ページの先頭です。

ホーム >> 福祉専門職サポーターズ >> プロフェッショナルブログ
和田行男の「婆さんとともに」

サービス・サービス業でない 介護保険制度

 「お金を払っているのに、なぜ私たちが家事をしなくちゃいけないの」
 婆さんからそう言われたことがあると、グループホームの職員たちからよく聞きます。僕のところでもあります。
 婆さんにしてみたら、お金を払って家政婦(職員)を雇っているのに、何で職員が身の回りのことをしてくれないのかと思うんでしょうね。
 でも、婆さんの言っていることは世間の感覚からずれているわけではなく、至極まっとうな世間並みの意見ではないでしょうか。

wada20121008.gif

続きを読む

 国民の多くが「サービス」に抱いている感覚は、「おまけ」や「してくれる」「得」「楽」「便利」など「お得感」ではないでしょうか。
 辞書によると、サービスとは「1 ひとのために力を尽くすこと。奉仕。2 商売で客をもてなすこと。また顧客のためになされる種種の奉仕。3 商売で値引きしたり、おまけをつけたりすること。4 運輸・通信・商業など、物質的財貨を精算する家庭以外で機能する労働。用役。役務」とありますが、用語解説からも、国民の多くがもっているであろう「感覚」は、正しいと言えます。
 では「サービス業」について調べてみると、日本標準産業分類でサービスを業とするものの分類は、大分類として「複合サービス業(郵便局や協同組合など)」と「サービス業(その他に含まれないもの。たくさんあるので調べてみてください)」とに分類されています。
 介護業界でよく「サービスを受ける・提供する」と言いますが、介護事業はこの分類によると、複合サービス業でもサービス業でもなく「大分類N 医療・福祉」となり、「社会保険・社会福祉・介護事業」として堂々とサービス業とは区別されています。それも2002年の改定でサービス業から独立していますから、改定時期としては介護保険制度になってからです。
 つまり、介護業界で介護保険制度施行以降に語られるようになった「サービス」は、そもそもの「サービス」の意味から外れ、産業分類としても「サービス業」から外れているということです。
 しかも介護保険法の目的に照らして言えば、介護保険事業は「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにする労働。用役。役務」とも言え、人のために力を尽くすことではありますが決して「奉仕」ではなく、お金をもらってその目的を遂行することにあります。
 にもかかわらず、何で「サービスと呼ぶ」のか不思議であり、それに疑問をもつこともなく「サービスを使う」ことに疑問を感じるのは僕だけではないはずです。
 しかも国民の感覚にある「奉仕やおまけ」としての「サービス」を、契約行為に基づいて「支援を購入する」介護保険事業に当てはめるのは無理があります。
 また、介護保険事業は目的に基づいたものですから、お金のやりとりで、してもらいたいことをしてもらう・してくれる、利用者本意(本意:意思や気持ち それに添うこと)の家政婦とはわけが違います。
 「サービス」という言葉と「サービス」に対して国民が抱く「おまけ感」を払拭していかないと、いつまでたっても国民の意識として介護従事者は「お手伝いさん」「まかないさん」「してくれる人」となるのも無理からぬことです。
 ただ見通し明るいのは、婆さんの家族世代になると、僕の言うことに理解してくれる人たちが随分と増えたことです。
 今日も婆さんたちのおまけ感と専門職・家族連合は闘っていることでしょうね。


コメント


従来の被介護者に提供される画一的なサービスと比較すると、介護従事者の方々にとっては、被介護者が家事をするのをサポートする事の方がずっと手間のかかる事だと思います。被介護者をなんとかしてあげようという心意気やプロとしてのプライドがあるからできる事なのでしょうか。
介護に求めるものは家族の中でも千差万別ですが、親に体力、気力を少しでも長く維持していって欲しいと願う家族にとっては、有難い選択肢です。


投稿者: 介護初心者K | 2012年10月09日 18:43

果物屋さんで「これ、サービスね」と、みかんを1つおまけしてもらったら、嬉しいです。
かと言って、介護職員として、今日はサービスでトイレ介助しますってのはあり得ないし、ご利用者やご家族もトイレ介助をおまけしてもらって嬉しいとは思ってくれないですよね(苦笑)。
「今日は誕生日だから、シャンプー多めにサービスしときますね。」と冗談では言いますが…。

ご利用者と一緒に茶碗拭きをしたり、洗濯物をたたんでいたら、ご家族からクレームを頂きました。上司には叱られました。
身の回りのことをできるようになる…と、介護計画にあると上司に話したものの、人生の大先輩であるじい様ばあ様をコキ使っていると見えたそうで、次からはそう見えないようにやろうと考えてます。

「訪問介護は利用者の雑用係みたいだから、したくない」と言っていたデイサービスの職員がいました。私は同じ介護職なのにな〜と思って聞いていました。

色々と考えてみて、私が介護のサービス=おまけ、お得というイメージは持っていないということを自覚しました。私のサービス=心づかいと気配り、目に見えないもの。


投稿者: わたる | 2012年10月09日 20:51

私はもともとサービス業だと思ってこの世界に入りました。数年たった頃、仕事の目的を知って衝撃。。。だって、これまでと同じ職種・職場に居ながら、今から仕事の中身だけを変えていかなきゃいけないんだもん。
面白い!と思ったのも、闘いが増えたのも、この頃からでした。
働く人が・利用者が・国民が・・・これだけ各々が好き勝手にイメージを抱いてしまう職業は他には思いつきません。
介護職員がなかなか定着しなかったり、業界の成長に歯止めがかかる大きな要因でもある気がします。

介護の仕事をしているというとよく「料理もつくるんでしょ、掃除もオムツ交換もするんでしょ、大変ね〜」と言われ、言われるたびに
「いえいえ…正確に言うとですね!…」って地道に誤解を解いていこうとする努力だけでは追い付かない気がします。そうだよ、サービスめ!


投稿者: すみこ | 2012年10月13日 00:29

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

【ブログ発!書籍のご案内】
new!
和田行男さんのブログ発第2弾『認知症開花支援』が刊行されました。前作『認知症になる僕たちへ』から2年半――。パワーアップした和田行男のメッセージにご期待ください。
定価:¥1,680円(税込)、10月20刊行
→電子ブックで内容見本をご覧いただくことができます
→ご注文はe-booksから
wadaprof3.jpg

和田行男さんのブログ「婆さんとともに」をまとめた書籍が刊行されました。
タイトル:『認知症になる僕たちへ』
著者:和田行男
定価:¥1,470(税込)
発行:中央法規
→ご注文はe-booksから
wadaprof2.jpg

メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books