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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

心の「コンディションづくり」

昨日、“メンタルマネジメント”をテーマにした研修を行いました。場所は京都市右京区京北。私が生まれ育った町です。

さて、モチベーションやストレスケアは、私が熱くなるテーマの1つです。
その理由は、多くの相談援助職や介護職の皆さんが、この「心のコンディションづくり」に悩んでいるという声を耳にするからです。

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対人援助職、とりわけ認知症ケアにたずさわる職員の皆さんは、利用者の予想外の対応(例:怒り、叫び、抵抗、罵りなどなど)に直に接しています。

自分では慣れたと思っているかもしれませんが、実は心の中を「不全感」が満たしているということに、意外と気づいていないのではないでしょうか? 
また、そんな「小さな心の傷」を早めにケアしておかないと、やがて大変なストレスになってしまうのではないでしょうか?


私は研修会で次のような問いかけをします。
「皆さんはどのようなことがストレスになりますか?」
今回の研修では、子どもや夫とのやりとりなど、家族の話題をあげる人が多かったですね。

では次に…
「皆さんは、そのことがなぜストレスに感じるのですか?」

実は、ここが肝心な点です。
ストレスに感じることと、その理由を自分自身で理解しているかどうか……案外と、気づいていないことが多いのではないでしょうか?


50代の介護職、Aさんのお話です。

A「私は親の介護をしています。出がけにデイサービスの送迎が来るのですが、その前の準備や母が転倒しないように声を細々かけています。母がうまく歩けないと、とてもストレスです」
高「それがストレスになるのはどうしてだと思われますか?」
A「細かいことにまで気を回すことが苦手だからだと思います」
高「そうとも言えますが、こう考えてはいかがでしょう。Aさんは、つまりはせっかちな性格だと。それと結構大雑把だと……いかがですか? そして介護職なのにという自己反省も相まって……」
A「それ、当たっています(笑)」
高「つまり、細かいことまで気を回すことは大切なことです。それはいいことなのです。でも朝は時間がない……だったら、時間に余裕を持ってゆっくりと歩くようにすれば、ストレスを減らすことができるのではないでしょうか? 仕事の現場では、きっと当たり前にやっていることですよね?」

Aさんは、自分の親だと「娘としての自分・素の自分」に戻ってしまい、介護職としての当たり前のことを忘れてしまっていることがわかります。
プロとしてできることが、立場変わればできなくなる……それがAさん自身を苦しめることになっているのです。

つまり、「自分はなぜそのことがストレスになるのか?」を振り返るのは、「自己覚知」するチャンスなのです。
そしてその際のヒントとして、それがストレスにならない人のことをイメージしてはいかがでしょうか?

「なぜあの人はストレスにならないのか」……
そこには、さまざまな知恵や工夫、その人なりのユニークな考え方が潜んでいたりするからです。

Aさんの場合は、実は介護職としての自分をイメージすることで、一つの解決の糸口を見つけることができます。


次に大切なのは、「ストレスを感じるとどうなるのか?」です。

多くの皆さんは、「気持ちがどうなるか?」を考えがちです。
「暗くなる、落ち込む、イライラする、怒りっぽくなる、やる気がなくなる、集中力が落ちる」など、実にさまざまな自覚症状を語ってくれます。
しかし、私は、その前に「身体的にどうなりますか?」を尋ねます。

初期症状なら、「肩が凝る、腹痛がする、生理不順になる、胃がもたれる、頭が重い、夢をよく見る」などが身体のサインです。

これが慢性的になると、「疲れが取れない、お腹が張る、便秘になる、下痢になる、億劫になる、体重が減る、深夜に目が覚める、口内炎になる、食事が進まなくなる」などと、深刻な状態になります。

さらに症状が進むと、「夜なかなか寝つけない、熟睡できない、朝起きられない、外出もつらい、涙が出る、引きこもりたくなる、叫び出したくなる、記憶力が減退する、音にひどく敏感になる」などとなります。

つまり、ストレスのシグナルを、「身体の症状」から見つけることです。心が弱っているうえに身体的につらい状況が続けば、そのことでさらに心は深刻なダメージを受け、そして身体へのダメージは「病」となって身体を襲います。

その病状には、「円形脱毛症、過喚起症候群、過敏性腸症候群、突発性難聴、逆流性食道炎、口内炎、ヘルペス、帯状疱疹、糖尿病、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、悪性腫瘍」などがあるといいます。これもごく一部です。


自分がなぜストレスを感じるのか?

ストレスを感じないように「がんばる」ことはマイナスです。
ストレスとなる原因を見つけ、ストレスと感じる自分を自己覚知し、そのストレスと上手につきあう術(すべ)を身につけることが重要となります。

感情労働をしている皆さんは、「心のコンディションづくり」も大切な仕事の一つです。
心のトレーニング、心のエクササイズ、心のリラクゼーション……
これらを、プロフェッショナルとしてトレーニングできるノウハウが求められています。


【ムロさんの写メ日記】


地域包括・在宅介護支援センター協議会中国ブロック研修会「地域包括ケアシステムにおける効果的な多職種連携のあり方」の講義風景
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翌日の午前の部「地域包括ケアシステム構築のための取り組み」のグループワークのテーマです。
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各グループでワイワイと話し合います。
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わが京都市右京区京北の地の特別養護老人ホーム「豊和園」での研修風景です。1日目は「言いにくいことを伝えるコミュニケーション術」、2日目は「メンタルマネジメント~ストレスケアとモチベーション~」です。
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2日間続けて飾っていただいた花は、志賀幸さん作です。なんとすべて自宅の庭の花とうかがい、2度ビックリです!
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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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著者:高室成幸
定価:¥2,100(税込)
発行:中央法規出版
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