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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

「エピソード」のススメ

 エピソード……ある物事や状況を伝える材料として、よくあるのが数値。たとえば「熱がある」という事実。これを「38度5分です」と数値だけで示すことで、より客観的に医師にわかってもらうことができますね。
 しかし、高熱であることはわかっても、そのことで、どれほど仕事に行くことや生活することがしんどいのか、はわかりづらいわけです。

「38度5分も熱があって、駅の階段も上がれないくらいつらいんです。咳もでるし、喉はヒリヒリしています」
 なんて状況説明をすると、ようやくその「つらさ」が相手に伝わることになります。

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 さてそこでエピソードの話。英語では「episode」と書きます。和訳では、挿話や出来事などとなりますね。あまり知られていないけれど、その人の性格や暮らしぶりを象徴するような話や意外な面を象徴するような話がエピソードの意味として訳されます。たとえば……
A:部屋がとても散らかっている
B:実はとても無精で、3年間も掃除をしていないため部屋が散らかり放題だ
 さて、どちらが立体的にイメージできるでしょうか。もちろんBの表現ですね。この文章の間に「洗っていない食器」や「食べたままのカップラーメン」などの具体的材料(高室流表現では具材)が盛り込まれていると、文章がいきいきと立ち上がってきます。

 このようにエピソードというのは、事実や情報を「イメージでビジュアル化」するための手法の一つと考えればよいのです。
 どうして私がエピソードにこだわるかというと、山形県、岐阜県、島根県、長崎県などで主任介護支援専門員研修の事例検討・研究のコマ(4日間)を担当していた際、みなさんに事例の発表をしてもらったときに、その発表が妙に淡々としたり、わかりにくかったりしたことからです。
「このAさんは、独居で糖尿病で歩けません。長男がたまにくるのですが、ほとんど小遣いをもらったら帰るようなものです。介護拒否ですね。それと……(中略)ADLは排泄介助、必要ですね」
なんて調子なのです。一同は黙々と聞いているのか、事例提出シートを読み込んでいるのか、よくわかりません。
 そして進行役が、「では、なにか質問ありませんか?」なんて投げかけると、数人が「ADLの食事は全介助ですか?」「通院はどうしていますか?」なんて断片的な質問を数回やりとりして、おもむろに協議に入ることになります。

 私の内心は「ちょっと、これで皆さんはケースの全体像がわかっとるのかなぁ」と不安にかられ、途中に分け入り(つまり介入し)「いま、長男が母親の介護拒否をするということですが、象徴的な出来事を1~2つあげてもらえませんか?」と促すことに。すると「そうですねぇ、一カ月前ですが、10日ぶりに長男さんが帰った際に便失禁をされて衣服がかなり汚れていました。その様子がわかったのに長男さんは……」とエピソードを語ってくれました。
 すると聞いていた参加者の目の色がちがってきます。「そうかぁ、そういうことか……」と納得のまなざしになるのです。

 このように、ある事実や状況を伝えるために、エピソードはとても役に立ってくれるのです。自分が話すときにもエピソードを入れ込んで話したり、他のケアマネジャーから事例などを聞くときにも、「いまのお話で象徴的なエピソードがあれば聞かせていただけますか?」と促してみましょう。
 予想外の「わかりやすさ」に驚くことでしょう。
 

ムロさんの写メ日記

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鳥取県の社会福祉法人の中堅的職員研修です。まずは自己紹介です


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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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