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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

心に届く伝え方

 今年の5月に「伝える力」(筒井書房刊)を刊行しました。元NHKキャスターの池上彰さんの「伝える力」が一般の方やビジネスマン向けなら、私の本は相談援助職や対人援助職の方向けです。
 対人援助職なのに、人前で話すのが案外苦手な方が多い。高齢者や障害者などケアを提供する利用者の方との直接的なコミュニケーションを苦手にする人は少なくて、むしろその家族との会話や法人内や他の連携機関を前にしての「報告」などに苦労しているとのこと。

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 私は講師としてさまざまな方々を対象に話をしています。人数では15人程度の小規模から1000人近い大規模、資格ではケアマネジャー、介護福祉士、ヘルパー、民生委員、一般市民などです。時間も、 2時間から2日間までさまざまです。
 こうなると単なる「お話好き」では話はとてももちません。私なりのスピーチを中心とした「伝える力」をまとめてみようと一冊にしました。

 おかげで全国のケアマネ連絡会のみなさんから、「伝える力~チームケアに役立つプレゼンテーションの技術~」なるテーマで呼ばれることも増えています。
 直近は岐阜県の主任介護支援専門員のみなさんを対象にしたフォローアップ研修を1日行いました。その様子をお話ししますね。

 まずは理論編として、伝えることの意味やなぜ伝わりにくいか、伝えるうえでの勘所などを講義します。しかし、いくら講義しても、それは「知識」として得たことでしかありません。午後から、「では、みなさんで体験してみましょう」とワークショップを盛り込みました。

 当初は1対1のワークを考えました。双方がネコ派・イヌ派に分かれて、その魅力を話すといったものですが、今回は、人数も多いのでやめました。
 大人数で取り組みやすい「ディベート」のワークショップをすることに。あるテーマについて、本音の賛成・反対はさておいて、むりやり賛成派と反対派に分かれて、議論をするワークです。これは多様な考え方を体験するにはよいワークなのですが、今回はプレゼンテーションに重きをおくことに。ポイントはいかに聴き手を納得させるか。そのために話の内容だけでなく、話し方・エピソード・身振りなどを工夫するようにアドバイスをしました。

 ディベートですから、テーマが大切です。こういう場合、とかく「施設は必要かどうか」など、仕事に近いテーマを設定することが多いのですが、私の場合はそうしません(笑)。ズバリ、第1回目は「日本にマックは必要か!」です。130人を7~8人のグループに分け、真ん中で「右は必要派、左は不要派です」と分けて、グループで話し合い。
 代表チームにあがってもらい、「主張・反論・総論」を戦わせるのです。日本の食が滅びる・家族の団らんがなくなる・日本農業の危機と不要派が叫べば、働く主婦の味方・バランス食として最高・ライスバーガーもあると必要派が反論します。

「みなさん、右手を上げて手の平を広げてみて下さい。そこにマックがあるんです。ジューシーな香りがただよってきます。……田舎のある日暮れ時。縁側で、おじいちゃんと孫が話しています。このポテト、おいしいねと。失われた家族の姿がマックでよみがえるのです」

 発想のユニークさに、みんな大笑いの連続です。

 要領がわかった段階で、次は「日本に東京ディズニーランドは必要か!」でディベート。必要派は、家族の思い出・高齢者や障害者にもやさしい・働く場として最高と持ちあげれば、不要派はお金が高い・他の遊園地は閑古鳥などで反論します。これは全グループでやってもらいました。

 いずれも、正論はどれかでなく、「どちらが納得させられたか」で勝敗を決めるので、多少の暴論・極論でも、聴き手のハートや本音に届いたほうに軍配が上がるというのがこのワークショップの狙いです。

 感情的な言い方は案外と伝わりづらく、だれにも身近なエピソードや具体的データを上げた方が説得力があるのも分かってもらいやすいようです。しかし、『納得感』については、最後に、「聴き手の感情」に訴えかけたチームに軍配が。

 伝えるとは「相手のハートを動かす」こと、これをまずは体験してもらいました!(^^)!


ムロさんの写メ日記
 

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ディベートのパワポです


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ステージで2チームに分かれて、ディベートの開始です


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会場全体をつかって2チームで競いあいます


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踊るように語りかける人もいます

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手前に座っているのが、観察者&評定者です


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ステージでは終了後の振り返り。どちらが納得したか、どのフレーズが心に届いたか、どちらに親しみを感じたかなどを、観察者&評定者から振り返りをもらいます


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昨年のフォローアップ研修に引き続き参加された子安成雄さんです。「後期高齢者になりましたが、がんばっています」。
大垣市在宅介護支援相談所……事業所名も長いケースワーカーでの経験を彷彿とさせますね。ケアマネ歴も堂々の10年です


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コメント


高室先生、こんにちは!

「高齢者や障害者などケアを提供する利用者の方との直接的なコミュニケーションを苦手にする人は少なくて、むしろその家族との会話や法人内や他の連携機関を前にしての「報告」などに苦労しているとのこと」

まさに、その通りです・・・
遠方で2年〰3年に一度しか帰省できないご家族へ、現在おかれているリスク(勿論すぐ生命にではありませんが・・・)が電話でなかなか伝えきれなくて、帰ってきてもらえない時の、なんともいえない思い・・・

職場内や関係機関に状況が上手く伝わらずに、悩むことも多々あります。

具体的で、身近なエピソードがポイントなのですね!
いろんな、お話の中からエピソードをしっかり確認しておくこともケアマネの大切なアセスメント能力ですね。

しかし、マックのお話、いいですね(^^)
光景が浮かぶようです!!!


