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永島徹の「風」の贈り物

私たちの仕事の原点

 Dさん(女性)は息子さんと二人暮らし。息子さんは日中仕事のため、どうしても昼間は一人で過ごさなくてはなりません。そんなDさん、一昨年から認知症状がみられ、これまでどおりの生活に調整が必要になってきました。
 息子さんが考えた末、昨年秋より介護保険の在宅介護サービスを利用します。選ばれた担当ケアマネジャーは、Dさんや息子さんと話し合い、Dさんらしさを大切に考えながら、利用するサービスを提案していきました。

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 そのような中、ケアマネジャーから、現状確認という目的での定期的なサービス担当者会議を開催したいと提案がありました。私もケアマネジャーとして担当者会議を開催しますが、今回はサービス提供事業者の立場で参加しました。Dさんは、自分のことでケアマネジャーやヘルパー、デイサービスのスタッフなどが集まったことを察し、「みなさん忙しいのに、悪いね~」と私たちに気をつかってくださいました。
 会議も無事終わり、私たちが帰ろうと身支度をしていたときです。Dさんは、何も言わずふっと中庭に行き、しばらくして私たちを見送りに戻ってきました。その手には、とてもきれいなピンクと白のバラの花。「ごめんね。こんなのしかないのだけど」と私たちに持ってきてくださったのです。
 Dさんの手に目をうつすと、バラの棘が刺さり、指が血だらけでした。私たちに渡そうと必死だったのでしょう。言われて初めて、血が出ていることにも気づいたようでした。「Dさんどうもありがとう。きれいなバラですね。大切に飾らせていただきます」と深く感謝の気持ちを込めてDさんの手に触れたところ温かい微笑みを返してくれました。
 私たちは、この熱く身体内から湧いてくる感覚を決して忘れてはならないと思います。そして、それをエネルギーにして、仕事に活かしていくことが大切です。現在、介護サービスに関して「量」やら「質」やらと騒がれていますが、人々の生活にかかわる私たちの仕事の原点を見つめ直していくことが必要ではないでしょうか。
 相手の生きる姿や思いに、心ふるえる感覚をなくしたまま、介護が必要な目の前の現象に対応していくことだけを考えてしまったら、私たちは、人にかかわる専門職ではなくなってしまいます。「認知症になろうと、要介護状態になろうと、他者を気遣い、そして、さまざまな思いをもちながら人は生きている」と、Dさんはあらためて気づかせてくれました。
 人にかかわり、人の生活を支援することを業とする者は、もっともっと人の思いに敏感になり、思いを尊重できるようにならないといけないでしょう。


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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