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和田行男の「婆さんとともに」

風の検証

 皆さんの職場にはどんな「風」が吹いていますか。
 人は「風向き」を読みとり感じとり生きているように思います。そこにどんな「風」が吹いているかは、環境に多大な影響を受けて生きている僕らにとって、とても大事なことのように思います。
 介護施設において虐待や事件が絶えませんが、改めて自分自身の脳と自分の職場に吹いている「風」を検証してみたいと考えました。

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 もしもその「風」が「虐待等」を許容する風だとしたら、自分の言動や自分たちの言動が「虐待等」であったとしても、誰も気づかないままに日常化してしまいかねない。
 新人のときに「先輩の言動は間違っているのでは」と疑問を抱いたとしても、知らず知らずのうちに自らもそれに染まってしまい、染まったことさえも気づけないことがあるが、それも自分以外の人間やその塊に影響を受けやすい自分の脆さであり、会議で自分の意見を言えず強い言葉に流されたり、何となく曖昧にしたりするのも「風」を読み取り感じとって生きている僕らの表れかもしれない。
 その風を押し返すには勇気と多大なエネルギーがいるが、押し返す風を個人に委ねるのは限界があるだろう。
 僕の身近なところで「虐待等」が繰り返される事業所があるが、根っこから解決していくには風向きを変えることが必要で、風向きを変えるためには「理」が欠かせない。
 その理とは…。
 ブログを書きあげるために、その理をあちこち探していたその最中に、学問を積んでいるうちの職員から次のようなメールが届いた。

■ 多くの人は自分の意思や信念に基づいて合理的に行動していると信じている。だが、意識するとしないとにかかわらず、人の態度や行動は他者や集団の多大な影響を受けている。
 他者が見ているだけで作業の遂行が促進されたり、抑制されることがあるし、他者が存在することで援助行動が生じないことがある。
 集団内の個人は、明らかに間違っていると思っていても集団に同調したり、倫理に反する命令に服従することも容易に起こり得る。
 集団規範や斉一性(斉一性とはある特定の集団が集団の内部において異論や反論などの存在を許容せずにある特定の方向に進んでいくことを示す)への同調圧力が働くからである。
 擬集性が高く、集団への過剰評価や斉一性への同調圧力が強く、外部からの情報が得られにくい集団では、集団思考や集団浅慮(浅慮とは考えが浅いこと)と呼ばれる状況に陥りやすい。
 冷静な判断が失われ、後から考えると信じられないような誤った決定をしてしまう。
 それぞれの職場で集団規範がどう形成されているかは重要な問題であろう。法の精神とはかけ離れたところで集団規範が成り立っているようなこともあるかもしれない。
 他者の目を入れること、リーダー層が自己点検以外の検証方法を持つこと、会議で意見を言いやすい職場環境を整えることなどが、必要な方策だと考える。

■ 高齢者虐待についての社会福祉的研究や文献はたくさんあるが、臨床心理的なアプローチはほとんど見当たらないので、児童虐待から類推する形で述べる。
 虐待は、英語でabuseであり、abuseは濫用、乱用を意味する。
 児童虐待は、親権の乱用であり、本来、子供の欲求や要求に親が答えるという関係にあるものを、親の欲求や要求を子供によって満たしてもらおうとする関係逆転が根底にある。そういう意味で濫用・乱用である。
 虐待する親の心理傾向については、いろいろな共通性が指摘されているが、その中のひとつに自尊感情の低さが挙げられている。
 もし高齢者を虐待する職員にも自尊感情の低さが見られるならば、職場で介入する余地があると考えられる。
 日々、ダメだしばかりされていて讃えられることがなければ、どんな職員でも自尊感情は低下するに違いない。
 普段、リーダーや周りの職員が、他の職員に肯定的な言葉かけを行っているだろうか。失敗に対して犯人探しばかりをしていないだろうか。そういったことを振り返ってみることも必要ではないだろうか。

 「虐待はダメ」「誰も望まないでしょ」といった抽象的で情緒的な話ばかりしていてもダメで、その職場にどんな「風」が吹いているかを「理に基づいて検証」することが必要だということは感覚的に感じていたが、その「理」を短時間でどうやって探し文章にするかに時間を費やしていた時だけに、絶妙のタイミングでメールをくれたうちの職員に感謝(ラッキー)するとともに、文中「讃える」というところ(褒めるではないとは)、僕らにある「深いチーム」を感じた。
 うちの職員が示唆してくれている「理」を検証の具として、まずは自分自身と自分の関係する職場(事業所)を「チーム力」で検証してみたい。