投稿者: 桃太郎 | 2010年10月12日 22:43

高室先生、ディベートの様子沢山のせて頂きありがとうございます。ほんとに大ディベート大会でしたね・・^^;
やはり、体で体感したものって忘れない気がします。「伝える」ということって難しいですが、相手のツボ?にはまった時は、よっしゃ!という感じになります。改めて、なんで伝わらないんだろうという振り返りも大事だな・・と実感。だって、今までは、なんでわかってくれないんだろう・・と相手を責めてた気がするのです。これからは、あの手?この手で相手によっていろいろ伝え方も工夫しながらやっていきたいと思います。
ありがとうございました。
また、お会いできる日を楽しみにして・・お元気で。

追伸
最年長ケアマネさんと私もツーショットしたかったな


投稿者: kobajun | 2010年10月13日 18:20

 高室先生お久しぶりです。
 転勤により研修の裏方では無くなり、久しく講義を聴く機会がありませんでしたので、先日の岐阜県主任介護支援専門員等フォローアップ研修は、とても楽しく、そして充実した時間でした。ありがとうございました。
 やはり「伝える」って難しいです。研修会場でもお話ししましたが、現場では30歳代の管理者が50歳代のベテラン介護士・看護師を統括しなければならないことも珍しいことではなく、現在、私が置かれている立場とも照らし合わせ、だからこそ、今回の研修のテーマ「伝える力」は、ケアマネのみならず、幅広く応用できる実践的な内容だと思いました。
 また、研修の一スタッフでしかない私のことも覚えていてくださり、私からあいさつに伺わなければならないのに、高室先生の方から「久しぶり」と笑顔で声をかけていただき、さらには「痩せたねぇ」(←こっちの方が感動ですかね)と言われたこと。高室先生の細かな気配りも感じられ、とても嬉しかったです。
 今後も、機会があれば是非、先生の講義を拝聴させていただきたいと思います。よろしくお願いします。


投稿者: 元・研修の裏方 | 2010年10月15日 11:14

高室先生、先日は、はるばる大垣までおいでいただき、ありがとうございました。

ディベートのテーマのマックとTDLですが、私のグループはなんと半数の方が「どちらも知らない」方々でした。
ですので、まずグループ内において「伝えること」が課題となりました。そのものを経験されてない方に理解してもらうというのは難しいですね。つい感情が先走ります。
デイサービスを不安に思う利用者さんには、こうしてイメージで伝えることが大切だと痛感しました。


そして「伝える力」のサイン本に感謝です。
おっしゃるとおりケアマネのみならず社会人の必須アイテムですね。さりげなくリビングに置いておいたら中間管理職の悩み多きお年頃(?)の夫が手にとっていました。結婚して15年!私の本を読むのを見たのは初めてです。
高室先生、久々に夫婦のコミュニケーションツールとなりました(笑)

追伸:元研修の裏方様お元気そうで安心しました。陰ながら応援しております。


投稿者: 元演劇部員 | 2010年10月15日 23:25

ホットな感想メール、ありがとうございます。

桃太郎さんへ

 2~3年に1度くらいしか帰省できない家族の方に電話だけで伝えるのは大変と思います。顔が見えないと余計に神経を使いますしね。電話はリアルタイムなコミュニケーションですが、ファクスやメールは文字情報ですから、まずはこちらの意図や言いたいことは文字で残るので読み返しも可能です。
 一度、文書で状況を伝えて、電話で補強するというのはいかがでしょうか?もちろん、緊急の場合は事情が違いますが。それぞれのコミュニケーション手段のプラス面を上手に使いこなしたいですね。

kobajunさんへ
 いやぁ、がんばっていましたね。あの演習では仕事に関連するテーマはとりあげないようにしています。それをやると立場や考え方がでちゃっておもしろくないんですね。今回のようなテーマは、自由にノビノビとできる点がポイントです。
 それにどちらにつこうが正論はあるわけですしね。楽しんで体験してもらえたのはなりよりです。
 伝えるって、内容だけでなく、感情面がとても大切なんですよね。そのあたりも実感してもらえたのではないでしょうか。

研修の裏方さんへ
 お久しぶりでした。以前より、痩せたというか、絞れた身体を拝見して、つい第1声を発してしまいました!(^^)!。それも健康的に痩せておられたので、これまたホッとしました。この手の話題をだすと「いや実は入院していたんで・・・」なんてリアクションが返ってくることもありますしね。
 デイサービスの所長として、今回の研修は、かなり琴線に触れることが多かったようですね。実はコミュニケーション力なんです。これは、とくにマネジメント職につくととても重要かつ求められる能力ですしね。
 自分のおかれた状況や立場を客観的に言語化できる研修の裏方さんは、私にとっても貴重な情報源です。

元演劇部員さんへ
 そうですか、会話のない?ご夫婦のコミュニケーションのきっかけになったのですか!それはなにより慶賀なことです(笑)
 ちなみに、半数がマックのハンバーガーと東京ディズニーランドを知らなかったのですか?そうですか・・・だったら「日本にコンビニは必要か不要か」くらいがよかったのかもしれません。う~ん、反省です。
 まずはともあれ、「論じ合う」とはこういうことで、いずれの立場にも言い分があり、最後の納得は理屈で納得の場合もあれば、感情的に心動かされることもあるということを知っていただければ、まず演習の目的は達成できたかと。
 また研修会で再会しましょうね!(^^)!

 みなさん、気軽に書き込み、お待ちしています!!


投稿者: たかむろ | 2010年10月18日 22:29

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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