ページの先頭です。

ホーム >> 福祉専門職サポーターズ >> プロフェッショナルブログ
高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

無料と有料を考える

  次期介護保険改正をめぐって介護保険部会で、かなり踏み込んだ内容の議論がされています。参加した某氏は「あれは議論というより、各委員の発言しっぱなし状態で、お互いで深めあうような進行になっていないですよ」と嘆きます。主張だけでかみ合わないとすれば、その落とし所はだれがつけるのか、気になるところです。

続きを読む

 さて、訪問介護では「24時間地域巡回型訪問サービス」が本格的に論議され、通所介護ではお泊まりもOKという「お泊まりデイ」などが特徴的でしょうか。これからさらに審議が進むのでしょうが、ケアマネジャーつまり介護支援専門員のみなさんの業務に大いに影響するのが「居宅介護支援」の有料化、つまりケアマネジメントの1割負担が議論の俎上にあがってきたということです。

 従来の保険者の10割負担分のうち、利用者に1割を負担をしてもらおうというもの。その理由は財源論が1つといわれていますが、それは利用者の側の財源(家計)とっても同じことです。
 もし将来、支給限度基準額の枠内に10,000円~13,000円もの報酬金額が入りこむとどうなるか。通所介護や短期入所の1回分以上に匹敵するわけです。訪問介護なら3回分前後でしょうか。それだけ使うなら、その分サービスの利用を厚くしたいという声になったりするかもしれません。

 ケアプランを自己作成する人が増えるかもと危惧する声があります。しかし、プランはできても各サービス事業所との連絡や調整まで利用者(家族)が行うにはかなり手間がかかり難しいでしょう。それと気になるのが、利用者(家族)がプランを作成したら「言いなりプラン」や「サービス注文書プラン」にならないという保証はどこにあるのか。このあたりも心配です。

 日本介護支援専門員協会は、サービス事業所のプラン作成代行を可能にしてしまうのではと発言しています。こうなると大変です。介護保険の本来の公正中立や利用者の権利擁護はだれが担うのでしょうか?
 これを「自己責任論」に集約して事足れりとするのは、本来の介護保険のスタート時点の方向性を反故にすることになります。判断能力が著しく落ちた要介護高齢者や自分の意向を表明できない利用者の「代弁者」として介護支援専門員を位置づけたのではないでしょうか?

 今回の議論は、介護支援専門員の質が低いから1割負担によって公にして利用者(家族)に選択をしてもらおう、質の低い人には退場してもらおうと主張する向きがあります。しかし、これで退場することになるのか、定かではありません。
 むしろ質の向上のために、保険者が行うべき人材育成とともに、介護支援専門員の試験の質(たとえば、介護職に対するソーシャルワークの知識が含まれる科目の免除、ペーパーテストで実技はなし、受験資格が5年の現場実践、でよいのか? 等)や更新研修の中味や質こそ、問われるべきです。

 確かに、今まで「無料」であることに胡坐をかいてきた一部の居宅介護支援事業所と介護支援専門員がいることは否めないのも事実です。
「お金を払っていないのに、月に1回は話し相手になってくれて、なにかと心配までしてくれる、とても親切な人」に対して、基本的に文句を言う人はいません。なぜなら……「無料」だからです。
 「タダだったら多少は仕方ないか。我慢しよう」と大目に見るのが世間の常識です。

 しかし、1,000円~1,300円の負担をするということは、「10,000円~13,000円」を事業所が報酬として受け取っていることになります。みなさんにとって、この報酬はまだまだ低いという実感が強いことでしょう。しかし、その金額がわかったとき、利用者(家族)の意識は確実に変わることでしょう。認知症加算、独居加算がつくと、さらに額はあがります。その分のフォローをどれだけやってくれているか、その見る目は厳しくなることは確実でしょう。

 いずれにしても、利用者に1,000円~1,300円だけでなく、さらに加算分の負担がかかることは、介護サービスの利用になんらかの抑制が生じる(利用者さんによっては、かなり……)ことが懸念されます。

 居宅介護支援の「1割負担」について、現場でもしっかりとした議論がされることが求められています。

 みなさんの書き込み、お待ちしています<(_ _)>


ムロさんの写メ日記 

2010110101.gif
今回は鳥取県の研修計画担当者養成講座(特別編)のグループワーク

2010110108.gif
各グループを研修プランニング会社にみたてて、各自の研修プランを、クライアント(H社会福祉法人)がどこにするかを決める「コンペ」の様子です

2010110103.gif
50歳にしてJA鳥取中央赤碕支所・支所長から転身された、今年2年目の中井誠さんです。趣味は野球で、「竹内グリーンソックス」の監督です

2010110104.gif
10月21日、岐阜県白河町の研修会。事務局のみなさんです


2010110105.gif
可児市からも駆けつけてこられました


2010110106.gif
あいさつをされる白河町の介護保険課課長さん


2010110107.gif
埋め込み式のレジュメにすごい書き込みです。チャレンジシートもみんなで熱心に書いています


 
 今週のメールマガジン「元気いっぱい」第252号(無料)は「キョウドウ~3つの漢字の意味~」です。メルマガは随時登録受付中です。ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。


コメント


たしかに、介護支援専門員の研修、学習会で計画用紙のマス目をいかに埋めるかの方法を見つけるのに躍起になっている方々も多く見られます。

制度開始当初の型にこだわった、国の進め方のつけが大きく残っていると感じています。

必ずしもケアマネ自体が何も考えれていないわけではなく、自然の流れの中で現状のケアマネ像が出来上がっていると思います。

今後の研修の在り方や、人材育成にこそ力とお金を注いでほしいと思うのと、ケアマネ自身もたくさん議論して自分たちの思いを確認して深めていかなければと、最近は強く感じ考えています。


