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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

物流が変える生活支援

 今回、宮城県に震災ボランティアに出かけ、池田昌弘さん(全国コミュニティライフサポートセンター理事長)の会話に出てきた「生活支援」のキーワードがとても新鮮でした。
 以前から耳にしてはいましたが、この用語を使ったことはなく、「暮らしの支援」というもっぱらやわらかい表現を使っていました。
 この4月から某大学の通信制の大学院生を指導することになり、「自立」も「自立(自律)」と表記するようになりました。同様に、暮らしの支援も「生活支援」という4文字熟語の方がぴったりくるように思えるようになってきました。

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 では、ここで「生活」とは何か?という定義が必要になってきます。ある本では「生き活きした暮らし」を生活という、と解釈がされていて、これもなるほどと思った次第です。
 ならば生活支援とは、食料や日用品だけでなく、娯楽や団らんなども対象になるのかなと思ったり。定義は本当にむずかしいですね。

 さてさて、今回のテーマは、ズバリ「物流」です。
 物流とはトラックや列車、飛行機、船舶などによる運搬です。水が流れるのとわけが違います。水は上から下にしか流れません。水路がなければ、とたんに詰まってしまいます。ところが現代の物流は人間でなく機械が担っていますから、いたるところに運んでくれます。下流から上流、低地から高地までへっちゃらです。
 簡単な例ですと、新宿からわが京都にまで、わずか840円を出費すれば母の日のカーネーションを翌日に送ってくれます。高速代金と運転時間を計算すれば、超お得な物流サービスが「宅急便」です。

 この宅急便なるサービスが実に便利です。
 あたり前ですが、ダンボールひと箱程度なら離島にまで船で運んでくれます。先月、北海道の奥尻島に行ったときです。
「先生の伝える力ともう限界の本、先週購入しました」
 と言われた時、不覚にも「エッ、本屋さんがあるんですか?」と質問してしまいました。「あるわけないじゃないですか(笑)。アマゾンで買ったんです。奥尻のクロネコヤマトは需要が多くて、こんどターミナルを増やすそうです」とのこと。店はなくとも、ネットで注文すれば宅急便がさまざまな品物を運んで来てくれるわけです。

 ならば、この発想を「買物難民」となった高齢者支援に使えないか。宅急便業界は、中山間地の高齢者には公民館などに、野菜や肉類の注文用端末を設置し、そこから注文をしてもらおうといろんな試みをしています。生協や生活クラブはネット注文が一般的になってきました。

 ならば、ならばですよ。同様のことが都会に暮らす子どもたちで、できないだろうかと、いま、研修会で話しているのが「現代版仕送り」システムです。
 都会のスーパーで安く購入した野菜やコメ、日用品などを中山間地に暮らす老親に宅急便で送るわけです。肉類や魚は、もちろんクール宅急便で。事前に電話で注文を取れば、それで親子の会話の成立です。
 つまり老親が買物弱者として困っているなら、子どもたちが宅急便の機能を使って「モノの仕送り」をするわけです。お金の仕送りは銀行がやってくれますから(つまり振り込みですね)。

 IT技術の発達のおかげで、自宅に居ながらにして「スーパーで買物」ができる時代がやってこようとしています。それを下支えするのが「物流」です。

 生活支援の資源として、物流業者は今後ますます注目されていくことでしょう。


ムロさんの写メ日記

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研修会では、プロジェクターとPCの相性が大事です


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岩手県南部町の仕出し弁当。とてもおいしかったですね


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雲海は大好きな景色です。いつも宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」を思い出します


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コメント


高室先生、こんにちは!

物流・・・本当に大切ですよね。
学生時代、お金がない時に親からのお米や缶詰、母が作った煮物が宅急便で届くと、嬉しくて・・・

今度は、その反対を親へですね。
不思議なことに、宅急便の箱を開けると、その家の空気の匂いがするような気がするんです。

そして、クロネコヤマトさん、創始者の方はこの事業を随分反対されてはじめられたそうですね。


でも、今はこのように多くの方のお役に立てています。
高齢者の生活を支えるのは当たり前ですが、介護保険制度や福祉の制度だけではありません。

社会全体で良い幸せな形になるようにしていきたいですね!


投稿者: 桃太郎 | 2011年05月14日 09:44

桃太郎さんへ

お久しぶりです。

自分ができることと、これは他に頼みたいことがはっきりして、それをお願いできる業者や商店、プロフェッショナルがいたら、代替かもしれませんが、まずは目的を達成することができます。

2月号のケアコム(ケアタウン発行のフリーペーパー)は、脳性マヒの玉木さんです。かれと対談をしていてなるほどと思ったのは、「妻が不在の時に、僕は父親として3歳の子どもに食事を食べさせたいと思いました。でも脳性マヒなのでうまくできません。私が父親としてできない役割をヘルパーさんにお願いすることは駄目なんでしょうか?」というくだりです。

できないことを他の資源に頼ることで可能にするという発想・・・介護サービスも同じではないでしょうか。

生活支援の視点からも宅急便サービスは、とても使い手勝手のよいサービスであり、これからもっと進化していくサービスなんだなと思いますが、みなさん、いかがでしょうか?

桃太郎さんの「宅急便の箱を開けると、その人の家の暮らしの匂いがわかる」という表現・・・とてもいいですね。

また、書き込み、楽しみにしています。


投稿者: たかむろ | 2011年05月17日 00:28

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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