皮水疱症
49サルコイドーシス114フィッシャー症候群
50シェーグレン症候群115プリオン病
51色素性乾皮症116ベーチェット病
52自己免疫性肝炎117ペルオキシソーム病
53自己免疫性溶血性貧血118発作性夜間ヘモグロビン尿症
54視神経症119慢性炎症性脱髄性多発神経炎
55若年性肺気腫120慢性血栓塞栓性肺高血圧症
56重症急性膵炎121慢性膵炎
57重症筋無力症122ミトコンドリア病
58神経性過食症123メニエール病
59神経性食欲丌振症124網膜色素変性症
60神経線維腫症125もやもや病
61進行性核上性麻痺126有棘赤血球舞踏病
62進行性骨化性線維形成異常症127ランゲルハンス細胞組織球症
63進行性多巣性白質脳症128リソソーム病
64スティーヴンス・ジョンソン症候群129リンパ管筋腫症
65スモン130レフェトフ症候群
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、健康局「障害者の範囲への難病等の追加に係る自治体担当者会議」(2013.02.12)資料「障害者総合支援法の対象疾患一覧」より

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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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