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どうなる? 介護保険

お寄せいただいた質問へのお答え

 12月22日、厚生労働省は「診療報酬・介護報酬改定等について」を公表し、2012年度の介護報酬は1.2%のプラス改定(在宅1.0%、施設0.2%)と報告しました。
 「改定の方向」としては(1)施設から在宅介護への移行を図る、(2)24時間定期巡回・随時対応サービスやリハビリテーションなど自立支援型サービスの強化を図る、(3)介護予防・重度化予防は効率化・重点化する方向で見直しを行う、(4)介護職員処遇改善交付金のかわりに事業者が人件費に充当するための加算を行う、という説明が加えられています。
 プラス分の配分も含めて、各サービスの値段(介護報酬)がどう変わるのかは、来年1月から2月に予定される社会保障審議会介護給付費分科会(座長:大森彌・東京大学名誉教授 以下、分科会)の諮問・答申を待つことになります。
 今回は、これまでにお寄せいただいた質問について、答えをまとめました。直接の回答ではなく、調べ方のアドバイスになっている部分も多いことをご了承ください。

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質問
たんの吸引に対応しない事業所にペナルティがありますか?
 老人保健施設に勤めていますが、看護師配置が必須になっているため、介護職員はたんの吸引などの行為をする必要に迫られません。そのため、事業所として介護職員に研修を受けさせる意思がないどころか、研修を受けるなら勝手に受けてきなさいというスタンスです。職員教育こそがケアの質を向上させ、職員が職場に定着する鍵だと思うのですが…。
 たんの吸引などの医行為が必要な利用者を受け入れた場合に介護報酬に反映するという案をみたことがありますが、事業所として対応していない場合にはペナルティが発生するのでしょうか?

お答え
 今年の通常国会で「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され、介護職員(介護福祉士と“研修を受けた介護職員等”)が、一定の条件のもとで「たんの吸引等」を実施することが可能になりました。「たんの吸引等」とは、喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養)と規定されています。
 改正法では、2015年度以降、養成課程で喀痰吸引及び経管栄養の知識、技能を習得した介護福祉士が、一定の基準を満たす事業所が「たんの吸引等」を実施できるとしています。ただし、12年度以降であっても、認定特定行為業務従事者認定証を交付された場合は実施できるとなっています。
 また、介護福祉士以外の介護職員も、12年度以降、研修を受けて認定特定行為業務従事者認定証を交付された場合は実施できるとされています。
 改正法に対応して、12年度からの介護報酬の見直しについて分科会がまとめた「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告」(以下、審議報告)には「介護老人福祉施設及び訪問介護の既存の体制加算に係る重度者の要件について、所要の見直しを行う」「介護職員によるたんの吸引等は、医師の指示の下、看護職員との情報共有や適切な役割分担の下で行われる必要があるため、訪問介護事業所と連携し、利用者に係る計画の作成の支援等を行う訪問看護事業所について評価を行う」とあります。
 つまり、介護保険サービスにおける介護職員による「たんの吸引等」はまず、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の介護職員と訪問介護事業所のホームヘルパーに限定し、介護報酬は加算の新設でスタートすることになります。事業所は都道府県に「登録喀痰吸引等事業者」の申請、登録をすることが条件ですが、登録は義務ではなく任意であり、未登録に罰則、つまりペナルティの規定はありません。
 老人保健施設の場合、経営側からみれば第5期(2012~14年度)に介護職員に研修を受けさせる必要はなく、また事業所登録もできないので売り上げ(介護報酬の加算)につながらないことになります。
 なお、分科会の審議報告では「制度の施行後、教育や研修の状況、介護職員の処遇等を含めた事業所における体制について、適切に実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う」とありますから、第5期(2012~2014年度)は“試運転期間”と考えることもできます。
 「登録喀痰吸引等事業者」「登録研修機関」など具体的内容については、『社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正する法律の施行について(喀痰吸引等関係)』(厚生労働省社会・援護局、2011年11月11日)を参照してください。

質問
ホームヘルプ・サービスの利用が多すぎると思います
 ケアプランにホームヘルプ・サービスが占める割合が多いと常に感じています。身体機能向上のサービスを提案しても難しく、利用者のなかには介護保険サービスはホームヘルプ・サービスととらえている人もいます。ホームヘルプ・サービスの利用料が他のサービスより安価なことも要因と感じています。通所系を基本にケアプランを作成するような内容の変更が必要ではないかと思います。ホームヘルプ・サービスは内容によっては自費設定に切り替えてもいいのではないかとも思います。

お答え
 介護保険サービス(介護予防サービスを含む)の利用者は約523万人で、在宅サービス7割、地域密着型サービス1割、施設サービス2割という構成です。在宅サービスのなかでホームヘルプ・サービス利用者は約394万人にのぼるため、「割合が多い」のは確かです(厚生労働省大臣官房統計情報部『平成22年度介護給付費実態調査の概況』より)。
 また、ホームヘルプ・サービス訪問1回当たり収入は3863円で、訪問入浴1万4339円、訪問看護1万786円、訪問リハビリテーション4736円と、訪問系サービスのなかで最も安いサービスです(厚生労働省老健局老人保健課『平成23年介護事業経営実態調査結果(速報値)』より)。介護保険サービスの利用は、介護認定を受けた被保険者が事業者を選んで契約するのが基本です。被保険者の多くは65歳以上の年金生活者ですから、「安価なことも要因」であることは十分考えられます。
 介護が必要な高齢者に適切なケアマネジメントを提供するのがケアマネジャーの仕事ですが、ケアマネジャーが「ふさわしい」と判断しても、利用者にわかりやすく、納得してもらえる説明をして、同意を得ることができなければ、事業者との契約にも具体的なサービスの利用にたどりつけないわけです。
 また、相談にあるように、現場での個別のケースの悩みがある一方、分科会ではホームヘルプ・サービスの利用が多いことについて、一般論として「過保護」「お世話型」といった一方的な批判も出ています。
 介護保険は「在宅重視」を掲げていますが、どのようなサービスが必要なのか、今まで一度も実施されたことのない全国実態調査による公正な分析により、課題が整理され、提案がなされるべきと思います。また、ケアマネジャーやホームヘルパー、介護職員など現場の声を集積し、行政や政治の場で検討されるしくみがないことも課題ではないでしょうか。
 分科会の審議報告では「居宅介護支援・介護予防支援」について、「次期介護報酬改定までの間に、(中略)保険者によるケアプランチェック、ケアプランやケアマネジメントについての評価・検証の手法について検討し、ケアプラン様式の見直しなど、その成果の活用・普及を図る。また、ケアマネジャーの養成・研修課程や資格のあり方に関する検討会を設置し、議論を進める」としています。どのような検討、議論が進められるのかにも注目する必要があると思います。

