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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

人の一生は子ども時代に決められる…、ようだ(part2)

 ぼくの一生は、親から自立し子どもを育て、自分で切り開いてきたと思ってきたけれども、実は今もそんな親から呪縛を受けているのを感じている。
 ある心理学者が、「自分は子どもを犯罪者にも弁護士にも育ててみせる」と言ったそうだが(注)、子ども時代に親の仕込んだ時限爆弾によって、ぼくは一生その影響から逃れられずにいる。対決することなく、いつまでも親の影響から逃れられない人は多いのではないだろうか。

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 子どもがマザコンになるということは、マザコンにさせる母親がいるということだ。母親は息子を愛しているから、自分の思いどおりになってほしくて、大人になって自分の元から飛び立っていかないように、自立心を削ぐように、守り育てしつけ、そして虐待する。優しく慈しむ愛情に飢えて育つと、子どもはいつまでも愛情をほしがる大人になる。斎藤学氏が「子どもを親孝行に育てたかったなら、虐待せよ」と言っていたけれど、「虐待のし過ぎは親を憎むばかりになる」のかもしれない。また子どもが虐待を受けて育つと、愛情とは「叱られることだ」と確信するようになるかもしれない。叱ってほしいために悪い子になっても、イメージ上の母親から叱ってもらえないために絶望して、罪を犯すこともあるのだろう。
 親は多くの場合、子どもを若い時代に何もわからず育てていると思うけれど、子ども時代の呪縛は一生続くものだ。せめて自分の子どもには、連鎖から自由でいてほしいと思っている。

 最後に、SMプレイの中に難度の高い「放置プレイ」というのがあるが、それについて。これは文字通り、目隠しをされたり、縛られたりして、何時間もお気に入りの女王様から何もされずに放っておかれるのだ。女王様はその間に休憩しているのだが、男の妄想の中では、幼い頃にネグレクトされたトラウマのスイッチが入り、不安孤独が増殖しふくれあがる。そして長時間放っておかれた末にやっと女王様が現れ、戒めを解く。すると男は女王様の足にしがみついておいおいと泣き、女王様は男を優しく抱きしめる。男は幼子で、女王様は慈母であり、マリア様のようでもあろう。
 SMプレイは一種のトラウマのセラピーだと思うことがある。男の一生を縛る性欲が、これほど深く幼いときの育ちに結びついているのだ。子どもは親を選べないという人生最初の理不尽と、まったくの偶然にトラウマが刻まれる運命のイタズラを感じる。
 女性は、男の性的妄想のたくましさに驚くかもしれない。女の子にも性的妄想があるとすれば、父親との関係が重要な気がするのだが、ぼくにはとても女性の心理はうかがい知ることはできない。

(注)「私に健康で五体満足な乳児を12人と、彼らを育てるために私自身が詳細を決める世界とを与えてくれるならば、私はその内の任意の1人を取り出し、才能や好みや傾向や能力や天職や先祖の人種とは無関係に、私が選んだどんな専門家にでも―医者、弁護士、芸術家、商店主、それに乞食や泥棒にでさえも―育ててみせることを約束しよう」。行動主義心理学を創始したワトソンの言葉。


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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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