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和田行男の「婆さんとともに」

暮らしの基盤・住居

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 「できる限り住み慣れた地域の良い環境で暮らし続けることができる社会の実現を目指している」
 この「良い環境」を作るために日々奮闘していますが…。行き場のない方の最後の砦として実施していた泊まりデイを中止させられた後も、家族やケアマネジャーからの依頼は続いています。
 家族でできる限りは支援したいけど、介護している家族の体調不良(入院等)時や、疲れ切ってしまった時に突然、馴染みのないショートに行かせるより、日々、人としてかかわってくれているところで安心して泊まってほしいと…。
 グループホームも小規模多機能も地域密着型なので、いくら手揚げをしても公募がない限り認可は受けられません。市にもニーズがある旨を問いかけましたが……。
 「困っている人を断らない」精神で立ち上げましたが、今は「すみません」の連続です(T_T)
 どうしたら、介護保険の中で「良い物」が作れるのでしょうかね。
 今週は、motoさんからいただいたお題について考えてみましょう。(写真は本文とは関係ありません)

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 まずは、「良い物」とは何をもって「良い」とするかですが、motoさんの文章から読み取れる
1:どんな所得層でも利用できる
2:リロケーションダメージがない
 ということと、
3:それまでの自宅で暮らし続けるか、自宅を離れて暮らすかの選択ができる。つまり居住場所を選択できる。
4:介護保険法を前提に考えたとして、介護保険法で規定された「通所介護(いわゆるデイサービス)」や「短期入所生活介護(いわゆるショートステイ)」は、どこの事業所を利用するかの選択ができる。
5:公営住宅でも一時的に利用する宿でも「家族以外の者がひとつの囲いの中で暮らす雑居環境(よくいわれる相部屋)は一般的ではなく、居住場所は最低「個室」が確保されている。
 という「日本国民に当たり前のようにある(日本国民の一般的な生活の実態)」ことは外さないように考えてみたいと思います。

 まず整理したいのは「住居」についてです。
 僕はその基本として、日本国憲法のコンプライアンスに基づいて、国民の誰もが生活の拠点となる「住居」について路頭に迷わない国にすること、過去にも触れましたが、特別養護老人ホームで「低所得者層向けに四人部屋継続施策を」といった主張のように「金のない者にはこれでいい」というような理ではなく、国民の誰もに対して「自分だけのプライベート空間=住居」を国民が連帯して保証し合う社会にすることが大事だと考えています。
 僕には「motoさんがいうお泊りデイ」がどんなところかわかりませんが、通所介護事業所において通所介護事業のサービス提供時間帯(おそらく朝から夕方の時間帯)を外した時間帯(夜の時間帯)に「お泊り」ができるようにしたものではないかと察します。
 しかも、一時的に「お泊り」を利用するのではなく「行き場のない人たち」ということですから、その場所が生活の拠点化=住居になっている人(利用者)がいるということなのでしょう。
 それは、この国の「住居施策」が不十分なため、国民が路頭に迷った結果であり、致し方ない現状にあることは承知できますが、通所介護事業所をそのまま生活の拠点=住居にするのは正しくない=良い物とはいえないと思います。
 あわせて「motoさんがいうお泊りデイ」の利用料がいくらなのかわかりませんが、通所介護事業所の空き時間帯を開放してお泊りさせざるを得ないような国民の状況を改善するためにも、所得に関係なく住める住居=住宅施策が必要ですし、数量を整えるべきでしょう。
 僕は、特別養護老人ホームやグループホームなど24時間型入居施設は「住居保障+生活支援の混合施策」として制度を再構築(整理)すべきだと考えています。つまり「住宅施策」と「生活支援施策」を切り離すということです。
 公営住宅(県営住宅など)も含めて、特別養護老人ホーム・グループホーム・特定施設(有料老人ホームやケアハウス)などは「公設住宅施策」として位置づけ、そこで提供される介護は「公設生活支援施策(現行では介護保険や自治体のサービス)」として分離するということで、「住居は所得・状態に関わらず完全に保障する」という国家のあり方=土台を整え、その上に医療・介護といった「生活支援策」をのせるということです。
 具体的にいえば、自宅で暮らしていた人が要介護状態になった時に、国(国民)の責任において移住先を提示できるようにし、そのまま自宅で生活し続けることも含めて選択することを可能にするべきでしょう。もちろんそれ以外にも支払い能力があれば、民設の有料老人ホームなどを利用するという選択肢もあっていいと思っています。
 その上で、「介護」「医療」といった欠かせない生活支援策の現状を提示して、最終的に「どこで住まうか」という選択ができるのがよいと考えています。
 このようにすれば、motoさんのいう「行き場」は確保できて、その上に立ってmotoさんのいる通所介護事業所へ行くか別のところへ行くかの選択肢もできます。
 おそらく「motoさんのいうお泊りデイ」の方式だと、「他のデイに行く」「デイを利用しない」という選択肢はなく、そこのデイを利用しないとなると居場所さえままならない住居になっていまうでしょうからね。
 実態に直面している自分たちは、ともすると実態にあわせてしまって大切なことを見失いがちですが、日本国民の一般的な生活の実態から照らして要介護状態にある人の実態を考察し、そもそも「最期まで国民のひとりとして生きていける社会のあり様はどうあるべきか・どうありたいか」を探求・追求していくことは、専門職の社会的役割だと思います。
 人気があれば良い物、支持されているから良い物ということにしないで、「住居として良い物」を考えるにあたって、まずは「住居として一般的な国民生活の実態に合致したものである」ことが先にありきの社会にしていくという思考が、入口として大切なのではないでしょうか。これからも一緒に考えていきましょうね。