質問
介護予防・日常生活支援総合事業に参入できますか?
 訪問介護事業と居宅介護支援事業をしています。市町村の判断で「介護予防・日常生活支援総合事業」の導入を決定した場合、私のような事業者は事業に参入できるのでしょうか? それとも訪問介護、配食サービス、見守りを総合的に行う事業者が対象なのでしょうか? または、市町村が独自に事業を立ち上げるのでしょうか?

お答え
 今年の介護保険法の改正では、市区町村の地域支援事業のなかに「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)が新設されました。対象となるのは、介護認定非該当の二次予防事業対象者(介護予防事業の旧・特定高齢者)と要支援1・2の要支援認定者です。
 総合事業を実施するかどうか、事業内容、事業者、利用料など具体的内容は、市区町村が第5期介護保険事業計画のなかで決めることになっているので、質問者の事業所が所在する市区町村に問い合わせてください。
 なお、総合事業を担当する厚生労働省老健局振興課は、9月30日に「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的事項について」(課長通知)、11月9日に「介護予防・日常生活支援総合事業に関するQ&A」(事務連絡)を出しているので、参考にしてください。

質問
「安心生活創造事業」とは何ですか?
 「安心生活創造事業」とは、具体的にどんなことですか?

お答え
 「安心生活創造事業」とは、厚生労働省が「悲惨な孤立死、虐待などを1例も発生させない地域づくり」を目指して実施しているモデル事業で、ホームページ「安心生活創造事業」に具体的な内容の説明があります。
 3原則として、(1)基盤支援(「見守り」及び「買い物支援」)を必要とする人々とそのニーズを把握、(2)基盤支援を必要とする人がもれなくカバーされる体制をつくる、(3)それを支える安定的な地域の自主財源確保に取り組むが必須で、地域の実情に応じた様々な手法で実施する(「安心生活創造事業参考資料」より)とされ、「安心生活創造事業Q&A」も公表されているので、参考にしてください。
 また、2010年7月からは厚生労働省社会・援護局が事務局となり、安心生活創造事業推進検討会が開かれ、12月21日の第8回では「安心生活創造事業成果報告書のまとめ方(案)」(資料4)が出され、12年6月には報告書、事例集、マニュアルなどが作成される予定です。

質問
介護保険以外に使えるサービスはありますか?
 新米ケアマネジャーです。身体障害者1級の認定を受け、介護度4の利用者がいるのですが、介護保険以外に使えるサービスは何があるのでしょうか? 所得制限などで使えるサービスはほとんどないのでしょうか?

お答え
 介護保険の被保険者は、障害者サービスに優先して介護保険サービスを利用することになっています。ただし、65歳以上の高齢者のなかには、身体障害約227万人(2006年推計)、精神障害約94万人(05年推計)、知的障害約2万人(05年推計)の人たちもいて、介護保険だけではサービスが足りないときや、介護保険にはない障害者サービスが必要なときは、介護保険とあわせて利用することができます。また、市区町村によっては独自のサービスを用意している地域もあります。
 市区町村の担当課などに確認するほか、同じ事業所の仲間やケアマネジャー連絡会にも情報があると思います。また、障害者サービスについてはWAMネット「障害福祉サービス事業者情報」にも情報があるので、調べたうえで、疑問の点については市区町村、都道府県の担当課に問い合わせて確認してください。

質問
サービス提供責任者の要件
 訪問介護事業所で働いています。サービス提供責任者の要件について、2級ヘルパーは段階的に廃止の方向とのことですが、例えば今回の介護福祉士に合格して4月に登録した場合、介護福祉士として減算の対象をまぬがれることができるのでしょうか? いろいろ考えて頭が痛い毎日です。

お答え
 分科会の審議報告には「サービス提供責任者の任用要件のうち『2級課程の研修を修了した者であって、3年以上介護等の業務に従事した者』について、段階的に廃止する。(中略)なお、介護報酬の減算及び人員基準の見直しについては、現にサービス提供責任者として従事する者の処遇に配慮する観点から、経過措置を設ける」とあります。
 サービス提供責任者の任用要件は厚生労働省老健局振興課が担当していますが、問い合わせたところ「(審議報告で)基本方針はお示ししたが、具体的内容の公表は来年2月ぐらいを予定しています。段階的廃止ですし、今まで認めていたものを減算するのは、事務作業が煩雑であることも含めて、難しいと考えています」という回答でした。
 厚生労働省のホームページには「介護サービス関係Q&A」(「人員・設備及び運営基準」及び「報酬算定基準」等に関するQ&A)というコーナーがあります。また、「サービス種別毎の担当課」という一覧表もあるので、わからないことは問い合わせてみてください。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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