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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

要約筆記者養成ステップアップ研修

 今年度の障害者総合支援法の施行により、都道府県・指定都市・中核市では要約筆記者養成が必須事業となりました。この日曜日、さいたま市社会福祉協議会で開催された要約筆記者ステップアップ研修に、「社会福祉の歴史と理念・障害者福祉」の担当講師として参加しました。

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さいたま市社会福祉協議会要約筆記者ステップアップ研修

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 2011年3月に「要約筆記者の養成カリキュラムについて」(厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長)の通知が出され、これまでの要約筆記奉仕員に替わる要約筆記者の養成がはじまることとなりました。

 従来の要約筆記奉仕員の養成カリキュラム(1999年4月障企第29号)は52時間の構成(基礎課程32時間、応用課程20時間)であったのに対し、要約筆記者の養成では84時間以上のカリキュラム構成(必修講義44時間、必修実技30時間、選択必修10時間以上)となり、より高い専門性をもつ要約筆記者の養成・確保が目指されることとなったのです。

 要約筆記養成講習を修了したものが登録試験に合格すれば、要約筆記者として登録されることになります。現任の登録要約筆記奉仕員については、要約筆記者養成ステップアップ講習を補習受講したものが、要約筆記養成講習を修了したものと同様に登録試験を受けることができる仕組みになっています。

 幼少期から聴覚に障害のある人だけではなく、高齢化の進展とともに中途の難聴・失聴をもつ人が増加してきました。そこで、これらの人たちすべての生活と権利の充実に資するコミュニケーション・情報保障の担い手として、専門性のある要約筆記者の養成が急務となってきたのです。また、2009年発足の裁判員裁判においても、高い専門性を持つ要約筆記者が求められるようになってきた事情もありました。

 さて、今回私が担当した講義は、現任の登録要約筆記奉仕員に対して、「社会福祉とは何か」「障害者福祉とは何か」という、いわゆる社会福祉原論に相当するところでした。一般的には、受講者の「眠気をもっとも引き起こす」講義に当たると言っていいでしょう。しかし、今回のステップアップ研修は、さすが現役で要約筆記を担われている皆さんで、最初から最後まで真剣に講習を受けていました。

 専門性のある支援者とは、実務的専門性と一体不可分のものとして、「社会福祉とは何か」という課題に応えつづける社会的責任のあることを、これまでの要約筆記奉仕員としての取り組みの中から自覚されてきたのではないでしょうか。

 しかし、「社会福祉とは何か」については、多くの人の間でそのイメージを共有すること自体に難しさがあるのです。それは、医療や教育と対比してみれば一目瞭然です。

 例えば、「診察室の中でドクターが患者さんを診察している」「手術室で患者さんがオペを受けている」という具体的な場面は、「医療とは何か」という問いに対する具体的な場面として万人が共有できるでしょう。また、「学校教育とは何か」という問いに対して「学校の教室の中で、子どもたちが机を並べて椅子に座り、先生は黒板の前に立って算数や国語を教えている」という具体的場面をあげても異論のある人はまずいないでしょう。

 これに対して、「社会福祉とは何か」という問いに対する具体的な例示を様々な立場の人に求めると、実に多様で、場合によっては共有することの難しい答えが返ってきます。

 児童福祉だけでも、保育所、子育て支援センター、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童相談所など、多様なものが出てきます。ここに介護保険に関連する施設やサービスと障害に関するサービスと施設を加えると、もうきりがありません。助産施設や婦人保護施設に至っては、福祉領域に働く専門職の中でも知らない人がいるはずです。

 それぞれの回答者が利用体験のある特定のサービスを社会福祉だと受けとめていることは理解できます。でも、ホームヘルプサービスを一つ取り上げても、家事援助を中心に利用してきた人は「料理を作ってくれたりお掃除をしてくれるサービス」と言うのに対し、身体介護で利用してきた人は「着替えに移乗や体位転換で介助してくれるサービス」となって、これらの断片的イメージから両者の共通項を見出すことは難しい。つまり、これらの多種多様なサービスを総括し、「社会福祉とは何か」という問いに対する的確な回答を明らかにすることは、決してたやすいことではないのです。

 それだれではありません。東日本大震災などの復旧・復興ボランティア活動に参加したことのある大学生に「社会福祉とは何か」と尋ねると、「ボランティア活動」と即答されることがよくあります。それは、震災被害を受けた地域でボランティア受け入れの業務を担当していたのが、各地の社会福祉協議会だったことに起因しているように思います。むろん、社会福祉法によればボランティア活動は「社会福祉に関する活動」に該当しますが、それだけをもって「社会福祉とは何か」という問いへの答えとすることはとても容認できるものではありません。

 高い専門性をもつ支援者は、「社会福祉とは何か」という原論的理解を明確にすることによって、揺るぎのない実務と更なる専門性の発展を追究することができるようになると考えてきました。現任登録の要約筆記奉仕員の皆さんが、これからの要約筆記者として羽ばたくことができることを心から期待しています。


コメント


「社会福祉とは」という問いに対して、皆それなりの答えをそれぞれ持っていることと思いますが、この記事に書かれているように、社会福祉への接点、見方の違いから、皆に同じ答えを求めることは難しいでしょう。
また、社会福祉というものの形はこれからも時代とともに移り変わっていきます。
定まらないものだからこそ支援者は、社会福祉とは何か、という問いを常に問い続けていく必要があると思います。
そのような中で、このような研修は支援者の自信を高めることにも繋がるでしょうし、何より専門性をより確立していく上でとても有意義なことだと思います。


投稿者: やまだ | 2014年01月25日 19:32

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

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