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永島徹の「風」の贈り物

琉球の風に吹かれて その1 嵐の夜の人間模様から

 「明日の羽田航空行きのバスは欠航となりました…」
 出発前日の夕方に突然、高速バス会社から連絡が入りました。皆さんご存じのとおり、先週末、関東に台風9号直撃という日の前日です。
 台風の影響で、私の住む地区の小学校でも休校になる事態でした。そのような悪天候の中、沖縄県うるま市主催のケアマネジメント活動支援事業で、ソーシャルワーク的視点から考える「高齢者との係わり方“みとり”まで」というテーマで講演する予定になっていたため、沖縄に向かわなくてはなりませんでした。
 羽田空港まではバスでの移動を計画していたのですが、台風のための運休ではどうすることもできません。
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 自然による天候の変化はどうしようもないとはいえ、予期せぬ出来事には出くわしたくないとは誰もが思うこと。「何とかなるだろう」と甘く考えていた私は、冷や汗をかきかき、電話やインターネットで何か方法はないものかと、じたばたすることになりました。
 そうしているうちにも、外を吹く風はどんどん強くなっていきます。「これはまずい。このままだと、空港にも行くことができなくなってしまう!」と、思い切って自家用車で空港に向かうことにしました。

 空港に向かう道中、高速道路は、もう台風が上陸したのではないかと思うくらい、強風と雨が容赦なく車をあおり、突風の力強い威力にビクビクでした。
 どうにか空港にたどり着き、結局その日は羽田空港の駐車場で夜を明かし、状況を見守ることにしました。

 夜半過ぎからは、それまで以上にすさまじい風と雨が降り、荒れ狂う台風の力に、どうすることもできず、ただ雨風をしのげる場所で通り過ぎるのを待つ始末。
 欠航便が相次ぐなか、ロビーで泊まる覚悟の方も多く、空港から毛布が貸し出されていました。毛布を床に敷いて横になる人、いすに座り毛布にくるまる人と、さまざまな人間模様を目の当たりにしました。
 外では雨風が激しくなってきましたが、空港内の受付カウンターの前でも、搭乗予定の便の欠航に、航空会社の職員にしつこく「何とかならないのか」と相談したり、なかには嫌みじみた言葉を吐く人もみられました。
 「台風情報をいつでも分かるようにしてちょうだい」
 「横になるいすを増やせないの?」

 「そんなこと言っても、台風が来ているのだから仕方がないだろう!!」
 文句や怒りを浴びる航空会社の人の心の中にも、さすがにそんな気持ちがわいてくるだろうな……。台風が通りすぎるのを待つことしかできない私の関心は、いつしか、航空会社の対応に向けられていました。
 皆さん平常心を心がけ、一人ひとりの問い合わせにていねいに対応していました。その誠意ある言葉と姿勢は、いつしか、先を急ぎたいと思っている人たちの混乱に冷静さを取り戻させているようでした。
 「素早く、滑舌よく、気持ちのこもった」態度からは、緊急時のプロの力を感じました。人はいつの間にか、「何でもできる」という全能感があると錯覚することがありますが、自然の力にはどうにも逆らえません。今回は、自然の中で活かされている自分と向き合う良い機会になりました。
 それにしても、どうにか空港にたどり着けたことで、ホッとしたと同時に、人間観察を始めてしまうのは、ソーシャルワーカーの性でしょうか……。思いがけず、空港での人間模様から、新たな気づきを得ることのできた私は、幸運にも、運行再開初回の便でうるま市に向かうことができました。
 次回は、ソーシャルワーカーの視点から見て感じた、琉球の風についてお伝えしたいと思います。


コメント


 台風の雨と風の中で、出合った人間模様。
 ソーシャル・ワーカーの眼でマン・ウォッチング。結果、無事に沖縄に到着。良い体験をされたのですね。 次回の琉球の風を楽しみにしています。 
 ちなみに、あの日、県内の小中学校と一部高校はいっせいに臨時休校。
 危険なので外出禁止でした。
 その日、近隣の通所系サービス数か所にお聞きしました。
 「いつもどおりですよ」「平常営業です」
 雨と風の中、いつもと同じように送迎車は走り、デイに出かけました。台風でお休みした方はわずか数人。
 臨時休校で、大人の居ない家で過ごした子どもはたくさん。


投稿者: おねこねこ | 2007年09月14日 21:53

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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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