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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

実況:「ケアプラン様式の見直し」セミナー

9月17日、月刊ケアマネジメント主催の緊急セミナー「ケアプラン様式が変わる!?」に参加してきました。

テーマは、今年5月に厚生労働省の委託を受けた日本総合研究所によってまとめられた「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する調査研究 ケアプラン詳細分析結果報告書」の内容についてです。

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参加者は80名ほどでしょうか。
約2ヶ月前に募集があり、たしか1週間で席が埋まったようです。(^_^;)

講師は、報告書のとりまとめを行った齊木大さん(日本総合研究所総合研究部門)と、ケアプラン指導の第一人者である國光登志子さん(日本地域福祉研究所・立正大学名誉教授)です。

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今回出されたこの報告書は、一部のベテランケアマネジャーの皆さんには、かなりの波紋を呼んだようです。
その主たる反応は、ケアプランの新・第2表として「課題整理票」、新・第5表として「評価表」が提案されたことによるものでした。

私は、この報告書は早々に読み終えました。
そこでの感想ですが、これまで私がケアプランで指摘してきたこと(例:ワンパターン表記が多い、利用者(家族)の状況が反映できていない、専門用語が多い、目標が抽象的である、連携シートとしては不十分であるなど)が、3500のケアプランの定量分析と70のケアプランの定性分析によって証明されたとの実感を持ちました。
要するに「わが意を得たり」ということですね。


まあ、私の調査結果への感想はさておき……

現場の多くのケアマネジャーの皆さんは、この報告書の内容について、「知らない」とのことでした。
そして知っている人は、「課題整理票」と「評価表」に拒絶反応を示す人が多いと感じました。
ただその理由は、「これ以上仕事を増やすのか」「こんなものはケアマネが頭の中でやっていることだから無駄だ」などという、ちょっと的外れ(?)なものが主流のようです。

しかし、そもそも調査結果そのものを見ずに・読まずに、「厚労省が出すものはすべてけしからん」と、色眼鏡で見ている節もどこかで感じられました。


今回、齊木さんは、なぜこの調査を行ったのか、なぜ2つの新様式を提案したのかの説明から始めました。その説明は、実にわかりやすいものでした。

「今、多職種連携が言われています。連携には2つあり、小チームの連携では、たしかにあ・うんの呼吸で関わってわかりあえる可能性があります。しかし、事業所が異なる多職種連携では、そのあ・うんの呼吸が通用しない連携となります。その際に、認識を一致させるシートとして課題整理票を作りました」

…なるほど「あ・うん」ときたか。
たしかに現場では、多職種間でアセスメントの共有化ができるようなツールはあまり見当たりません。
実際に自治体などで自主的に作っているところも、一部しかありません。

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そして、今回のユニークな提案のもう1つが「評価表」です。

これは、「課題整理票」の「予後予測」(※〇〇の支援をすることによって△△となることが予測できる)から導き出された課題と短期目標を、サービス種別ごとに「短期目標」と「サービス内容」を仕分けしてその結果を評価するという、かなり効果的な(使い勝手がいい)シートになっています。

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「これは、従来のケアマネジメントでは、モニタリングとエバリュエーションが混乱している現状がありました。そこを整理する意味で作りました」という説明。

たしかに、月々のモニタリングが「評価」と混同されている現状はあります。
ケアマネジメントのサイクルを、以下のように考えるとわかりやすいですね。

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齊木さんによる1時間10分程度の説明の後、國光先生から、「問題提議」として発表がありました。

ポイントの第1は、「課題整理票」の状況の事実を「〇、△、×」で分類できるのか、また改善可能性を「高い、低い」で分類できるのかというもの。
このことでケアマネは、利用者(家族)の不安定な状況を捉えきれずに、“分類”という形で割り切ってしまう危険性はないのか、つまり、利用者(家族)を深く理解する視点が欠如しないかどうか。

第2は、「予後予測」は医療・リハビリで使用されている用語であり、暮らしにおいては予測に対する不確実性がある。それをどう記載するのか。

第3は、計画策定で利用者(家族)に見せない場合があるとするならば、介護保険の理念でもある利用者(家族)の権利を侵害する(契約違反?)ことにならないか。

などを話されました。

その後、参加者からの質問タイムが約40分ありました。
小生も、今回の報告書を感想とともに、両氏への質問をさせていただきました。


現在、日本介護支援専門員協会が協力して、約50名(1人:5事例)のケアマネジャーの方々が、この新様式の実証事業を行っているとのことです。
最終的には全体で1,000事例超の実証を行い、試行的に作成した課題整理票(仮称)をアンケートで評価していくといいます。
やはり、じかに聴いてみないとわかりにくい部分もあるものです。

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「質の高いケアマネジメント」を目指していくことは、関係者にとっての共通の目標です。そして、今のシートだけでは不十分と思っている現場のケアマネジャーも、現に多くいます。

今回の新様式の動きを、介護保険制度スタート12年が経過した“進化形”として、私は捉えたいと思います。
だからこそ、現場からの「提案型の意見」が今、求められているのだと思います。


【ムロさんの写メ日記】

東京都人材支援事業団の介護セミナー。認知症講座の一幕です。
参加された方は、定年間近の方、現在介護されている方、遠距離介護をされている方など様々。一般市民の皆さんの前で話をすると、教えられることがたくさんあります。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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