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和田行男の「婆さんとともに」

助かりました

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 シュンコウさんと出会ったのは彼が65歳の時。今は71歳だから6年前になる。
 僕が所属する法人の職員で、介護職員として仕事をしているが、介護の仕事についたのは僕のところが初めて。
 とても「元気」に気を使っており、デイバックに錘を入れて歩いていたほどで、年齢を感じさせないフットワークの軽い人だった。
 その彼に異変が起きたのは木曜日のことだ。

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 仕事中、左手に握っていたボールペンがポトンと落っこちた。でもその時は「あれま、粗相をしでかした」と思っただけで、何をも疑わなかった。
 その日はそのまま自宅に戻り、何事もなく過ぎたが、翌日金曜日の朝、何となく左手に力が入らない。奥さんにそのことを話すと「一晩寝れば治る」と一蹴されたが(それほど見た目には何事も起こっていなかったということだろう)、常日頃から
 『小さな変化を見逃さないように』
 『早めに受診をして確定させること』
 『土曜日曜祭日にかかる前は「様子をみる」はダメで、必ず受診をすること』
 と仕事の中で教わったことが気にかかり、自力で運転して受診したところ、脳膿瘍(のうのうよう)と診断され即刻入院となった。
 脳膿瘍とは「脳の中に細菌感染が起こり、脳組織内の炎症と溜まった膿によって脳が圧迫・占拠された状態」だそうで、入院後にみるみる状態は悪化し、左半身不全状態になったそうだ。
 僕が会いに行ったのは日曜日。その時点では、本人の頑張りもあって何とか歩行は取り戻していたが、左手はまったく動かない状態だった。
 それでも持ち前の明るさとバイタリティで『和田さん、介護の仕事をしていて良かったです。和田さんから「早め早めに手立てを打つことが大事だ」って聞かされていたのでこの程度で済みました。認知症だって身体の障がいだって、誰もなりたくてなるわけじゃないって聞いていましたが、自分がなってみてつくづく思えました。情けないですが、こうなってみて初めて利用者の側から考えられます。身体が思うように動かないって大変ですね。いやぁ、鉛を四六時中しょってるみたいに重いですわ。自分の身体がこんなに重いなんて思いもしなかったです。自分のことが自分でできるってありがたいことですね。この仕事でいろいろ教わって助かります、ハイ』って笑って語ってくれた。
 シュンコウさんは、仕事の中で得たことを、自分に対して極めて優秀な実践をすることで、重篤な状態に陥らなくて済んだし、早期に回復できている。何よりも気持ちが負けていない。しかも自分に起こったことで仕事にお返しをしようとしている。ステキな人である。
 ともすると「小さな変化に気づけないで重篤化させてしまう」「うてる手立てがあるにもかかわらず、うたないで重篤化させてしまう」など、僕らの課題で利用者等を重篤化させてしまっていることに気づけないことがある。
 しかも、それを「進行」「加齢」「発症」など「本人の側の理由」で済ませてしまっていることが往々にしてある。
 シュンコウさんの言葉と病をもって尚の笑顔(写真)は、そうした僕らにありがちなだらしなさにカツを入れられた気がした(その直後に、婆さんの様子がおかしいのに訪問看護師のひとことで「様子をみることにしました」との報告がきたのでカツを入れてしまった)。
 病気を予防したい、身体能力を下げたくない、できていることは維持したい、もうこれ以上悪くはなりたくない、それは誰もの願いのはず。僕らが早め早めに手を打たねばならない仕事はいっぱいある。
 ホントの意味で「お助け」しないとね。シュンコウさん待ってるからね。
※写真は本人の了解を得て掲載しています。


コメント


いつも、先生のブログを拝見し、自分のケアの振り返りをさせていただいております。
今日、先生のブログを拝見した後、送迎した利用者さんが、「何か頭が痛いな」と…
ご家族が帰ってくるまで、お一人になるので、気になり、幸いその後の送迎はなかったので、ご家族が帰ってくるまで、一緒にいて、ご本人も「マシになってきたわ、ありがとう」とのことで、ひとまずホッとしましたが、ふと口にされる訴えも見逃してはならないなと思った出来事でした。
シュンコウさんの、復帰されます日を心より願っております。


投稿者: やまねこ | 2012年08月07日 23:34

小さな気づき…大切ですね。相手側に立つって中々出来る事ぢゃありません。私も少し違いますが、いま、入院を余儀無くされてます。お年寄りもいっぱいいてその人たちと看護師のやりとり、自分に関わる看護師さんらを見て学びたい所、感じる所をみたいと思います。
早く復帰して帰ってきてくれたら嬉しいですね。


投稿者: つくし | 2012年08月08日 22:00

私は今ホームヘルパーとして働きたいと思い、
学校に通っています。NHKの番組を拝見させていただき、より一層介護の世界で働きたい・この仕事で活躍したいと思いました。若輩者ではありますが私の目標は和田さんです。今後もブログを拝見させていただきながら日々精進していきたいと思いますm(__)m


投稿者: アベ | 2012年08月11日 21:06

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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