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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

ムゲンはサービス業part2

 そしてムゲンは、就労継続支援B型になった。A型じゃないのは、A型はメンバーに最低賃金を出さないといけないからだ。「最低賃金をもらえるほうがいいんじゃないか?」と思うかもしれない。しかし最賃を出すために、A型ではメンバーは2時間だけ来る、4時間だけ来る、という勤務になり、来ている間は必死に稼がないといけない。
 ムゲンの設立当時の目標は「誰もが好きなときに来れて、好きなだけ交流して、好きなときに帰れる、当事者設立の作業所」だった。A型では短時間勤務や在宅勤務になって、メンバー同士ゆったりと交流ができないのだ。作業所でだらだらとできない。もちろん働いた分のお金に対しては、たとえ最低賃金を守れなくても、それなりにきっちりと保証もしたい。だから就労支援を掲げながら、だらだらしてもかまわない施設として、B型にした。一見矛盾する要求を同時に満たすことが、現在のムゲンの目標であり、微妙なバランスだ。しかし生活保護で暮らしていても、できるだけムゲンで働いて給与をもらって、生活保護額の方を一部返還している人だっている。働くことが一つのプライドになっているのかもしれない。

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 B型になってから職員は5名になった。施設の規模がグンと大きくなった。ぼくの負担も少なくって、楽になった。そのぶんメンバーとだらだらしたり、お昼寝をしたりもしている。経営的にも安定している。「頑張れば社会復帰できる!」などという励ましは、学校の先生などが子ども向けに、表向き言うような言葉だ。大人なら、「怠ける余裕」がなければならない。かくしてぼくはムゲンでお昼寝をしている訳だ。おかげでぼちぼちメンバーからも、お昼寝する人が出てきた。

 「障害者の自立」という言葉がある。多くの病者がこの言葉にコンプレックスを持って、仕事に無理矢理チャレンジして再発したり、傷ついたりしてきた。最近ぼくは「自立しなくったっていいじゃないか」と思っている。「今を楽しく過ごせればそれでいいじゃないか」とも思っている。そこで、ムゲンでも以前と同様にカラオケやバーベキューやドライブやソフトボールなどのイベントや、普段のだらだらとしたおしゃべりに時間を費やしたりしている。もちろんおしゃべりもしないで、まじめに働いている人もいて、人それぞれだけれど、たまには力を抜いて、スイカを切ったりおぜんざいを食べたり、バザーの売れ残りのクッキーでお茶会をたびたびやることになる。もちろんムゲンでは、コーヒー、紅茶、カルピス、ココア、麦茶その他の飲み物はいつでもタダで飲み放題だ。借りている病院の屋上が喫煙所だが、テーブルやイスを置いて、カフェ風な雰囲気で、飲み物を飲んだり、煙草を吸ったりしている。

 だから職員の目標としてサービス業として、メンバーにはムゲンで過ごす時間に満足して、できるだけいい気持ちで過ごしてもらうようにしている。行き帰りの送迎まであるのだ。遠い将来の自立などどうでもいいとぼくは思っている。
 いまありのままでくつろげて、ご飯が食べられ、病状が悪化しなければ、それでいいと思っている。これが地域施設として精一杯だと思っている。

(Part3に続く)

コメント


こんにちは。初めてコメントします。
少し前からこちらのブログの記事を拝読しています。
今回のテーマは特に興味があって続きを楽しみにしています。
バランスの取り方……難しいですよね。
働きたい、あるいは外の世界と関わりたいと思っていても、がんばりすぎて病気が悪化しては困りますものね。
逆にもっと働きたい、もっとメンバー同士で交流したいと思っても、仕事の時間や量が決まっているとその中でしか働けない、メンバー同士が世間話をする時間もほとんどないということもあるかと思います。
だらだらするもよし、仕事に精をだすもよし、こういう「居場所」があるのはとてもありがたいことだと思います。

追伸:コメントを控えていたのは、長くなるからです。短くしようとしても長くなってしまいます。すみません。


投稿者: やなり | 2011年11月11日 17:51

私は働くべきだと考えています。日本は納税、勤労、教育の義務があります。最近の精神科の薬は改善されてきて、働けるレベルまできていると思います。人生には休息も必要ですが、働けると判断したら、果敢に就職活動をすべきだと思います。


投稿者: ゆうへい | 2011年11月12日 00:17

地域に密着した居場所作り・・・。理想と現実のハザマでとても難しいことだと思います。私は、ムゲンさんをとてもいつも参考にしています。といっても、まだ実際に訪問すら行ってないのにホラと思われると困りますが、なんというか、親近感がとてもあります。
 今月私はとうとう仕事をやめます。目標に向け少しずつ準備を始めます。是非、今後ともご指導のほどよろしくお願いします。


投稿者: たんぽぽ | 2011年11月12日 01:36

長いコメントいいですよ。
居場所だけでも、話も尽きて、手持ち無沙汰になると、内職でもやろうか。ということにもなります。
ムゲンは職員5名のうち、ぼくをふくめ3名が精神科に通っています。そう言う意味で、メンバーとの垣根も低いのでは、って思います。職員の素人性も、メンバーとの交流で大事だと思っています。
無駄話も一切しないで、黙々と働く作業所は「大変だな」と感じます。余裕はやはりほしいものです。


投稿者: 佐野 | 2011年11月12日 20:55

ゆうへいさん。人それぞれ。というのが精神科にはあるんですよ。
その人らしさ、病気らしさ。
働きたい人は働けばいいし、のんびりしたい人はそうすれば良いし。

もし、働くのであれば「うつのリワーク」として続けないと、身体障害・知的障害の常識で物を考えると、素人的だと思われますよ。


投稿者: Live | 2011年11月14日 15:00

ゆうへいさん:まずお薬ですが、病気をコントロールはできますが、治すのは自然治癒力です。晩年寛解してつくづく思います。
ぼくは30歳のときに、コンピュータのお仕事をしていて、徹夜に近い日も含めて2週間眠れませんでした。それで再発して、1年間ほど入院しました。2週間の残業代をもらって、1年間の入院費がかかったのです。決して無理はできないとそのときに悟りました。詳しいことは「こころの病を生きる」に書きましたので、興味があれば。
もしあなたが病者であれば、決して無理しないようにと、老婆心ですが、思います。

たんぽぽさん:着実に目標をとらえているのですね。2月末に新しい建物ができます。お店もできるようにして、商品もおきますので、ぜひ遊びにきて下さい。


投稿者: 佐野 | 2011年11月14日 20:02

2月末に新しい建物が出来るのですね!!おめでとうございます。楽しみにしています。風邪を引かないよう気をつけてください。
私は11月末退職しました。しばらくフリーで駆けずり回ります。事業計画を立てなきゃですが。手始めに学童中心にしたものから始める予定です。少し冒険(起業自体大それたことですが)心でわくわくしてます。失敗してもとにかく後悔しないよう、やり残したことがないよう、挑戦あるのみです。それを許してくれる主人や子どもらに感謝です。
挫折したら、それも人生。挫折はいやと言うほど味わってるし、きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせています。挫折を恐れて何も挑戦しなかったころの思いでは寂しかったですから。生きてる実感がきっと欲しいのだと思います。


投稿者: たんぽぽ | 2011年12月02日 15:30

現場でのトラブルを恐れないことです。どこかで相手も一定満足する関わりもあるはずです。そのうちにトラブルよウェルカムって思えるようにもなります。ご健闘をいのります。


投稿者: 佐野 | 2011年12月02日 21:41

ありがとうございます(*´∇`*)がんばります!!


投稿者: たんぽぽ | 2011年12月21日 20:29

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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