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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

香川県障害者虐待防止研修から

 先週末、高松市で開かれた香川県障害者虐待防止研修に講師として参加してきました。研修会の前に少し時間が空いていたので、高松城に立ち寄り「この世からあらゆる虐待がなくなりますように」と「鯛願成就」。日本で唯一、お城の堀が海水で海と通じている高松城。お堀には、何と鯛が泳いでいるのですよ!!

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高松城の堀に泳ぐ鯛

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堀は瀬戸内海と通じて

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 千葉県社会福祉事業団の虐待死亡事件以来、各地の虐待防止研修では多くの参加者から「他人ごとではない」という切実な声が聴かれます。それだけに、高松の研修でもすべての参加者がまことに熱心に受講されていました。

 この間とくに支援現場の共通認識になっている問題は、雇用形態の多様化についてです。非正規雇用の直接処遇職員の割合が高くなることによって、職場がまとまって支援に取り組むことに著しい困難を抱えるようになったという声がまことに多いのです。

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香川県障害者虐待防止研修

 利用者を直接支援する仕事は、調理や事務の部門と異なり、中枢業務と周辺業務に截然と分けることができない一方で、仕事に対するモチベーションや目標が雇用形態によって相違するために職場のまとまりが作れない困難があると、私もすでに指摘しました(2013年12月25日ブログ参照)。

 そして、虐待防止研修の会場では私の指摘に対して、「まさにその通りだ」という感想が聞かれた上に、ある研修参加者は「“常勤換算”という言葉に諸悪の根源がある」と言いました。私の記憶に誤りがなければ、「常勤換算」という用語は1989年のゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)からホームヘルパー等の数値目標に使用されるようになったのが始まりだと思います。

 例えば、ホームヘルプサービスに関する地域のニーズ総量が1日当たり700時間で、常勤ヘルパー1人の1日当たりの労働時間を7時間とすれば、「常勤換算で100人」分のサービス供給量を数値目標とするわけです。これは、「ニーズ=サービス」の量的枠組から単純計算で割り出された抽象的な数値に過ぎません。複数の非常勤ヘルパー(2人でも3人でもよい)が合計7時間分のサービスを供給すれば、常勤ヘルパー1人分のサービス供給とみなす仕組みです。

 ここには、2つの仕掛けがあったように思えます。その一つは、わざわざ「常勤換算」と断りを入れるようになった実際の意味は、ヘルパーの非常勤化を推し進めることにあったという点です。ニーズ総量に対応するサービス供給量をもって必要なマンパワーを表現すると、ヘルパーの雇用形態の問題はプランニングにおいて等閑に付されてしまいます。ヘルパー人数で表現される数値目標は、常勤ヘルパーの実際の数ではなく、サービス供給量を抽象的に提示しているに過ぎません。常勤ヘルパーを雇うためには社会保険や有給休暇等を含めた予算を組まなければなりませんが、実際には、非常勤ヘルパーの実働分だけの人件費を経営的観点からコスト計上するだけとなるのです。

 もう一つの仕掛けは、「常勤換算」の考え方がホームヘルパーから始められたという点です。通所サービスや入所施設のサービスは、職場を構成する複数の職員が課題認識を共有しながら支援を進めなければならないのに対して、ホームヘルパーは単独で家庭に足を運び家事・介護支援を実施するという仕事の特徴があります。

 通所・入所のサービスでは、常勤職員1人分の仕事を2人の非常勤職員によって午前と午後に分けるとすると、それだけで「引継ぎはどうするのか」「利用者Aさんは常勤職員が1日中担当しているのに、利用者Bさんは午前と午後で担当が変わるのはおかしい」などと、サービスの質の維持向上に関わる様々な問題が浮上するのに対して、ヘルパーの場合は問題点が見えづらいといえるでしょう。

 正規雇用職員が望ましいと考えても経営・予算上は許されず、非正規雇用を進めざるを得ない。嘱託職員は期限付き雇用だから、育てたとしても「辞めていく宿命」にあり、パート契約職員には支援の専門性をあまり求めることができない(パート職員の採用で専門性を求めるとほとんど誰も来ない)となると、数が減らされた正規雇用職員に専門性のある支援の負担が集中していくことに帰結します。

 要するに、正規か非正規かの雇用形態の違いを等閑に付したまま、サービス供給の時間量を正規雇用職員の数で表すことは、現実には不可能なのです。現在の福祉職場の多くは、職員が頭数の上では以前とさほど変わりなく見えても、内実は大きく様変わりしたのです。

 ホームヘルパーの数値目標から導入された「常勤換算」の考え方は、あらゆる福祉サービスのマンパワーにも広がることによって、あらゆる福祉職場の非正規雇用化を推し進め、正規職員は常に過重労働を強いられがちとなりました。職場全体のまとまりが悪く働きづらくなった度合いに応じて職員の流動化も激しくなり、多くの職場では以前にもましてサービスの質を担保することに困難を抱えるという事態が出来するようになったのです。

 香川で、福祉の人材確保に取り組んでいる方に詳しくお話を伺いました。その方によると、当面する求人数がのべ1、000人であるのに対し、求職者のために開催した説明会の参加者は100人にも達しなかったというのです。「割に合わない仕事」という福祉の仕事にかかわるイメージの定着があり、数少ない求職者を福祉職場の雇用に結びつけてもほとんどが長続きせず辞めていってしまう現実があるというのです。

 福祉現場に就職した新人が2~3年で辞めてしまうのは、求職者のニーズと職場のミスマッチというような問題ではなく、求人数1、000人に対して求職者数100人未満という現実に象徴される深刻で根本的な問題です。これでは、あらゆる福祉職場において、不適切な行為がいつどこにでも発生して不思議ではない状況が生まれるのは必然に過ぎないのではないでしょうか。

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ひなどり おやどり

 さて、香川と言えば讃岐うどんに骨付鳥。高松の友人に美味しいうどん屋さんに連れて行ってもらいましたが、さすがに香川は「うどん県」。高松市の至るところにうどん屋があり、お昼時ともなると、そこかしこのうどん屋に長蛇の列ができていました。

 県庁近くの人気店「さか枝」で20~30人の行列の末尾に並び、「こんなに大勢並んでいるのにすぐに食べることができるの?」と訊ねると、地元の友人は涼しい顔で「大丈夫」と応えます。すると、確かにこの行列はみるみるうちに前に進み、あっという間に店内へ。

 セルフサービスでかけうどんに天ぷらをトッピングして食べ始めると、「讃岐うどん」と詐称する大規模チェーン店のうどんとの相違は明白です。本場のそれは、麺の食感と出汁が文句なくすばらしい。

 ところが、私がうどんをじっくりと味わっていると、周りの客は短時間で食べ終わって「ごちそうさま~」と店から出ていきます。うどん県の常連客は、食べるのが実に早い。地元の友人によると「うどんはのどごし」であるそうな。う~ん、奥が深い。全国各地に名物のうどんはありますが、それぞれのうどん文化も大きく異なるのでしょう。

 そして、香川の締めはこれぞ骨付鳥の「一鶴」へ。柔らかくジューシーな「ひなどり」と、地鳥のような噛み応えから旨味が染み出してくる「おやどり」の2種類があります。今回は、贅沢にも両方に舌鼓を打ちました。スパイシーな風味の中に、それぞれの美味しさが確かにあります。カップルで召し上がるなら、ぜひとも「ひなどり」と「おやどり」を分け合ってお食べになることをおすすめします。いやーっ、旨かった!


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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
タイトル:『障害者虐待 その理解と防止のために』
編著者:宗澤忠雄
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