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梶川義人の「虐待相談の現場から」

サンタさん、「養護者支援法」が欲しいです。

 今月6日、警察庁が各都道府県警察に通達を出し、今後は原則として、ストーカーやDVが絡む事案には、各警察署の生活安全部門と刑事部門と共同で当たることになるそうです。また、加害者の摘発や相談者の避難などを図るための参考に、精神科医の意見に基づいて警察庁が作成したチェック票等によって危険度が評価されます(日本経済新聞速報2013/12/7)。対応後発組である高齢者虐待と障がい者虐待の分野でも、こうした二次予防の工夫は、大いに参考にしたいものです。

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 しかし、二次予防は、船の底にあいた穴から入ってくる水をかいだすようなもので、本来なら、まずは穴をふさぎ水が入らないように、一次予防(発生予防)に力を注ぎたいところです。これに関連して、興味深い記事を見つけました。

 それは、朝日新聞DIGITALが、「子ども虐待の社会的損失は年1.6兆円 家庭総研」(2013/12/9)と題し、日本子ども家庭総合研究所の和田一郎主任研究員が、わが国で初めて、児童虐待の社会的コストの試算を公表したと報じた記事です。

 社会的コストは、児童相談所や市町村の対応に要する費用や、子どもが児童養護施設で保護されるときにかかる費用等の「直接費用」と、精神疾患にかかる医療費、学力低下による賃金への影響、生活保護受給費、反社会的な行為による社会の負担等の「間接費用」の合算ですが、年間約1.6兆円になるというのです。

 私は、以前このブログで、児童虐待、DV、障がい者虐待、高齢者虐待の当事者だけで、毎年人口24万人程度の都市ができる勘定だと書きました。もし、これらの社会的コストを、和田一郎氏に倣い試算したら、きっと、とてつもない額になると思います。ですから、一次予防に努めることは、極めて生産的なのではないでしょうか。

 ところで、私は、発生予防について、いつも「家族の健康化」を念頭におきます。それは、上記4つの虐待問題は等しく「家族」と深くつながっており、「健康」は、虐待発生のリスク要因と等しく、心・身・社会(役割や人間関係)・生活資源(経済や物資)という、人間の全生活領域に深くつながっているからです。しかも、これらは、代々にわたって連鎖しているかにみえます。

 そこで、私には、虐待の発生予防への取り組みは、社会の基礎単位である、家族の健康化への取り組みに等しく、また、4つの虐待問題は等しく、社会適応からみて、「世代間ドミノ倒し」のような連鎖の果てだと思えてくるのです。ですから、私は、弱者を支える身近な人々、つまり養護者は、もはや副次的にではなく、直接支援の対象にして然るべきだと考えます。

 たとえば、介護が大変であることの代名詞である認知症は、ここ20年で6倍に増え、現在では約462万人に達しており、今後もさらに増えるそうです。そうであれば、一日も早く、養護者を支援するための法律を成立させ、法的根拠をもって支援の手を差し延べる必要があるのではないでしょうか。実効性はいざ知らず、今年の4月から「子ども・子育て支援法(平成24年8月22日法律第65号)」が段階的に施行されていることですし。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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