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和田行男の「婆さんとともに」

おばあちゃんが変なこと言いだした! 妄想?

 30歳を迎えたワカさん(仮名)の両親は「嫁にいけるだろうか、嫁にいく気があるのか」と、娘の行く末を常々心配している。
 というのも、娘から浮いた話ひとつ聞いたことがないからだ。かといって浮いた話がなかったわけではなく、非常に厳格な両親に娘が言えなかっただけのことなのだが…。
 ワカさんのおばあちゃんは87歳で両親と同居している。診断は受けていないが認知症と思える状態にある。
 ある日のこと、そのおばあちゃんが両親に「ワカにいい人ができた」と言ったものだから大騒ぎになった。

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 「ワカ、おばあちゃんが大変なのよ」
 突然かかってきた母親からの電話は「よほどのこと」が伺える声であった。
 「どうしたん」
 「おばあちゃんに妄想がはじまったの」
 「え、どういうこと」
 「おまえにいい人ができたなんて言い出したのよ」
 「…」
 実は先日実家に戻ったとき、ワカさんはおばあちゃんにだけ「いい人ができたの」って報告していたのだが、まさか両親に告げるとは思っていなかった。
 『どうしよう、ここで否定したら妄想にされて病院に連れて行かれるし、おばあちゃんに話をした人は結婚まで考えている人ではあるが、両親への紹介はまだ先のことだと思っているし、う~ん…』
 それにしてもワカさんの両親は「いい人ができた」と言ったおばあちゃんの言葉を聞いて「あんた、いい人できたそうやね」とはならず「妄想が現れた」に結びつくとは、よっぽど「ワカさんとオトコ」は無縁と思っているようである。ハハハ
 この話をワカさんから聞いてひとしきり大笑いしたあと思ったのは、実はこのように「認知症の人が言っていることだから」と片づけられていることが山ほどあって、それが「虐待」や「職務怠慢」を見過ごす結果を生んでやしないか、あるいは「薬物漬け」にされてやしないかと、改めて危惧した。
 先日もあるグループホームの管理者が「自分の反省の話です」と前置きしたうえで、こんなことを話してくれた。
 そこのグループホームの支援の方向のひとつは「居室に閉じ籠ることのないように支援をしていこう!」ということであるが、そこの入居者が、配属されたばかりの新人職員に「ここは部屋に戻ると怖いこと言うから」と漏らしたのである。
 新人がそのことを先輩職員に報告すると、「入居者のことを思って言っていること・やっていることだから」と言われたが「なんだか変だな」と疑問が残っていた。
 新人職員は時間の経過とともに「おかしい」と感じるようになり、「ここは居室に閉じ籠もらない支援をしているのではなく、入居者が言うとおり、居室に戻らせないように行動規制しているだけではないか」と、思い切って管理者に告げた。
 ところが管理者は「入居者が言うこと・新人職員が言うこと」だからと簡単に片づけてしまったが(そのことを悔いていた)、結果はユニットの責任者を筆頭に「居室に戻ったら夕食はないからね」といった言葉で虐待していたのだ。
 入居者の何気ないひとこと、新人職員や実習・見学者の何気ないひとことにきちんと耳を貸せるように・目を配るようにしないと、重大なことを見過ごしかねないということだ(これには僕も痛い目にあっている)。
 結局ワカさんは、大事なおばあちゃんを病院送りにするわけにはいかないため両親に正直に話したのだが、厳格な両親から「連れていらっしゃい」と思いもしない言葉をかけられ、逆に喜ばしい結果を生んだ。
 ワカさん、切り拓いてくれたおばあちゃんをいつまでも大切にね。お幸せに。

ご案内1

 僕の仲間たちが開催する、時節を先取りしたシンポジウムの案内をさせていただきます。ぜひ、ご参加ください。

○地域包括ケア・シンポジウム
○日 時:12月7日(金)13時20分~16時40分-
○場 所:高崎ビューホテル(群馬県高崎市)
○参加費:無料
○主催者:群馬県地域密着型サービス連絡協議会
○パネリスト:厚生労働省、山梨県北杜市、石川県加賀市、熊本県山鹿市の行政マンたちです。

