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和田行男の「婆さんとともに」

未来を感じさせてくれる“マサト君”の昔話

 ホームヘルパーの仕事からこの世界に入ったマサト君は、この仕事につくまで「売り上げてなんぼ」の世界で生きていた。
 マサト君がこの世界に入って一番衝撃的だったことは、見習いで先輩について訪問介護に出た時に聞いた先輩の言葉「便が出ているといいね」という一言だった。

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 マサト君、「この人はおかしいのではないか」と思ったそうだ。
 何故なら、誰だって仕事が増えない方がいいし、うんこの処理をすれば歩合給がつくわけでもない。百歩譲ったとしても、汚ない・臭い便の処理は自分以外の者に当たってほしいと考えるのが普通なのに、この人は便が出ていることを期待している。見たこともない聞いたこともないおかしな人だなと思ったそうだ。
 そこで「なぜ便が出ていることに期待を寄せるのですか」と訊ねたのだが、その時の返答に衝撃を受けたのだ。
 「マサト君、お腹に便がたまっていたら苦しいでしょ。不快でしょ。これから訪問する人も同じなのよ。ただ自分では処理できないことで、不本意ながら恥ずかしながら、他人の手を必要としているのよ。だから私たちが、その気持ちを汲んでお手伝いをさせてもらうの。それがこの仕事」
 頭の中は???であったが、それを聞いたマサト君、「この人は、自分のためにだけで仕事をしているのじゃないかも。ステキな人だな。ステキな仕事だな」と素直に思えたそうだ。
 それまでひたすら「会社のため」「自分ため」に売上を伸ばすことだけを教えられ考え、買う人の身になって考えることなんてなく、法にギリギリのことさえも平気でやっていたマサト君が初めて出会った「その人のために」であった。
 僕はこの話をマサト君から何度も聞いているが、何度聞いても心に響いてくる。
 それはきっと、マサト君とおつき合いしてからの10年間、マサト君がどんなに厳しい状況の中でも「その人」のことを一生懸命考えているからであり、それは職員さんに対しても同じように考えて行動していることを知っているからだ。
 しかも僕がとてもステキだなと思えるのは、この話を何年経っても何度も語るからである。
 今の自分はいきなり今の自分であったかのように語る人はたくさんいる。
 でもいつもマサト君が教えてくれることは、大事なことは「今」だけではなく、今に至った自身の変遷であり、変遷こそ人柄になり、それを意識しているからこそ、表現できるからこそ、人はその人に可能性を感じるのではないかということだ。
 人生は具体と体感の積み上げであることを教えてくれる後輩たちである。婆さんである。


コメント


和田さん、今晩は。
私も、今の自分があるのは周りの人たち、出会ってきた人たちのおかげだな…って思います。初めて介護の世界に入った時は自分の祖父母意外のお年寄りに出会うのは初めてで、介護って言っても何をして良いのかも分かりませんでした。初めて関わった時、話す言葉が見つからず黙りこんでいたり。助けてもらったのは先輩さん。この仕事の楽しさを教えてくれたり人と関わる楽しさを教えてもらいました。また、実際にお年寄りから学ぶこと、いっぱい失敗していっぱい一緒に笑って時には一緒に泣いたり。今の自分があるのは、仕事やプライベート関係無く今まで出会ってきた人たちのおかげだと思います。経験が生き、それを話す。新しく入ってくる人たちには楽しさを教えたいし、年寄りやスタッフを通じて色々と感じる物を受け継いで欲しいと思います。…と言っても私もまだまだ新米。人生の先輩(年寄り)や職場の方々、違う道に進んだ友達、色んな刺激を受けて私自身も成長していけたらと思います。


投稿者: つくし | 2012年12月18日 00:10

何年か前の話です。

「どけ。邪魔。あっち行け。」と、グループホーム入居者に言っている職員に対して、家族から苦情申し立てがありました。リーダーは家族に「言葉による心理的虐待でなく、介護者の言葉が未熟なための誤解」だと答えたそうです。

マサト君は良い方と、良い言葉に巡り合われたな〜と思います。


投稿者: わたる | 2012年12月20日 17:30

久しぶりに投稿させてもらいます。
先日、自分の子供が通う保育所へサンタ役として行ってきました。ばれたら夢も希望もなくなるので、サンタは風邪をひいていることにして、サングラスとマスクをしておかしなサンタを演じてきました。おかげで我が子にもばれずに終えることができましたが、その時の自分に対する子供たちの瞳がとてもまぶしいことが印象的でした。夢や希望に満ち溢れているキラキラした瞳。まぶしかったです。
自分たちは仕事の中で嫌なことやイラッとすることなどがたまにあってだんだんと澱んだ気持ちになり、どんよりとしてしまうこともあります。しかし、今、自分の周りには素敵な仲間が数人いてくれています。時々出会って仕事だけじゃなくいろんな話をします。そうすると、だんだんと気持ちが晴れて前向きな気持ちに変わってゆくのです。最近つくづく良い仲間に出会ったなぁとよく思います。初心を忘れないで済んでます。瞳キラキラしてるつもりです。あの子供たちのように・・・。
和田さんのブログでもパワー貰ってますよ。ブログを読んでると前向きになれるから不思議です。直接お話をさせてもらったら100%?120%充電できるかもしれませんね。
本文とあまり関係なかったかもしれませんね。すいません。


投稿者: みたけや | 2012年12月22日 10:56

私自身 GHで8年 老健 ディサービスとうろうろしてますが ディで挫けそうになった時 励まして下さったのは利用者さんでした。凹んだのも利用者さんの要求もありましたが、今も気を許せば苦情がきそうな方ですがその方に助けれ今があります。一番下っぱですが送迎表をくむ事になり パニック状態の日々。でも 人のよいじい様に 皆よくしてくれると頭をなでられ嬉しく舞い上がる位嬉しくて そんなのが老いも若きも助け合いなんだなぁなんて思いました。


投稿者: マメ | 2012年12月22日 22:05

みたけやさんへ

 どこに飲みに行けばステキな仲間の皆さんともども会えますかね。


投稿者: わだゆきお | 2012年12月24日 09:47

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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