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永島徹の「風」の贈り物

ある夜のできごと

 ある日曜の夜でした。静まりかえった事務所に電話がなり響きました。壁掛け時計に目をやると10時半を回っていました。

 「こんな夜に何の電話だろうか?」と出てみると受話器の向こうから藪から棒に「お宅のおばあさんが今、家にいるんだけれどどうしたらいいかい?」ということ。その時、焼酎(泡盛)を少々飲んでいましたので、すぐにピーンとこず「うちのおばあさん!?…」、誰のことを話しているのか定まらずにいたところ、再び受話器の向こうから「ノートには、日本花子(仮名)って書いてあるんだよ」と更に情報を教えくださったことで私も合点がいきました。

永島「花子さんですかぁ。このような時間にいろいろとお手数をおかけします。」
相手「いまとりあえず、お巡りさんもきてくれるそうだけれど、一応そちらの連絡先が書いてあったので、電話してみたんだよ」

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 どうやら、いつもの肩身はなさずもっている手提げに、当方のデイサービスのノートが入っていたらしい。そこで、今回連絡先がわかったようでした。話によれば、帰宅した電話相手の旦那さんが、庭先にうずくまっていた花子さんを発見。どうしたものかと話をしている間に、所々の会話の中から本人へ連絡先を聞いてみたところ、もっていた手提げから、ノートを取り出したと言うことでした。
 花子さんは夜にもかかわらず、デイホームに行こうとして道に迷い、良心的な方と接触できたおかげで何とか無事発見されたのです。連絡をしてくれた相手から事情を聞いているところに、お巡りさんが到着したらしく電話に出てくれたお巡りさんに、諸事情を伝え花子さん宅まで送ってくれるという事になりました。私も妻と一緒に花子さん宅に向かいました。

 花子さん宅に到着するとすでに花子さんは到着しており、長男夫婦と居間で話をしていました。几帳面でまじめな長男は、「本当に申し訳なかった。すみません」とただただ謝るばかり。そんな様子を見ていた花子さんも「わるかったなぁ~。すまねぇ~」と長男と一緒に謝る姿がありました。ただ、その後「みんなが集まってくれてうれしよぉ」とニコニコ顔。花子さん自身の事を心配してくれる多くの方に心から精一杯自身の思いを伝えていました。きっと外には出てみたものの、暗く、とぽとぽと歩いているうちに道がわからなくなり、不安のまっただ中、疲れてどうしたらいいのかわからずに座り込んでいたのでしょう。

 「どうしてこうなったのか」「何でなのか」いろいろと考えても不安になるところに、心ある方のサポート。警視庁の調査では認知症高齢者が1人で外に出て戻れず、亡くなる・行方不明は年間約900名を超すと言われています。1人でもこのような悲しい結果にならずに過ごせるよう、私たちも今回の花子さんをサポートしてくれた方のようにしていけたらと思います。


コメント


 私が以前担当していた独居の女性認知症の方は、デイサービスのない日も20分位(たまに迷う)朝6時頃デイサービスのある所まで歩いて行き、デイの上が大家さんの家でどんどんと戸をたたき「下の方はいないんですか?」と言い、苦情の連絡がよく入りました。
 ある日、外で転倒して骨折して寝たきりになり、施設に入りました。私は少し前、行政の認知症ケアサポーターの研修を受けオレンジのリングをもらいました。地域で認知症の方を支えていきたいですね。道に徘徊老人が歩いていてもわからない事が多く、事故につながりますね。


投稿者: すずちゃん | 2008年08月16日 00:07

 残暑お見舞い申し上げます
 そうですね、気づいてくださった心ある方の言葉かけと電話連絡で、困っている認知症の人がどんなに救われることか。
 見て見ぬ振りが一番さびしいことです。
マザー・テレサの言葉 
 「愛」の反対にあるもの「無関心」
 わたしも善意の電話でお迎えに行った経験がたくさんあります。前もって、ご挨拶を交わしてお願いしていた地域の人であったり、手放さずに持ち歩く杖に張ってあるシールの連絡先を頼りに電話が入ったり、午前3時に、数回お迎えに行ったモーテルが忘れられません。
 モーテルって、監視カメラがあちこちにあるんでしょうか? 事務所のおばちゃんが良い人で、真夜中過ぎに、とぼとぼ歩く不気味なおばあちゃんの姿がカメラに映ると、いつも保護してくださり、連絡の電話を警察に入れてくださいました。
 そのたびに、警察と連絡を取りながら、モーテル事務所にお迎えに行きました。
 何でこんな人を独りにしとくんだって、わたしたちが叱られた事もあったけど、今は、やっと成年後見人がついて、落ち着いて暮らしておられます。
 認知症の人への理解をいただくために、心にオレンジリングをサポーターを増やしたいです。


投稿者: あねさん | 2008年08月16日 10:08

 「すずちゃん」コメントありがとうございます。
 コメントでご紹介していただいた、高齢の女性の方。本当にその方にとっての居場所がデイという場だったのでしょうね。やはり、「居場所」があるというのは、誰にとっても「安心」につながりと思います。場所だけではなく、安心できる「人」「時間」もあると思います。そのような「安心」を多くの方々と創っていきたいですね。


投稿者: 必察ソーシャルワーカー永島徹 | 2008年08月18日 08:58

 「あねさん」いつもありがとうございます。
 おねさんの言うように、「見て見ぬ振り」ということは本当に寂しいですね。誰もが、何気ないことでも、心あることをしてくれること。そんな小さな行為が、安心して暮らせる町を支えていくのだと思っています。
 「心にオレンジリング」が多く広まることを願いつつ、私も出来ることをしていきたいです! どうぞ、これからもよろしくお願いします!


投稿者: 必察ソーシャルワーカー永島徹 | 2008年08月18日 09:06

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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『必察! 認知症ケア 思いを察することからはじまる生活ること支援』
著者:永島徹
定価:¥1,890(税込)
発行:中央法規出版
ご注文はe-booksから
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