 申し込み等詳細は別紙1別紙2
をご覧ください。

ご案内2

 12月26日13時~18時、名古屋市公会堂にて「介護基礎講座」と題した講座を、株式会社波の女(和田行男が役員)で開催します。
 講義は、理学療法士の田中義行さん、言語聴覚士の牧野日和さんの名コンビによる「身体の機能と支援の基礎学」をやります。
 年末の忙しい時期ですが、その時期だからこそのお得な企画です。

 申し込み等詳細は別紙をご覧ください。


コメント


和田さん、こんにちは。
ワカさんのおばあさんの話、何かヒヤッとしたのと自分自身もそういう感じで見てしまってるんだろうなッと反省です。
入居者の声に耳を傾け認知症があるからとかそうゆう見方を変えて1人の人が話してる、と思って常々関わらないとダメですね。
まずは相手の発言を妄想や嘘と思わずに信じて聞くと言うことをしていきたいと思います。


投稿者: つくし | 2012年11月05日 13:02

はじめまして。
おそらく、実母は認知症で、私は介護疲れで、家族にとって大変なストレスで…認知症は、長年の母娘の歪な関係をより歪め、今の私にとっては四苦八苦そのものです。


投稿者: 蓮花 | 2012年11月05日 23:37

蓮花さんへ

蓮花さん、よかったら非公開としてコメントをいただけないでしょうか。

また時間がありましたら「四苦八苦」の語源の由来を調べてみてください。
きっと気づかぬうちに「四苦八苦そのもの」と捉えた蓮花さんの実母への想いに気づけることでしょう。


投稿者: わだゆきお | 2012年11月08日 08:21

お返事(コメント)、ありがとうございます。『非公開で』の方法がわからず、前回同様に携帯から投稿させて頂きます。
何から書かせて頂いたらよいのか…今春から、名古屋市内にて実母の在宅介護が始まりました。『これでいいのか』という迷いが生じた頃、テレビ番組で和田さんとお婆ちゃん達の姿を拝見させて頂きました。
『私も頑張ろう』の思いがどこで間違えたのか…今は何をどうしたらいいのか、どんなふうに誰に『助けて下さい』と言えばいいのかもわからなくなっています。


投稿者: 蓮花 | 2012年11月08日 10:41

蓮花さんへ

コメントに「和田さんの連絡先を教えてください」と書いて、蓮花さんの連絡先をそえて投稿してください。ブログの担当者から和田行男に必ず連絡がきますから。
まだ、諦めないでね。


投稿者: わだゆきお | 2012年11月10日 12:35

「居室に戻ったら夕食はないからね」という言葉を投げかけることが虐待であると表現できる人は和田さん始め、数少ないのではないかと考えさせられました。

私が勤めている宅老所でも、それに近い発言が乱れ飛んでいるので、「どうすればこの状況が良くなるか」と考えていたので。

私はその宅老所に入ったばかりで、あまり発言できない状況でして。

ところで、そのユニット責任者は「居室に戻ったら夕食はないからね」という言葉をどういう表情と声のトーンでその人に伝えただろうかと想像しています。

怒った顔だったのか(`・ω・´)?
威圧的な声のトーンだったのか?
これならあきらかに暴力ですよね。
笑った顔(^O^)?
からかっているような声?
これは人によって、いじめと捉えるかもしれませんし、笑いを作るためのサプライズと捉えるかもしれません。

そのセリフを言ったあとに、冗談だよと伝えて、笑顔で笑いあったりするのであれば、使ってもいい表現なのかなーって思いました。

いずれにせよ、虐待したくてしている家族や介護職員はいないでしょうから、社会全体でそういった方々をケアするシステム作りが急務だと感じています。

いつもありがとうございます。

P.S.沖縄にくる機会がありましたら、是非うちの宅老所で講演会を開いてください。お願いします。


投稿者: 沖縄疎開中 | 2012年11月11日 19:06

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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