投稿者: 秋田のタカ | 2010年11月02日 09:35

 「居宅介護支援」の有料化ですが、地域密着型のサービスの1つである「小規模多機能型居宅介護」は、計画作成者として介護支援専門員の配置があります。マネジメントも同一事業所で行うということになっています。居宅と同じ業務をしていますし、多くの事業所が兼務(介護職員との兼務・管理者との兼務等々)となっていて多忙のようです。
 しかし居宅介護支援費は無いようです。ある事業所が自治体に質問したところ、「包括利用料」に含まれていますからとの回答があったとも聞いています。・・・・・と首をひねってしまったことを覚えています。これも今回の論議の一つでしょうか。
 あっ  今朝は霜注意報が出ており、見事に一面真っ白な霜景色?でした。今年は秋があっという間に通り過ぎたようです。


投稿者: あっちゃん | 2010年11月03日 12:56

秋田のタカさんへ

 ケアプランのマス目をいかに埋めるのか。そのテクニックに凝るのではなく、利用者(家族)の意向や思い、チームとしての方向性が浮かぶ総合的方針、なにをいつからいつまでに達成するかの目標とそれをめざすことで、どのような課題が可能となるのか、そのプロセスが見えていないと、「書く行為」はマス目埋め?になってしまいますね。
 現場のケアマネのみなさんは本当に頑張っています。ただその頑張りが評価されづらかったり、思いがカタチにならないために「中身の濃い動き」が周囲に見えないこともあります。
 ここでも「見える化」が課題ですね。

あっちゃんさんへ
 先週からカムバック、お待ちしていました!(^^)!
 小規模多機能型居宅介護で居宅介護支援費が包括利用料となっていて、そのうえ兼務となれば、ケアマネジメントを行っている実感を持つのに苦労されている声を聞いたことがあります。
 またご意見、お待ちしています。


投稿者: たかむろ | 2010年11月05日 08:34

いくつも気になる点がありました。

 まず、制度の持続可能性を論ずるにせよ、地域包括ケアシステムを試行するにせよ、居宅支援費に一割負担を導入することが直接的にも本質的にも作用するとは思えません。訪問介護における生活援助サービスについても同様です。
 枝葉末節以前に議論のすり替え、パッチワーク、スケープゴート。とにかくなにかやった体裁だけを整えるために思いついたから…としか思えない稚拙さです。
 たしかに急激に増えた給付額の一因に居宅介護支援があるのかもしれません。
 しかし、それは介護支援専門員個々の力量や質とやらのみに起因するのでしょうか?
 そもそも、質とはなんですか?少なくとも缶ビールを運転手さんに奢ってもらいながら経費でタクシー帰宅したりはしてません。
 それに現時点においてでも「ケアマネジメントとはなんぞや」と説明できる人がどれだけいるでしょうか?それは定説となっているのでしょうか?そのくらい概念として未熟なものだと思います。
 1割負担をうんぬんするよりもそうした点での議論が進んでゆくような土壌を整備することの方がよっぽど重要だと思います。
 ゆえに繰り返しになりますが1割負担の是非は品質とは言い難く、そのためのパワーは是非とも別な議論かもしくは言いっぱなしが議論になることに費やしていただきたいと愚考します。

 つぎに、セルフプランに関してですが、これ自体は構わないと思います。ただし、なかには自分の想いだけの権利侵害プランも発生してしまうでしょうし、法定代理受領を放棄すればプランを書くことすら必要なくなるはずです。それに対してどう手当てするかは必要なはずです。
 ケアマネジャーが最も葛藤するのは本人と家族の意見が割れている時、両者の意向を如何にまとめるかという点だと思います。この点は計画書に意向を別々に書こうという指導ポイントにも表れていますし、現場でセルフプランが持ちだされるのはケアマネジャーが対応不能になるような給付困難事例の時ですから。
 最後に、介護支援専門員協会のいう「サービス事業所によるプラン作成代行を可能にする」いうのがサービス事業所による我田引水というのならばこれはこれで失礼ないい方だとも思いました。それが悪質であることが前提にあるように思うのは私だけでしょうか?

 有料で効果を感じていないにも関わらず続けているリハビリや、疑念を懐きつつも変えることをしない通院先…そんな例を散見するに有料化で「低品質」な事業所・ケアマネジャーが自然淘汰、退場させられるということは考えづらいことだと思わざるをません。


投稿者: ホッシー | 2010年11月07日 06:30

ホッシーさんへ

 ご意見、ありがとうございます。居宅介護支援費の1割負担と「ケアマネジメントの質」とは、論じる土台が違うというご指摘については、確かにそうともいえます。
 私が伝えたかったのは、利用者(家族)の意識が変わるかもしれないかもという指摘です。無料(負担なし)ということで意識されてこなかったことも、1割負担により、利用者(家族)もよい意味で、ケアマネジメントに対して具体的な要望等も増えることになり、それにしっかり応えられる仕事(質)が求められてくることになるということです。
 まずはご意見、ありがとうございました。


投稿者: たかむろ | 2010年11月12日 21:27

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

【高室成幸さんの最新刊】
『ケアマネジャーの質問力』
著者:高室成幸
定価:¥2,100(税込)
発行:中央法規出版
ご注文はe-booksから
3172.jpg


bn_caretown.jpg
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books