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どうなる? 介護保険

「24時間サービス」の新設

 2012年度の介護保険制度改定に向けて、「地域包括ケア」の目玉商品として「24時間定期巡回・随時対応サービス」(以下、24時間サービス)が構想されています。
 昨年2010年6月から、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に検討会(座長:堀田力・さわやか福祉財団理事長)が設置され、今年の2月25日には、厚生労働省のホームページに「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方研究会」報告書が公表されました。今国会に提出予定の「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(仮称)」でも、「24時間対応の定期巡回・随時対応型サービスの創設」が掲げられています。
 今回は、専門職の皆さんの関心も高いと思われる24時間サービスの内容についてチェックしてみます。

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まったく新しいサービス
 報告書では、「24時間定期巡回・随時対応サービス」とは、「単身・重度の要介護者」でも「在宅を中心とする住み慣れた地域」で、「介護サービスと看護サービス」を一体的に利用できる「まったく新しいサービス」と定義されています。
 何が「新しい」のかというと、報告書の概要では(1)ひとつの事業所で、(2)ホームヘルパー(福祉系)と訪問看護師(医療系)という異なる職種が一緒に、(3)時間帯の制限なく1日に何回も「在宅」(自宅のほか有料老人ホームなどを含む)を訪問するサービスとされています。

24時間サービスは「地域密着型サービス」
 報告書にある24時間サービスの具体的内容は、次のようになります。
対象者……「在宅」の要介護認定者(要介護1~5)。要介護3以上が前提だが、「定期訪問」や「安心感の提供」が必要な要介護1・2にも認める
サービス類型……地域密着型サービス(市区町村が事業者を指定)
介護報酬……包括定額払い方式
職員配置……常勤職員が基本で、利用が集中する特定時間帯は短時間勤務職員も対応。看護職員の配置が困難な場合は外部事業所と連携
ケアマネジメント……訪問するホームヘルパー、訪問看護師が継続的アセスメントを実施。ケアマネジャーは24時間サービス事業所と「共同マネジメント」で連携しながら、ケアプランを作成
訪問看護師の役割……(1)利用者のモニタリング、アセスメント、(2)訪問看護指示書に基づくサービス提供、(3)医師との連携、(4)ホームヘルパーに療養上の助言
随時対応……利用者のコールによる看護ニーズに対応する職員(オペレーター)を配置。事業者間の委託、ICT(情報通信技術)を活用

随時対応のサービス内容
 報告書で紹介される24時サービスの主なメニューは、(1)体位交換、(2)オムツ交換、(3)水分補給、(4)排せつ介助(着替えを含む)などの「身体介護」と(5)随時対応です。(5)「随時対応」とは、
・24時間の通話対応(利用者の不安解消、服薬指示、医療器具操作指示など)
・ホームヘルパーまたは訪問看護師の訪問(転倒、失禁などにホームヘルパー、パウチが外れた場合は訪問看護師)
・救急・警察等関係機関への通報
 を指します。つまり、24時間サービスの「介護サービス」には「生活援助」と「通院等乗降介助」は含まれていません。また報告書には、2010年度に実施したモデル事業の結果(13市区町、134人〈うち新潟県長岡市が41人〉が対象)なども紹介されていますので、確かめてみてください。

高齢者専用賃貸住宅(在宅)も想定
 2月8日に国会に提出された「高齢者の居住の安定確保に関する法律の一部を改正する法律案」は、安否確認や生活相談サービスを提供する高齢者専用賃貸住宅の登録制度の創設が目的で、国土交通省と厚生労働省の共同所管です。この高齢者専用賃貸住宅も「在宅」と位置づけられ、24時間サービスを提供することが予定されています。

報告書で気になるのは…
 2011年度は「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス事業」(予算12億円、60市区町村)が実施されますが、国会(介護保険法改正案)、社会保障審議会介護給付費分科会(2012年度介護報酬)と同時進行になります。
 そして、報告書では、前述の“まったく新しいサービス”の提案にとどまらず、訪問介護、訪問看護、夜間対応型訪問介護について「サービス内容や報酬方式のあり方について、別途検討を進めることが必要」とし、特に「生活援助」については、「配食サービス」「外部ラウンドリーを活用した洗濯サービス」、買い物は「共同購入方式」などを活用して、介護保険外サービスにするよう細かく言及しています。
 社会保障審議会介護給付費分科会の委員には、「地域包括ケア研究会」委員3人、「24時間サービス検討会」委員3人の計6人が参加していることもあり、介護報酬の見直しでは、24時間サービスの新設とともに「生活援助」削減の動きが再燃すると思われます。
 次回は介護保険の「生活援助」削減と代替サービスの動きについて紹介します。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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