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梶川義人の「虐待相談の現場から」

ちょっと凄い研修会

 認知症介護研究・研修仙台センター様が、来年の1月と2月に、「高齢者虐待防止に関する研修会」を開催します。申込み締め切りが本年12月26日(木)と迫っていますが、あえて言及するのは、この研修会が、ちょっと凄いからです。

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 何が凄いのか。それは、研修内容が、2013年度の老人保健健康増進等事業による研究事業で行われた調査で得られた知見に基いているからです。つまり、この調査は、個人の研究者では成し得ないほど大規模であるとともに、事例単位で集計しているため、毎年発表されている市区町村単位で集計した、厚生労働省の「高齢者虐待法に基づく対応状況等に関する調査結果」より実態に迫るものだからです。私たち、高齢者虐待に関する実践や研究や教育に取り組む者にとっては、大いなる財産です。

 しかし、取り組みの実効性を上げるためには、こうした計量的なデータだけでなく、実践から得た知見も考え合わせる必要があります。そこで、私の専門である、個人や家族レベルのミクロ領域(個人や家族)やメゾ領域(地域福祉や福祉サービスの提供機関)での実践から得た知見も加味して私見を述べたいと思います。

 まずは、養護者による高齢者虐待の虐待者トップ3、息子、夫、娘についてです。

 息子と娘の典型は、2つに別れると思います。自立せずに一貫して実家に依存してきたタイプと、一旦は自立したが失職や離婚により実家に戻るタイプです。前者において、子どもが自立しなかった理由には、障害があるなど、さまざまな理由がありますが、いずれのタイプでも、依存先である老親が要介護状態、とくに認知症などになると、依存先喪失の危機に陥ることが転機になります。そして、自立して自分の家庭を営む「一般的な子ども」ではないため、親に対して複雑な思いを持つため、これが多くの場合は負に作用して、暴力やネグレクトに至りますが、いずれに傾くか、虐待者の性別が影響するように思います。なお、被虐待者は約8割が女性ですから、老母と息子、老母と娘の組み合わせが多いと推察されます。

 夫の典型も、2つあると思います。以前からDVないし、ネグレクトがあるタイプと、妻が要介護状態になることがそれらの引き金になるタイプです。いずれも、文化の影響か、男尊女卑、男らしさ=戦士=暴力の肯定、人の力を借りないことを良しとする、などの特徴があるように思いますが、大抵は、ネグレクトするか生真面目に介護をするかに分かれるように思います。とくに、後者では、仕事で成功したスタイルを介護に転用するが上手くいかず、BPSDをかえって拡大し、暴力やネグレクトに至るのではないでしょうか。

 つぎに、従事者による高齢者虐待についてです。

 死亡など、重症な事例は少ないとはいえ、入所施設を中心に、あってはならないことが、年間150件前後も発生するのは、本当に困ったことです。また、「在宅サービス従事者による虐待件数がこんなに少ないのは、より密室性の高い独居や高齢者世帯において、発見につながっていない事例が多いのではないか」という心配もあります。

 確かに、虐待者個人の資質のみを問うだけではすまず、組織のあり方にまで踏み込む必要がありそうですが、取り組み遅れの感は否めません。おそらく、養護者による虐待と比べて、件数が少ないうえに詳しい情報も入手しにくく、計量的なデータや実践からの知見が得にくい故だと思います。それに、隠蔽しようとする力も作用するでしょうし。

 そこで、次善策というわけではないのですが、介護の現場は、虐待が発生しやすい環境だといえるのに、かくも発生件数が少ないのは何故か、という視点からも考えてみるとよいと思います。そして、虐待が発生した事例と比較すれば、案外いろいろな知見が得られるのではないでしょうか。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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