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和田行男の「婆さんとともに」

地域住民化策

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 これは専門学校で見つけた冊子で、お上(厚生労働省)が学生向けに「薬物はアカンで!」と呼び掛けたものだが、「薬物のない施設生活のために ~薬物の危険は意外なことに専門職から迫ってきます~」という冊子もつくらなあかんのとちがうやろか。
 さて、大都会東京の一等地、御茶ノ水駅から徒歩数分にあるワンルームマンション、しかもスカイツリーが見える上階で、家具家電付きの家賃が6万5000円。
 東京の住宅事情を知らない人でも「はぁー?」と耳を疑いたくなる驚きの価格だが、これにはご多分にもれず「理由」がある。
 その理由は、よく聞く“おばけが出るから”ではなく、聞いたことがないこの街をこよなく愛する人々の「知恵と心意気」だ。

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 都心部の居住地域も高齢化が進んでいる。東京の都市中心部は人であふれているが、住んでいる人ではなく集まった人が多い。
 山村の限界集落化はよく話題にのぼる。ところが都市居住者にとっても「少子・高齢・人口減少」は深刻な課題で、その街に産まれ・育ち・暮らしてきた人たちにとって、自分たちが卒業した学校が次々と廃校になり、目に見えて街が先細っていく光景は、山村の状況が他人ごとではない。
 そこで地域の人たちのアイデアで生まれたのが6万5000円マンションである。
 でも、「ただ人の数を増やせばよい=低家賃のマンション供給」と考えなかったことに、このマンションへの心意気を感じたし、その心意気が知恵を生んだように思う。
 実はこのマンションに住むには条件があり、その条件とは「学生であること」と「地域活動に参加すること」だ。若者の誘致策は他の処の話を聞いたことがあるが、地域活動への参加が条件とは感心した。
 これは24日朝のテレビ番組で紹介されていた話で、詳しいことを調べもつけないままに書いているが、ステキな話ではないか。
 そのマンションに住む学生が地域活動に参加すると、ポイントがもらえる。
 1日参加すると1ポイント、半日参加で0.5ポイント。1年間で12ポイントを獲得するのが条件だそうだ。うまく考えられている。
 地域活動とは、お祭り、運動会、夜回り、防災訓練、ガーデニング、美化活動、町内会事務局の手伝いなどで、それに参加すると活動内容に応じて「1ポイント」か「0.5ポイント」がつき、それを積み上げていく仕組みのようで、年間12日分(月平均1日分)の地域参加となる。
 住んでいる学生は「卒業して社会人になったらこの街に戻って恩返しがしたい」と話していたのが印象的で、人は人と人の関係のなかでこそ「地域住民の一員であると実感でき」、それが「地域に愛着をもつことにつながることなんだなぁ」と改めて感じた。
 また、決して今の若者が「社会や地域社会」「他人や地域住民」に無関心だということではなく、どうすればよいのかがわからずにいるだけで、こうしたきっかけがあれば「地域に愛着をもてるまで思える」ということであり、地域再生の策はまだたくさんあるように思えた。
 もちろん、こうした企画に賛同して入居する学生だからということもあるだろうが、入居する学生たちと地域住民とのかかわりは確実に増えたようで、双方にとってとてもプラスになっているようだ。きっと治安にも効果が表れ、先々では子どもの数も増えるかもしれない。

 実は、これは「介護」からかけ離れた話ではなく、社会福祉事業の課題を浮き彫りにした話でもある。
 特養やグループホームやデイサービスなど介護事業所がたくさんできているが、そこを利用する人やそこに住む人たちが、その街の人たちと交流できるように支援しているだろうか。
 施設の外に出て活動するのは年に一度の「花見」くらいなもんで、日常生活を通して街の人たちと日常的に交流するなんていう思考が行政マンにさえなく、箱(建物)の中に閉じ込め、そもそも街から遠く離れた場所につくって・つくらせて、隔離することになってやしないだろうか。
 その結果、介護事業所ができて人の数は増えたはずなのに、街に人の気配はなく、利用者・入所者・入居者を「地域住民や住民組織とは無縁の人」にさせていないだろうか。
 それどころか、介護事業が街の中から高齢者を事業所に連れてきて建物の中に閉じ込め、街から人の気配を奪い取ってやしないだろうか。
 東京23区内でワンルームマンションの建設に反対する人たちの話を聞いたことがあるが、それとて同じで「居住者と関係をもたない=住民になろうとしない人が増えること」が反対理由だった。
 僕のところでは、ボスが率先して本社周辺の美化や雪かきを行い、お祭りの神輿担ぎに何十人もの若手職員が繰り出して町内を盛り上げているが、各事業所のある地域で地域住民との関係をもっともっと深め、地域社会に根付いた事業所として利用者・入所者・入居者の「地域住民化」へ「策」を講じていかねばと思ったし、それを唱えているだけではダメで、知恵と工夫が必要だと思った。
 人と人が結びついて初めて「地域住民」となり、安心して暮らせる街とは「人と人の関係がある街ではないか」ということを、改めて考えさせられた6万5000円マンションであった。


