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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

ある老老介護の風景

 今から3年前、私のメルマガ「元気いっぱい」に次のようなコラムを書きました。読んだ方もいるでしょうが、ちょっと再録します。

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 その男はある映画の主演をきっかけに共演した女優と3年後に結婚しました。その時、2人は25歳と26歳。そして47年後、苦労の歳月は流れ、いまは夫が妻の老老介護の真っ只中…。
 その男性は長門裕之(74歳)、女性は南田洋子(75歳)。原作石原慎太郎の映画「太陽の季節」(1957年)は、当時の若者が求める自由さを強烈に描きました。
 その後、彼は俳優として多忙の日々を送るいっぽう、彼女はまもなく脳軟化症を患う歌舞伎役者であった義父の介護に追われることになります。TV「ミュージックフェア」の案内役のおしどり夫婦ぶりが懐かしい人もいるでしょう。

 3年前の千葉でのTV番組の収録中のこと。彼女との会話がどうにもかみ合わず、突然怒りだす始末。「あれ、おかしいな?」と不審に思ったことが現実に。続く北海道ロケでは、「セリフが出てこないから、台本をカメラの下に置きたい」と懇願することも。いらつく長門さんは罵倒します。
 「俳優がセリフを覚えられなくてどうする!」
 その夜、深夜まで何度も何度も練習をし、やがて「俳優を辞めたい」と彼女は泣きながら呟きます。
 その時、南田洋子さんは72歳…認知症の始まりでした。

 「洋子のこぼれ落ちる記憶に間に合わないんです」
 長門さんは3年経っても専門医に診せることなく、在宅介護でがんばってきました。トイレの介助から就寝前の足のマッサージ。深夜に必ず起きる彼女のための夜食づくり。「洋子の面倒は俺しかみれない」と胸を張るご自身も、61歳の時に解離性動脈瘤で生死の境をさまよっています。

 「俺は溺れているよ。こうすればいいと誰かに言ってもらいたい(泣)。呆然と見るしかない自分がいてね。こっちは素人だから、情けないよ(泣)」
 専門医に診せてこなかったのも、その診断を知るのが怖いからと。
 「よくがんばってきましたね。もう少しがんばれば良くなりますよって示唆する言葉を期待したいね(笑)」…病院に向かう車のなかで、カメラに向かって介護する夫の素直な心情を吐露します。

 ある夜のこと。マッサージを終え、眠る前に「洋子、愛しているよ。好きだよ」と繰り返す長門さん。弱い声ながら「…私も。好きよ」とかえす南田さん。…「全国にこの現実を伝えたい」の思いでカメラを回すことを長門さんは決意したといいます。

 47年の時が流れ、今度は2人の共演ドラマ「太陽の季節~老老編~」の撮影が始まったのかもしれません。(終わり)

 このコラムを書いた日をいまでもよく覚えています。
 介護する老夫のメンツと本音。襲ってくる不安、そして尽きぬ愛情。それは償いのような愛にも見えたり、主演のドラマを演じているように見えたり…。
 長門さんの生きざまは、77歳の不器用な男性高齢者の典型であり、多くの共感を呼びました。

 先週、「太陽の季節~老老編~」は未完に終わりました。
 長門さんは亡くなっても、老老介護のドラマは私たちの心にしっかりと残っています。不器用で一途で正直で…この老夫婦の介護ドラマを語り継ぐこと、それが何よりの長門さんの願いではないでしょうか。

ムロさんの写メ日記

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京都府舞鶴市「まいづるケアマネジャー連絡会」研修会。今回のテーマは「ケアマネジャーの仕事力」でした

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みなさんとても熱心です

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あいさつする会長の藤原さん。この後に「コミュニケーションは好きですか?」と思いっきりのムチャ振り。「えぇぇぇ…まあ。でも苦、苦手ですね」と必死の返事。すみません、いきなりで<(_ _)>

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(向かって右から)上野由香子さん、矢野尚子さん、松味喜久代さん、藤原貴夫さん、林高幸さん。林さんには開会前に、レーザーマウスを買いに走ってもらいました(^_^;)

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翌日、第3セクターの電車に乗り、西舞鶴駅から網野駅に向かいました。時間にして90分間、ちょっとした小旅行でした

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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