追伸
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 冒頭の写真と同じ場所です。ここは僕が所属する施設(グループホーム・通所介護・訪問介護の複合施設)の屋上。
 隅田川花火大会打ち上げ会場の真正面に位置しており、東京スカイツリーと花火の組み合わせバッチリ!の場所です。
 ちなみにシルエットの「ヤツ」は僕です。この花火を毎年見るたびに家族は「認知症になったばあちゃんのおかげでステキな花火が見れます」と、この施設に入居している自分の身内に感謝し、長生きを願うのです。ハハハ


コメント


一緒に考えてくれる方がいるってことは、ありがたいことです。
その場所(このサイト)を見つけた自分は運が良い。

介護職員である(今は離れてますが)と同時に、家族を在宅介護をする者の立場にある人間としても。
また介護サービスを受けている私の家族本人にとっても。

和田さんのブログを拝見していて、プロフェッショナル、覚悟、働くっ言葉が心に残ります。
ブログにあったさくらんぼやザリガニ釣りのちびっこの写真や今回の空の写真を見て、仕事仕事…介護介護…と空を見上げる余裕が無かったな〜と。

頭が柔らかくなりました。


投稿者: わたる | 2012年08月20日 17:24

わたるさんへ

 頭がかたいから「柔らかくなりました」と書いたり語ったりできるのではなく、すでに柔らかいから「柔らかくなりました」って書いたり語ったりできるのではないでしょうか。ハハハ
 わたるさん、僕は人様に比べたらめっちゃ恵まれた環境にあるから、脇目をふることができるんですよ。
 