追伸
 巨人・大鵬・卵焼きは、僕が子供の頃によく聞いたフレーズですが、昭和の大横綱大鵬が亡くなりました。
 昭和30年生まれの僕にとって大鵬は「まっしろできれいな強いお相撲さん」でしたが、土俵では、外国人力士の台頭はふつうのことで、もはや外国人とも思わなくなり、初の平成生まれ関取が初めて三役を受賞するなど、目にくっきりと「時の流れ」が映ります。
 時の流れと言えば超人気力士だった小結高見盛が引退しますが、彼が大学相撲部時代の逸話のひとつに、試合に挑むとき監督が高見盛の耳元で「かあさんの歌」を聞かせると故郷の母を思い出し感極まって号泣。いつも以上の力を発揮した(中日スポーツ 本日付より)というのがあるようです。体罰が誌上を賑わしている昨今にあっていい話ですね。
 相撲が特段好きなわけではありませんが、野球・相撲・プロレス・クルマ・フォークソング(弾き語り)は、好きかどうかではなく、僕の生きてきた時代の男の子にとっては染みついた文化ですかね。
 そうか、文化になるほど染みつかせられる風を吹かさないとですね。尽力します。
 今朝の名古屋はちらちら雪で寒いです。

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 街をぶらつくといろいろな視線を感じますね。車中で気配を感じたので目をやると14もの目が…たまりませんね


コメント


インフルエンザの入居者さんの部屋を換気している新人スタッフに「入居者さんが寒いし、廊下に菌が飛ぶから開けないで」と言ったリーダーがいます。
風…と聞いて、この話を思い出しました。

14の目に見られると想像すると、何か見透かされていると感じる…そして照明が明るいな〜。


投稿者: わたる | 2013年01月31日 22:12

言葉遣いはとても良く、受け答えも、接し方も好感がもて、実に「手厚い」ケアを丁寧に行っている。良い施設だなと、思うのですが、けれどなにか、違和感のようなものを感じてモヤモヤしています。
気持ち良く過ごせるように、ということに一番力を入れているようですが、
別室があり、相性の良くない同士は顔が会わないようにしている、また職員の個性を否定しているのではないと思うのですが、利用者さんの混乱を避けるため、やり方を統一していて「染まるよう」に求められます。
施設によって色々なカラーがあるので、違和感を感じたわたしはここには「染まれない」色をしているのかもしれません。
ただ「安心感」が「穏便に」という風になっているように感じてしまって、残念というか、どうとらえたらよいかと、モヤモヤが残りそうです。


投稿者: ねむりねこ | 2013年02月01日 18:11

虐待・体罰・いじめの放置…これだけたくさん取り沙汰されると、これはもう風向きを変えるいいチャンスなんじゃないかと思う。

ニュースで見聞きしたら「ヒドイ人間がいるもんだ」なんて言ってる場合じゃなくて「何が起きたんだー!?!」って一職業人、一社会人として職業柄の追求したくなる癖も加えて、もう少し深くまともに考えてみようと思う。
昨日の記者会見をみたら、とてもよその世界の出来事・他人事には思えませんでした。


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2013年02月02日 01:57

お疲れ様です。
寒さが一段落し、私は花粉症シーズン直前、戦々恐々です。

「風」を吹かす、吹かし続けること 多大なエネルギーが必要。ちょっとよそ見したすきに、違う風向きになる。向きが変わった風を戻すのはきつい。一個人では限界もある。
自分もいつのまにやら「おばさん」「おばちゃん」「おばちゃま」と呼ばれるようになり、仲間や後輩に伝えたいことがてんこ盛りになってきた。が、仲間や後輩(その他にも大勢)と関係が悪ければ、伝えたいことの核心にたどりつく前で拒否される。でも伝えたい。毎日葛藤している。

短気だったけど、おかげで辛抱強くなったように思う。感謝、感謝。

今日のAさん、「あんた(まんまるのこと)に私はお給料は払ってあげられない。でもさっきの歌はどんな歌かしらべてあげる。待ってなさい。。。で、何だっけ。」 あなたと過ごせる私は幸せよ。

「風」を吹かし続けるために、腹をくくりました。この春、ステップアップです。


投稿者: まんまる | 2013年02月02日 21:31

本日からサ責になりました。
どのようにスタッフに伝えていけるのか。お客さま(事業所ではこう呼ばせていただいてるのでそのまま)が、どのようなことを望んでいるのか。そして、どこまでお客様の要望にお応えできるのか。
私はただのお手伝いさんになる気はありません。
あくまで介護士として仕事がしたいのです。

お客様は大人な人が多いけど、スタッフや、ケアマネさんとうまくコミュニケーションとれるか心配です。
そうだよね、だって私の3倍ぐらい大人な人なんだから、そりゃ大人ですよね。

