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和田行男の「婆さんとともに」

心化

 ある事業者の研修会に招かれたときのことだ。職員さんに混ざって「どう見ても職員じゃないだろう高齢者」が一人参加していた。
 聞くと、グループホームの入居者である。
 入居者のいるところで認知症や支援の話をするのもどうかとは一瞬思ったが、そこは野となれ山となれ魂全開、いつも通りの話をした。
 すると後日、その彼女から二通の文章が届いた。

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 その方は80歳代の女性で、グループホームに入居される前は「鬱状態」が激しく、認知障害も出現していたようで、医師の診断を受けて入居となった。
 ところがグループホームで様々に専門職のかかわりを受け、それまでの状態が一変。認知症なの?と思えるほど状態が変わったようである。
 そこまでは全くOKの話で「よかったね」と話を終われるのだが、この女性は元気さを取り戻した分、周りの入居者に対して受け止めができず「きつく当たる」など、グループホーム職員にとって共同生活上の課題の素を現しだしたのだ。
 その彼女がぼくにくれたメモを、彼女の了解を得て公開したい。

10月4日 和田先生 高知県出身
 人間は人と人で暮らして行ける
 自分ひとりでは生きて行けない
 お互い様で生きて行ける
 弱い人と一所に生きて行く
 力をよせ合って生きて行く
 人・自分の死をどんな死を向えるかを
 何時も考えておく事
 認知症対応型共同生活介護(正確に書けていないので和田が修正)
 目の前の人の為に仕事をする
 自分の仕事にほこりを持って働く

 研修2か月後の彼女の心境を綴ったメモがこれである。

 認知症
 自分が一番つらいのだから優しく接してあげましょう
 手を差しのべてあげましょう
 なりたくてなったのではない
 安定した平和な日々を送りましょう
 何事もいい方に受け止めてあげましょう
 12月2日

 研修会が終わった直後にぼくにハガキをくださったが、それを読んだときは涙が出るほど嬉しかった。そのハガキに書かれてあったことは二人だけの秘密にさせてもらうが、きっと彼女は初めて「そうなんだ。(脳の病気からくる病態)だからなんだ」と、他の入居者の「とんちんかぶり」が腑に落ちたのではないかと思う。
 これまで研修会でたくさんの人に話をさせてもらったが、一番ぼくの言葉が響いたのは彼女であり、一番変化したのも彼女ではないかと思えるほどの違いが出てきたようである。
 知らないからきつく当たってしまうのは致し方ないこと。専門職が認知症だと知っているのにきつく当たり、言動を問題視することは罪でも、彼女がそうしてしまったことは「ごもっともなこと」である。
 だから「認知症」を知った以上は「これまでのようにはしないようにしよう。受け止めよう。手をさしのべよう」と思ったのではないか。
 幸いに彼女はそう思えたことを脳に留めておく能力を失っていないため、それを継続することができているようだが、記憶障害があればそれとて難しく、一旦は彼女のように理解できたとしても、次の瞬間は同じようにきつく当たったとしても無理からぬことである。
 その点僕らは、目の前の婆さんたちが認知症だということを知っているし、知った情報を留めておくことができる能力を失ってはいない。また、認知症を理解しようとする専門職であり、認知症になって困っている人たちからお金をいただいて生計を立てているプロである。
 彼女が「心化」できたように、「人は変化する生き物である」ことに信頼を置いて、婆さんに対して職員に対して関わっていきたい。

追伸
 本日久方ぶりに自宅に戻ると、再び彼女からハガキが届いていた。もう、彼女と僕はお友達である。

ご案内】
 セミナーが開催されます。めったにない機会ですので、ぜひお越しください。
■認知症セミナー
○池田学さん(医学博士 熊本大学大学院教授)
 認知症の研究・臨床・包括的支援体制の構築(熊本モデル)など、わが国の認知症第一人者が語る「認知症」です。
○池田さんVS和田行男
  NHKで共演させてもらってからお付き合いさせていただいている和田が大胆にも、第一人者に「周辺症状という捉え方は間違っている」と噛みつきます。
■日時:2011年1月28日(金) 14:30~18:00
■場所:名古屋市「ウインクあいち小ホール2」*名古屋駅徒歩2分です。
■参加費:3000円
■募集人数:300名(先着順です)
■主催:株式会社波女(なみのおんな)担当 加藤(080-4308-8910)
■申込先
 メール:kabu7307@yahoo.co.jp 
 FAX:052-509-5116
○「1月28日セミナーの申込」と書いてください
○氏名(代表者)
○人数(総数)
○住所(代表者)
○連絡先 FAX番号もしくはメールアドレス (代表者)
 を記載の上、お申込ください。代表者のみでかまいませんが、参加人数は明記してください。
申込をいただいた後、主催者から「受付番号」と「受講料の振込み先」を、申込時に記入いただいた連絡先(FAXかメール)に送るとのことです。振込み完了で受付完了となるようです。