投稿者: わだゆきお | 2012年08月21日 14:47

 和田さん、ありがとうございました。
素晴らしい分析ですね(*^。^*)
以前、私の父が認知症と診断された時に、「認知症病棟は無いから」と転院を迫られ…
私自身も仕事や金銭面、家庭の諸事情で、直ぐには父を引き取ることが出来ず、ようやく知人の紹介で引き取ってくれたのが田舎の山奥の中にある精神病院でした。
脳が壊れて来ている自分との葛藤の中(「助けてくれ!俺を見殺しにするのか~!」と言っていた時期)、威厳のあった父は、
カギ・鍵・カギの鉄格子のある…
カーテンもナースコールも無い8人部屋に転院。
身体のサイズでピンク色の上下のジャージを着せられました。
尿意も便意もあるのに、紙オムツをはめられ、咀嚼も嚥下も出来るのにミキサー食を与えられました。
面会に行くたびに「俺を守る為に自衛隊を何百人も集めてお前が先頭に立って戦ってくれ」と訴えられました。95㎏あった体重が45㎏となり…
どんどんと変わりゆく父に申し訳なくて、何とか次に受け入れてくれる老健へ…
直後、悪性中皮腫の末期が発覚。
余命3ヶ月の宣告を受け、父の最後を看取る為に金額的には少々無理がありましたが、自分が勤めているグループホームへ入居できる事になりました。
入居後、父が口に出す言葉は「痛くしないで下さい」でした。
支援の方法が狂えば、こんなにも人は変わってしまうものなのだと実感しました。
グループホームでは管理者兼計画作成担当者として、職員達に「人として」を和田さんの講演会や書籍に助けられながら指導してきた自分が、他人の事ばかりに力を注ぎ、我が父には…
後悔と懺悔の気持ちでいっぱいでした。
余命3ヶ月の予定だった父は、職員達の温かい支援のおかげで2年近く頑張り、苦しみも少なく他界しました。
私の「困っている人を断らない事業所作り」
には、父が原点なのだとおもいます。
和田さんのように、しっかりと分析し、根拠をもって方向付けをした「良いもの」にまでは、私なんかは、まだまだ知識が浅く、単純に、日常生活が支援無しでは行えなくなった身内を支援しきれずに困っている家族と、壊れ行く自分を最後まで人として支えてもらうことが出来ずに困っている当事者の方達が、一つでも多くの笑顔で暮らせる居場所が「良いもの」だと感じていました。
今後、「住居として良い物」づくりに向けて、法人を離れ、個人で……なんて、難し過ぎるでしょうか?
今から出来ること…探し中です(>_<)

 追伸。現在のうちの事業所が行っていた「お泊りデイ」は一泊1050円で10室全室個室(内5室がトイレ付き)でした。
確かに、人件費確保(常勤10名・非常勤看護師3名)の為にうちのデイをご利用の方に限りの対応でした。
中には、夜間支援が必要無い場合には他のデイと組み合わせて使っておられる方もいました。


投稿者: moto | 2012年08月21日 20:13

motOさんへ

社会の有り様を一緒に考えていきましょうね。無性に腹がたってきました。

自分で!ぜひ挑んでください。挑まぬ者にしか願い事はついてこないからね。応援させていただきます。


投稿者: わだゆきお | 2012年08月22日 20:03

疑問に感じていたことがあります。
以前勤務していたグループホームでは、生活保護の受給者で認知症を抱えている人が数名生活していました。
路上で生活している高齢者を行政が保護し、グループホームに申し込みの依頼がくるというケースも多かったのです。

生活保護の公費だけではグループホームの住居費はまかなえず、居室を選べないなどの理由をつけて実質上一部は会社が負担をしていたんだと思います。

一方、もともと一般的な住居費自費で長年入居していた方の中には、いよいよ年金でやりくりできなくなり、費用の安い特養などへ移る人もいました。

経緯がどうであっても「認知症になっても、人が人として生きている。このことを護る」という点で私達の仕事に何ら変わりはないけれど、出入り(出ていかなければいけないことと、会社が負担して済んでいること)行政は依頼しながら不思議にかんじないのかなぁというのが疑問でした


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2012年08月23日 12:29

和田さんへ

コメントへのコメント、ありがとうございます。

私の頭は柔らかかったんだな〜と、うなづいています。頭がかたい、石頭と、よく言われているので。

在宅・施設・看取りについて考えながら、和田さんのブログを読み返していたら、自分へのコメントがあったのでビックリしました。
嬉しいビックリです。

コメントへのコメントへ、コメントを書いていたら、何か閃いた気がしてます。
コメントを書くことへ脇目をふったからですかね。
「脇目もふらず、一心不乱」って言いますが、脇目をふるのも大切ですね。

とにもかくにも「ありがとうございました」


投稿者: わたる | 2012年08月24日 02:15

久しぶりに投稿させて頂きます。毎日、皆様のコメントを拝見させて頂き、多くの学びを頂いています。
ようやく、ユニット型老健が完成し10月より入居者の方々が入られます。いろいろと、すったもんだありました。居室に鍵をつけて欲しい(隔離の為ではなく、入居者の意思で閉める事の出来る鍵)、ユニットに炊飯器を買って欲しい、食事時間を延長してくれ!!等、対法人だけではなく、業者にも交渉したりと・・・。
様は、当たりまえの事を当たりまえにする。暮らしを保証する。それが、介護職の専門分野である事に14年かけて、ようやく気づきました。お恥ずかしい事ですが・・・。
勿論、認知症の方を分けるつもりもありません。


投稿者: 博一 | 2012年08月24日 08:16

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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