名刺そのうち出来るのでできれば名刺交換したいです。


投稿者: 細野恭代 | 2013年02月03日 00:40

風は香りを運び、音を運び、感触を運び、季節を運び、色を感じさせ、喜びを感じさせ、寂しさを感じさせ、色々に変わるものと思っています。風が一か所に留まっていては、渦巻きとなりみんな巻きこまれてしまう。だからかがやきにふく風は吹き上げず、留まらず循環の良い風にしたいと思います。理(通り・法則)と言う難しいことと違うけれど、皆(スタッフ)でやさしく感じられる風を入れたいと単純な私は考えています。


投稿者: kagayakiフクダ | 2013年02月04日 02:58

良さげにみえることの中に、ヤバさを感じてモヤモヤすること私もあります。しかも

良い(善い)ことにみえるだけに、違うかなって思っても意見しにくい抑制感があり…
それは入居者、利用者が見えない抑制帯につながれることと無関係ではないような気がします

施設によってカラーが違うことも、どうかなって時々思う。
介護保険の理念に基づく目的を、より達成させるために独自の工夫や力を注いでるというカラー…ならわかる。

単に良く見られたいためのイメージづくりだったり、お客様獲得のためのセールスポイントだったり、顧客ターゲットを絞るため、みたいな話もきいたことがあり…施設のカラーもそうなると、達成させる目的が違うよねって思っちゃう。

ねむりねこさんとお知り合いになりたいな。


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2013年02月05日 13:51

夜勤ヘルパーさんへ

 ほんとそうですよね。

 介護保険法の目的に向けてのカラーと、自分たちの勝手な色づけは違いますよね。

 
 


投稿者: わだゆきお | 2013年02月07日 14:25

近頃施設にいる母は落ち込み 暗い顔をしてました。便が大量にでたけど ナースコールしなかったから こういう時は押してくれと本人は怒られたと感じたらしいです。私には母も 当時主任だった夜勤者も辛かっただろうと思いました。ただ夜勤だけこなすのと 主任で夜勤をこなすのは違います。リーダーともなれば 夜勤の間も雑務の処理に追われてるのだろうな。と感じるからです。母の世話をしてくださる方々に手を合わせずにはいられません。本人の未熟力不足 仕事に追われて の虐待 一言で言っても背景様々 つらい話です。


投稿者: マメ | 2013年02月11日 21:00

和田様 もう少し三多摩近辺に流れを作ってください


投稿者: おばば | 2013年02月16日 11:55

マメさんのコメントに胸がググっと苦しくなりました。

便が出るのは人間として当たり前のこと。
次は怒られないようにナースコールを押す人もいれば、怒られないように便を隠す人もいる…。

果たして、ナースコールを押していたら、怒られなかったのでしょうか?
迷惑をかけないように自分で何とかしようとする人もいると思います。

介護職員として、夜勤が大変なのはわかります。

誰の為に叱るのか?何の為に叱るのか?

自分の言動を振り返ります。


投稿者: わたる | 2013年02月16日 15:29

わたるさん コメントありがとうございます。コールの多い利用者さんへのケア側の対応も見てきているし 介護が大変なのも感じているから コールできなかったらしいけど 頭が痛いとか 胸が苦しいとか そういう時はコールするんだよ。と言っておきました。母 おっちょこちょいなので 私の言葉を勘違いしなきゃいいけどと心配してます
わたるさんも頑張ってくださいね。


投稿者: マメ | 2013年02月19日 00:04

よからぬことが起きると(起こすと)本能的に隠そうとする意識が人には働くんじゃないかなぁ。

病気や障害により訴えたり伝えたり、「嫌だ」ということさえできない人達を前に、自戒がなければ隠し通せてしまえる私達の職業で、よからぬことは起こり易く、何も考えなければ起きて当たり前くらいに思っています。

大小に関わらず、失敗したり間違いたら、まず「ごめんなさい」と言えること、思えること、報告することや、人にしゃべれること。職場など自分が関係するところで疑問を感じるようなことがあれば、なんらかの形で皆で考える機会をつくれるように努力すること…などを自分でできることとして心がけてます。

自分の考えを押し通すってことではなく、もっとたくさん話して開かれた職場に、職業にしたいと思う。
ずーっと「閉ざされた世界」だなぁと感じてきて、それは入居者、利用者さんが外出の機会が少ないとか、社会との関わりが少ないからだと思ってきたけど…

ほんとのところは、よからぬ思いや行動を隠そうとする人(私達)の本能と、隠せてしまえる環境に、打つ手をもたない世界に「閉ざされた」を感じていたんだと思います。

だから、なるべく「こと」(ことの大小に関わらず)をオープンにして、職場をはじめ、あちこちで議論が繰り広げられる、仕掛けが必要じゃないかなぁ


投稿者: ばーばら | 2013年02月21日 08:46

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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