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和田行男の「婆さんとともに」

お魅贈り

 皆さんは、自分がどこかへ引っ越して行くとき、隣近所を含めて地域住民の見送りを受けたことがありますか?
 僕は自分の記憶で、近隣住民の皆さんに見送られたことはないです。つまり、そんなお付き合いをしたことがないということです。

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 先日、ある老人保健施設に行くと、玄関先に介護タクシーが停まっており、人だかりができていた。
 全部で20名くらいだったと思うが、半分は職員たち、あとの半分は年齢の幅が広くどこの方かわからなかった。
 僕は一瞬、老人保健施設入所者の「入院かな」と思ったが、それにしては仰々しい光景で、施設長に聞くと、老人保健施設に入所されていた人が、遠方に住む娘さん宅に行く(転居)ということになり、隣近所の人たちがお見送りにきているとのことだった。
 それだけでも感動的だったが、玄関先で最後の別れをしてクルマが出発したものの、老人保健施設の敷地から大通りに出るために車が再び停まった途端に、お見送りに来ていた人たちが誰からともなくクルマにスーっと近寄っていき、ガラス窓越しの手を振り・声をかけ、爺さんとの別れを心から惜しむのである。
 身内ではなく隣近所の人たちが、葬式でもなく引越しでだ。
 僕は単純に感動した。
 これを読んでくれている人たちの中には、「和田さん、たいそうやわ。ごく普通の光景やんか」と思う人もいるかもしれないが、僕にはかなり新鮮な光景で、これが日本中で薄れてきているなんて「もったいない」と思った。
 事情を聞いてみると、見送られた爺さんは、爺さんの親の代から町内活動に熱心に取り組まれていたようだ。つまり単なる気のいい爺さんではなく、住民活動のリーダー的な存在で、地域住民との親交も広く深かったのだろう。
 不謹慎ながら、こういう人ならひとり暮らしで認知症になっても、何とかかんとか自宅生活を続けられるかもしれないと思えたし、こういう「人と人の関係がある街」づくりをしないと、これから増え続けるであろう一人暮らしの人が、要介護状態になって人の手が必要になると「自動的に住み替えさせてしまう社会」になってしまうだろう。
 これから10年以内に消滅する可能性のある集落は123集落で、いずれは消滅するだろうと考えられている集落を含めると2643になると、ある雑誌に書かれていた。
 そのことにも関心をもっているが、この問題への対処方のひとつとして「集落ごと移転して様々に効率化を図る」という道筋があり、そのキーワードは「人間関係の継続性」だというのだ。
 逆に言えば、人間同士に関係性があり、それがそこで暮らしている人たちにとって有益な関係性だということの証ではないか。だから「継続」がキーになる。
 地域社会から抜き取って、デイサービスに通わせてそこに閉じ込める。入居型施設に住み替えさせてそこに閉じ込める。閉じ込めることを行政も奨励してきた。
 閉じ込め型の支援を奨励し黙認しておいて、「尊厳の保持」だとか「地域ケア」だとか「地域との連携」だなどとほざいているからお笑いだ。
 人は、人の生活の中で日常的に人と交流し親交を深めてきたはずであり、人と人の交流を自分の力で維持し構築することができなくなった婆さんたちが生きていくことを支援するのが僕らの仕事。
 どこで過ごそうが、婆さんたちが人と人の関係の中で生きて行けるように、お見送りしてもらえる人がひとりでも多くいてもらえるように支援していきたいし、自分自身も人に対して「自分の魅力を贈れる人」であれるように努めなければと改めて思った光景だった。
 爺さん、元気でね。

追伸
 ブログの更新が遅くなってすいませんでした。ご心配いただいた目ですが、結膜炎にしては重症すぎるしウイルス性ではないし、と医師は困惑していましたが、お薬をきちんとさした効果なのか快復しました。
 両目とも充血・腫れ・泪・目脂で、かすれるわ、目が見えずあちこちぶつかるわ、朝起きる時には目脂で固まって両目とも開かないなど大変でした。
 初めてサングラスをかけて講演させてもらいましたが、苫小牧講演会に来てくださった皆さん、暖かく迎えてくださってありがとうございました。
 また時間がなくて運転免許証の更新に行けず期限切れを起こしていましたが、やっと今日行くことができましたが、期限切れ更新は、初めて免許証を交付された年月日が消滅するんですね。今日の日付が免許取得日となるんですね。知りませんでした。ハハハ、初免者です。


コメント


施設の中で「職員(自分)⇔入居者さん」の関係を重視してしまうところが私にもあります。人と人のいろんな形の関りを支えるって難しい

とても小さなことだけど、Aさんに物を渡す場面で、Bさんを通して届けてもらったり、目の前に置いたコップを(あえて配ってもらわずに)お隣さんに回してもらったり(単に作業的に配ってもらうより、隣に‘人がいる’→→→隣に‘この人がいる’って変化するかなとか)なるべく共同作業ができるようにとか・・・なるべく職員抜きの横のつながりがたくさんできればいいなあと思います。

護るの意味も考えてしまう。他者から護るのも、その一つだと思うけど、その場その時の対処だけに捕われてしまうと、「人と人との中でこそ人として生きられる」ことを護れない気もします


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2010年12月19日 01:01

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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