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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

アスペルガーさん(part2)

 さて、ひきこもりの人たちの中にもアスペルガーさんは多いようだ。基本的に「一人が快適」な人たちなので、ひきこもりにはなじむのだろう。そういえば、気難しい職人さんタイプにもアスペルガーさんは馴染むような感じがするので、結構多いのかもしれない。

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 どの相談機関でも言いそうな、ひきこもりに対する無難な処方箋は、「周りがあせらないこと、本人さんがゆっくり休養をとってエネルギーがたまれば、自然に行動し始めますよ」というものだが、アスペルガーさんは「変化を嫌う」「初めてのことへの挑戦が苦手」「始めると止められない」特性なので、ひきこもりがずっと続くことが多いようだ。
 アスペルガーさんは冷静に判断するので、「納得すれば行動する特性」がある。前回紹介した『パスポートは特性理解』には、著者である田井みゆき氏のアドバイスにしたがって「今の生活は不健康。医療受診をしよう!」とシンプルストレートにお母さんが言うことで、三年間ひきこもっていた本人が「わかった!」と納得した事例が紹介されている。
 さらに田井氏は「医療受診のチャンスは一度きりと思ってください」と念を押して、お母さんと付き添いの人に、車で二度の医療受診の予行演習を行っている。本人は嗅覚過敏のため車酔いするので、食事をとらずに、それでも受診に成功した。服薬して3か月、田井氏が理事長を務めるノンラベルという「居場所」にも通い始め、「毎日外出する」という目標も一年でクリアした。さらに単位制の高校にも行って、友人もできたという。

 「発達障害はひきこもりの実に50%以上を占める」という医者もいるけれど、ひきこもりの第一人者である精神科医の斎藤環氏は「認知障害(たとえばアスペルガーさんでいえば、相手の意図が読めないとか、暗黙の了解ができないとか、予測ができないとかのコミュニケーション上の障害)のない場合は発達障害に入れないで、自分は狭くとらえるので、1割以下だと思っている」と講演会で発言していた。
 多くのアスペルガーさんにとって「失敗」は反省材料として、糧とはならないそうだ。一度懲りたことは二度と挑戦しない特性があるので、できるだけ本人の挫折を回避し、挑戦したことについて変化を嫌ってやめられないようになるまでは、周囲の過保護的サポートが必要だと田井氏は言う。普通の人にとっても失敗や挫折は気持ちを萎えさせるものだけれど、アスペルガーさんは完璧主義的な傾向がとても強いので、失敗や挫折に弱く、耐えられないのかもしれない。

 松山でも若者サポートステーション(若者の職業的自立を支援する、厚生労働省の事業)関連の活動を見聞きするけれど、やっぱりゆっくりと、同じようなサポートをやっているようだし、身近なアスペルガーさんを見ても、とても失敗には弱そうな完璧主義に見える。

(part3に続く)


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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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