コメント


 何度説明しても「さっきも言ったでしょ!」とか「あーあ、何やってるの!」と言ってしまってる職員の方こそ『認知症』なのかも知れない・・・。
※不適切でしたら削除して下さい。m(__)m


投稿者: toto | 2010年12月13日 19:45

totoさんへ

 次週はそのことについて書かせてください。
 そういった職員の言動は、病からきているのではなく、ある意味「犯罪」で「犯罪者」になってしまっているのです。


投稿者: わだゆきお | 2010年12月14日 09:43

きょうはお忙しいところ、ありがとうございました。

後から考えて、きょうは大変失礼なことを申し上げたと、深く反省しております。(「ブログが長い」というご無礼な発言!)

伝えたいことを、様々な立場の方に誤解の無いように伝えるというのは、ほんとうにたいへんなことです。
ましてや、ネタが全国版ならなおさら、説明が長くなるのは当然です。

私は和田さんの足元にも及ばない拙いブロガーですが、それでも産みの苦しみは毎日のように味わっています。


和田さんを目の前に、ちょっと知ったかぶりをして悪乗りをした、浅はかな女です。
ということで、あの発言はお詫びとともに、撤回させていただこうと、この場をお借りしました。

どうぞお許しください。


投稿者: GH水草の日比野 | 2010年12月14日 23:53

GH水草の日比野さんへ

 何をおっしゃいますか。まったく気にしないでね。大事なことは、言いたいことを言えたかどうかでしょ。
 ただ僕は苦手なのですが「振り返り」は大事ですね。振り返りがあるだけで、その後は随分と違うような気がします。
 その意味では振り返りをコメントにのっけて伝えられる日比野さんはすごいね。
 これから仲間に加えてくださいね。


投稿者: わだゆきお | 2010年12月15日 12:06

和田先生と書き、思い出しても なつかしく 嬉しく なって涙が出てきます。先日は良いお話を聞かせて戴き目がさめた様です
失礼乍ら 身内の様な感じさえしてきます

先生の日記に私の事を書いてもらって とても嬉しかったです 
先生のお話を聞いて それを忘れづ 廻り(の)方々と 笑って暮らしています
有り難うございました。 忘れないで 亦 来て お 顔を見せてくださいネ。

本人さんが書いたものを本人さんの依頼で社長が打ち込みました。ほぼ原稿通りです。


投稿者: 本人より | 2010年12月15日 18:44

恐れ入ります。
あたたかいお言葉ありがとうございます。
救われました。
1月のセミナー、ぜひお伺いしたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。


投稿者: 水草の日比野 | 2010年12月15日 23:24

本日、宇都宮にて、和田さんの講演を聞いて来ました。
調子が悪い中、本当に楽しい、そして貴重な事例や体験談をお聞かせ戴き、ありがとうございました。
早く、お元気になって下さいね。

お話を聞いていて、10年前の、介護職に成り立てホヤホヤの頃の自分を思い出しました。
今より、もっとピュアにご利用者さんに、向き合っていましたし、真剣に接していた様に思います。
人間、慣れとは、恐ろしいものですね。
和田さんのお話を聞いて、今の介護の状況に対して、もっともっと敏感になって、怒ったり議論したりしないといけないんだなぁと思いました。
日々の仕事をこなす事が、精一杯で、そういう事は、後回し、または、無関心になっていました。
ダメだ、ダメだ。今の私・・今の職場のシステム・・・そう思って目が覚めた思いでした。

実は、本日、ひとつ、質問をしたかったのですが、言い出せずじまいでした。
この場をお借りして、お聞きしたいのですが・・・。
私の勤務する、デイサービスは、1日平均18名程のご利用者さんで、殆どが認知症の方々です。

勝手に施設から出て行こうとする方がある為、その対策として、出入り口2か所に鍵をかけています。

表玄関の施錠された扉の、手前に、もう一つ扉があり、これは、ご利用者さんでも開ける事が出来ます。
先日は、一人の認知症の女性が、そのドアを開け、また閉める際に、指を挟んでしまいました。

その事があったからか・・・上司がそのドアの前に、長椅子を置いてしまったのです。

その様な、ご利用者さんを囲う形で、いいのでしょうか?
ハイハイしだした、赤ん坊には、両親が危険だからと、柵をしたり、囲いをしたりもありますが、ご利用者さんは、赤ん坊とは、違いますよね。

和田さんの意見をお聞きしたいので、宜しくお願い致します。


投稿者: のんのん | 2010年12月18日 22:57

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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