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永島徹の「風」の贈り物

続々・真の思いを確認するとき

 生活の場を移したKさんのその後の様子ですが、暗いマイナス的な言葉しか言わなくなってきていたのが、日中はまるで童心に返ったように施設職員と話をし、表情も豊かに回復しています(夜間はせん妄状態がみられるので、医療的サポートが求められます)。
 施設には、Kさんが安心できるために、これまでの「なじみ」を継続していけるようにと、私が知りうる情報とかかわり方、安心されるキーワードなどの情報を提供しました。この「なじみ」を絶やさぬよう維持していく作業ができたのも、Kさんや近所の人、専門職の方々とのつながりがあったからではないかと思います。

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 私はKさんとのかかわりを通して、「互いに思いを察しあいながらかかわる」過程が大切だと改めて学びました。一人暮らしで認知症をもつKさんが、自宅で生活し続けることは容易なことではないと考えられます。いつかはそれが不可能になる時がきます。誰にも気づかれないまま、最期を迎えてしまうようなことがあるかもしれません。
 であれば、そうなる前に施設か病院へ。そう考える方も少なくないと思います。私も、どうすることが良いのか、考え続けてきました。そして、私の思い(専門職の都合)で、Kさんの生活を変えさせてしまうようなことがあってはいけないと思ってきました。もし、Kさんの思いを察する過程を経ずに、施設や病院へ移ることを急いでしまっていたら…。
 Kさんは、なぜ自分の家なのにそこで暮らすことができないのか、納得することができなかったのではと思います。勝手につれてこられたと被害的になったり、「帰してださい」と大声で訴えたかもしれません。
 どこでどう生活(いきて)いきたいのか、それを決めるのは、その人自身です。認知症だからということだけで、それが不可能と決めつけてしまうのは、とんでもない専門職のおごり、過ちだと思います。
 認知症という病気のために、思いを言葉にして伝えることが難しくなってしまっているのなら、なおさら、相手が今どんな思いでいるのか、何を望んでいるのか。そのことをわかろうとすることが大切です。
 わかろうとする姿勢で「思い」を理解し、その人の生活(いきる)を支援していく力が、専門職に求められているのだと思います。
 最後に、そのことを自らの心に刻みつつ、認知症とともに生活(いきる)方々から私が受け取ったメッセージ(詩「真実と事実」)をまとめてみました。読んでくださるみなさんの心のどこかに響き、生活支援の場で活かしていただければ幸いです。

事実と真実
 私が知って欲しいことは、これまで自分であたりまえにできていたことが、できなくなってしまっているという事実ではありません。
 私が知って欲しいのは、たとえうまくできなくても、これまでのように、自分のことは自分でやりたいという私の思い(真実)です。

 私が、わかってほしいことは、家族の名前や、顔がわからなくなってしまったという事実ではありません。
 私がわかってほしいのは、たとえわからなくなっても、家族を思う気持ちはかわらないという真実です。

 私が伝えたいことは、認知症という病気が失うことばかりの絶望的なものだということではありません。
 私が伝えたいことは、認知症になっても、自分らしく生きたい、生き活きといきられるということです。

 私が願うことは、私が認知症だという事実たけで、私のことを特別な目でみないでほしいということです。
 認知症は誰もが罹りうる病気です。私の生活(いきる)は、これからも認知症という病気とともに続いていきます。認知症という病気は、時に私を不安にさせたり、混乱させるかもしれません。やがて、私から、言葉や記憶を奪うかもしれません。
 だからこそ、私は願います。これからも、ずっと変わらずに、私に話しかけてください。私の言葉に耳を傾けてください。私と一緒に笑ってください。私の思い(真実)にあなたの心を寄せてください。


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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著者:永島徹
定価:¥1,890(税込)
発行:中央法規出版
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