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どうなる? 介護保険

介護保険サービスの被災状況

 「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」(以下、改正案)は6月14日、参議院厚生労働委員会(126分)で採決され、翌15日、本会議(21分)で賛成223票、反対10票(共産党6票、社民党4票)で可決されました(委員会、本会議ともに参議院インターネット審議中継でネット傍聴できます)。
 今後、舞台は国会から社会保障審議会介護給付費分科会に移り、地域密着型サービスに新設される定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合サービスなどの具体的な内容は、介護報酬検討のなかで明らかになる予定です。
 14日の委員会は最後の国会質疑となりましたが、東日本大震災での介護関係の被災状況についていくつか答弁がありました。

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在宅サービスの利用者、スタッフの被災状況は調査中
 被災地における介護保険サービスの状況については6月2日、国立国会図書館『調査と情報 ISSUE BRIEF』713号が「被災地における医療・介護 ―東日本大震災後の現状と課題―」をまとめています。
 委員会では、川田龍平委員(みんなの党)の在宅サービス利用者の被災状況の質問に、宮島俊彦・政府参考人(厚生労働省老健局長)が「2010年11月時点では被災3県の沿岸部34市町村で4万4706人が在宅サービスを利用していたが、避難所や施設に避難している人もいるため、実数は把握できていない」と答弁しました。
 三原じゅん子委員(自民党)の施設サービス事業所の被災状況についての質問には、「被災3県の特別養護老人ホームなど介護施設は6月13日時点で、全壊または半壊が52施設になり、岩手が10施設、宮城が38施設、福島が4施設」、在宅サービス事業所の被災状況については「岩手県は被災した110事業所のうちサービス提供が困難になったのは36事業所、宮城県は被災事業所317事業所のうちサービス提供が困難なのは53事業所、福島県は原発事故による避難地域30キロ圏内に169事業所があるが確認中」(宮島俊彦・政府参考人)という答弁がありました。
 また、介護職員の被災状況は「6月13日の時点で、被災3県の介護施設職員の死亡、不明あわせて173人で、在宅サービス事業所の介護職員の被災状況はなお調査中」(宮島俊彦・政府参考人)との答弁がありました。

被災地への長期的な介護支援は…
 厚生労働省はホームページで「東日本大震災関連情報」を連日更新していますが、「介護職員等の派遣」は6月14日現在、派遣可能人数7719人のうち実際に介護施設、障害者施設に派遣されているのが1304人(派遣可能人数の17%)と低調です。『調査と情報』は、「短期滞在を希望する派遣者側と、長期滞在を求める被災地側との調整が困難なためである。長期派遣を可能とする国レベルでの支援体制の必要性が指摘されている」と報告しています。
 委員会では川田龍平委員の「長期派遣を可能とする支援体制を準備する予定はあるのか」という質問には、「被災地の道路やライフラインが復旧すると派遣ニーズが少なくなる側面がある」が「長期派遣も含めて適切に進めたい」(宮島俊彦・政府参考人)という答弁がありました。
 いずれにしても、被災地のうち東北3県の施設サービスはある程度、被災状況が把握できていますが、在宅サービスの状況について明らかになるのはこれからになります。

総合事業への異議申し立ては、行政不服審査請求
 改正案では地域支援事業に「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)の新設が提案されました。これまで市区町村が実施する地域支援事業では、介護認定で「非該当」の高齢者を介護予防事業(二次予防事業)の対象者(2009年度対象者約98万人、参加者約14万人、厚生労働省調べ)としていましたが、今度は要支援認定者(約133万人、介護保険事業状況報告(暫定)2011年1月分より)に対象を拡大するという内容です。
 先週の連載で、市区町村や地域包括支援センターが要支援認定者に総合事業が適当と判断した場合、その判断に不服がある場合は都道府県の介護保険審査会に審査請求することになるという、6月7日の委員会における岡本充功・政務官の答弁を紹介しました。
 14日の委員会では、福島みずほ委員(社民党)の質問に、大塚耕平・厚生労働副大臣から「審査会に請求するのはなかなか負担であり、まずは請求しなくてすむよう運営したい」が、「なおかつ異議がある場合は、法の規定に基づき、介護保険審査会に請求していただく。審査会には公益委員をメンバーに加えるなど配慮したい」という大塚耕平・厚生労働副大臣の答弁がありました。ちなみに、「要支援の方が予防給付にもとづくホームヘルプ・サービスを利用するとともに、総合事業で配食サービスを利用することは可能」(宮島俊彦・政府参考人)という答弁もありました。

総合事業の利用料は「基本的な指針」で市区町村に促す
 総合事業の利用料については「適切な利用者負担となるよう市区町村に検討を促したい」「現在でも配食サービスなどでは地域差があるが、余り極端なものにならないよう総合事業に関する指針で調整していく方向で検討する」(宮島俊彦・政府参考人)、「総合事業にふさわしい要支援認定者の状態像の基本的な指針は、2012年4月の施行に向けて自治体関係者、有識者の意見をうかがいながら、検討を進めたい」(大塚耕平副大臣)との答弁がありました。
 第5期介護保険事業計画(2012~2014年度)に総合事業を盛り込む市区町村数は不明ですが、衆議院、参議院ともに「要支援認定者の意向を最大限尊重する」とした附帯決議も“尊重”した内容を期待したいものです。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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