コメント


よく言われますが、お宅の利用者さんはしあわせですよね!って。趣味の畑出来るし、(じゃがいも威勢良く、きゅうり、トマトも自分で吟味して買ってきて)お友達が時々遊びにきておしゃべりしたり、歩いてお出かけや、ランチ。みんなで外食やお買い物、遠出の外出もあり。

地域と関わるって面倒ですけど、人と関わる事で人は育つ!デスカ!

婆さんに育ててもらってお金頂くなんてこんなありがたい仕事ないです。


投稿者: むらさき | 2013年04月30日 19:30

以前、和田さんが精神科入院と懐の深いスタッフさんのことを書かれたブログを拝見して、今回の「薬物のない施設生活のために」という言葉に、私の中の釈然としない気持ちがふつふつ戻って来ました。

大声を出し、他の入居者さんに迷惑をかけると精神安定剤が処方されました。
ある日、その方に風邪薬が臨時処方され、その日の夜に嘔吐されました。

ナースに連絡すると「副作用かもしれないから、そのまま様子みて下さい」とだけ言われました。

後日、副作用の欄を確認すると、どの薬にも吐き気、下痢をまれに起こすと記載されていました。

リーダーに「薬の勉強しないとね」と言われました。

精神科を受診する前に、スタッフで、その方がなぜ大声を出すのかを、もっと掘り下げていく必要があったと思っています。

治療と症状の緩和と軽減…誰のための服薬なのでしょうか?


投稿者: わたる | 2013年04月30日 22:49

利用者の方と通院している病院でDrに薬の副作用について質問しました。Drは細かく説明して下さり、そして「ケアにも副作用がありますよ…」と付け足されました。数年前のことですがずっと心に残っています。


投稿者: モーリ | 2013年05月03日 00:05

モーリさんへ

素晴らしい医者ですね。
自身の立場を踏まえつつ、短いコメントにたっぷり社会的課題が詰まってますね。
これからあちこちで、『ブログのコメントにきたある医者の話』として、皆さんにお伝えさせていただいても良いですか?


投稿者: わだゆきお | 2013年05月06日 10:48

もちろんです。ズシンと重く大きくおそらく私自身、課題としてずっと向き合って行かなあかんとおもってます。是非多くの認知症支援者に伝えて下さい。今日も素敵なことに巡り会えました。入居中のS子さんが「もーりさんちょっとお見せしたいものがあるので部屋まで来てください」と言われ、何やろ?とわくわくしながら訪ねた私に、古い1冊のノートを手渡されここを見てくださいと…そこには戦争中外地に出征されたご主人への手紙の下書きがありました。以下、全文です
二度目のお手紙嬉しく拝見いたしました。お元気の由何より安心いたしました。統べてどうなるのも運命と思ひ諦めるよりないと思ひます。時には本当に自分達程不幸な人間はないやうに悲観する時もありますけど、これも思ひようですからもっともっと不幸な方の事を思ったら決して不足は思へません。総て善意に解して通りませう。
前日私より出したお葉書まだ届きませんのでせうか、随分幾月もかかるらしいんですのね。今日この頃は如何お過ごしでせうか、このお便りの着く頃はもう暑い暑いという頃になりますでせうね。この頃三日おき位に舞鶴にウラヂオからお船が着き、今度は今度はと待たれてなりません。きっとそのうちににはあなたのお船が着きますことでせうね。楽しみにお待ちしてをります。黒潮の皆様も○○子達夫婦も皆元気です。○○の兄も近くします。ではお元気で、お帰りの日を近からんことと楽しみにお待ちしてをります。  s子
美しい日本語にも感動しましたが、自分の辛さ、苦しさより夫の無事を願う日本人の謙虚さともいうのでしょうか…読み終えたあと涙をこらえるのがしんどかったです。その人が何十年後に認知症となり不自由な暮らしをしています。その人の苦労があって私の豊かな暮らしがあるとしたら還さずにはいられませんよね。ところで京都にいるので奈良のトークライブに参加したいのですが無理でしょうか…


投稿者: モーリ | 2013年05月08日 23:00

モーリさんへ

11日18:30開場だそうです。早いもの順だと思うので、現地に来られたら何とかなるのではないでしょうか。奈良市ビバリーヒルズ(ネットで検索してください)というライブハウスです。


投稿者: わだゆきお | 2013年05月09日 19:03

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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