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どうなる? 介護保険

国家公務員手当と介護報酬の関係

 8月10日、2012年度以降の介護報酬、指定基準などを議論する社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)の第78回が開かれました。
 この日は、(1)介護報酬の地域区分の見直し(資料1)についての意見交換、(2)厚生労働省がこれまで資料で提示した「主な論点」(資料2)についての意見交換、(3)社会保障・税の一体改革(資料3-1資料3-2)についての説明、(4)特別養護老人ホームの待機者についての実態調査(参考人資料1-1参考人資料1-2)の報告が行われました。
 今回は(1)の地域区分の見直しについて報告します。

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介護報酬の地域加算の見直し
 介護保険サービス提供事業者に支払われる費用(介護報酬)には、人件費の地域差を考慮するため、「国家公務員給与の地域手当(地域に応じた給与の調整手当)」(人事院規則)に準じた地域区分により、市区町村ごとに加算率がつけられています。
 介護報酬は単位数×地域別単価で計算されています。地域別単価は1単位10円が基本で、これに地域区分による加算率をかけるため、1単位10円から11.05円まで幅があります。
 分科会では、厚生労働省から(1)国家公務員給与の地域区分(地域手当の加算区分)は、民間賃金の地域差を反映して2006年に改定されたが、(2)2009年度の介護報酬改定では、全体を平均4.8%引き下げ、民間賃金が高い地域に3~18%の地域手当を上乗せするという手法に異論が出たため、見直しが保留された経緯が報告され、今回、改めて国家公務員給与の地域手当の加算区分にあわせた見直しが提案されました。
 介護報酬の地域区分は現在、5段階(特別区、特甲地、甲地、乙地、その他)ですが、国家公務員給与の地域手当の加算区分にあわせると、特甲地を3分割して7段階になるそうです。現在、特甲地の地域区分の加算率は10%ですが、資料1の(資料2)の3つに細分化した「イメージ図」では、15%、12%、10%に変わります。
 なお、介護報酬は、市区町村(保険者)などエリア別の地域区分だけでなく、介護保険サービスの種類ごとに人件費率(45%、55%、70%)が加えられ、加算の割合はとても複雑です(福祉用具レンタルと居宅療養管理指導は地域区分に関係なく1単位10円です。福祉用具購入と住宅改修は単位数の設定はなく実費です)。
 いずれにしても、地域区分の加算率が引き上げられた市区町村のサービス提供事業者は売上が増えますが、利用者にとっては1割の利用料負担が増えることになります。

加算率が変わる市区町村は?
 分科会では、国家公務員給与の地域区分改定で行われた「全体の水準を4.8%引き下げた上で、上乗せ割合を検討する」という手法の、「全体の水準を4.8%引き下げ」の部分に反対する意見が集中しました。
 厚生労働省からは「限定された給付のなかで、格差是正のために財政調整をする」「“財政中立”が原則であり、プラスマイナスゼロである」「1単位10円の基本報酬を下げることも考えられる」といった追加説明がありました。
 “財政中立”というのは聞き慣れない言葉ですが、厚生労働省の説明を聞いていると、“同じ金額のなかで分配の割合を変えるだけ”ということのようです。
 なお、国家公務員給与の地域手当の加算区分にあわせた改定をした場合、資料1の(資料4)で数えてみると、加算率が引き下げになるのは32市町村、引き上げになるのは86市町村、「同等とみなされる」のは1546市区町村になります。

加算率の見直しは「処遇改善策」?
 資料2「介護給付費分科会における議論について(主な論点)」では、「6.介護人材の確保と処遇の改善策について」という項目の「(2)地域区分」で、(1)現行を踏襲するか、国家公務員地域手当に準拠するか、(2)国家公務員地域手当に準拠する場合、適用地域がない地域をどう取り扱うか、(3)現行の上乗せ割合を基本とするか、国家公務員地域手当と同様、水準をいったん引き下げたうえで上乗せ割合を設定するか、(4)現行の人件費割合を踏襲するか、再検討するか――という論点が示されています。

東京都は抜本的見直しを要求
 一方、東京都福祉保健局は7月29日、「介護報酬改定に関する緊急提言」を公表し、「地域の実情」にあった介護報酬の改定を求めています。地域区分については、「大都市部における人件費、物件費の高さ」を考慮し、(1)地域差をより適切に反映できるよう、新たに地域区分を細分化するとともに、上乗せ割合について抜本的な見直しを図る、(2)地域区分の割り当てについて、地域の実情を踏まえた調整ができる仕組みとする、(3)介護報酬の人件費割合について、算定根拠となる人件費の対象を実態に応じて拡大する、という3項目の提言をしています。
 国家公務員給与の地域区分(地域手当の加算区分)は、民間賃金の水準にあわせて改定したそうですが、それをさらに介護報酬(事業者の売上)に適用することは妥当なのか、また「介護人材の確保と処遇の改善策」、つまり介護職の給与引き上げにつながるのか、東京都の緊急提言はどの程度分科会で反映されるのか、議論に注目したいと思います。

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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