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梶川義人の「虐待相談の現場から」

分野横断的な交流

 先日、池袋にある淑徳大学サテライトキャンパスで催された公開講座に、講師として参加してきました。この講座は、児童虐待、D∨、障害者虐待、高齢者虐待、4人の専門家が集まり、パネルディスカッションのような形式で行われたのですが、高齢者虐待に取り組むうえでのヒントがたくさん得られ、非常に興味深いものでした。

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 児童虐待では、親と子の心理、親子関係や夫婦関係の特徴、対策上の課題などが話されました。「暴力の世代間連鎖」や「アダルトチルドレン」の考え方は、高齢者虐待の分野でもいろいろ取り沙汰されます。しかし、「暴力のあった家庭の子は皆暴力を振るうようになる」など、誤解されている場合も少なくありません。児童虐待の最新の知見を学ぶことで、こうした誤解は解けるのではないでしょうか。また、出生からの人間の発達や、子ども時代の親夫婦・親子・同胞関係について学べば、生活歴の理解も深まり、より血の通った事前評価ができるようになると思います。他にも、子ども自らがSOSの声あげるための支援や、家族再統合の可否の目安など、かなり参考にしたい点が多いと感じました。

 DVでは、暴力支配の仕組みや当事者を分離する支援に関するコメントが心に残りました。暴力が無差別ではなく選択的に振るわれていることや、暴力による支配を受け続けた被害者が、加害者から離れ難い心理に陥る「トラウマティックボンディング」は、高齢者虐待の当事者理解に役立ちます。それに、従事者による虐待や使用者による障害者虐待の理解をも助けてくれるように思います。また、支援方法のパッケージ化が進んでいるようであり、研修を考えるうえでとても参考になると思いました。

 児童虐待とDVの共通点の一つは、生命に関わる事例が多いことです。したがって、緊急性の評価においても一日の長があり、「首を絞める加害者はかなり危ない」など、ある程度の科学的根拠をもった評価方法も開発されつつあります。ですから、開発の方法も含め、障害者や高齢者の虐待の分野でも大いに参考にすると良いと思います。

 障害者虐待は、法施行間がないものの、偏見や差別といった文化的な側面の規制が強そうなので、啓発活動がどう展開されるか、興味深いところです。また、使用者による虐待と従事者による虐待の相違点が明らかになれば、集団や組織の持つリスクも分かるのではないかと期待されます。さらには、制度やサービスの設計が高齢者分野と似ているので、体制整備などについて学び合うと、即効的なアイデアが得られるように思います。

 私のなかでは、こうした分野横断的な事柄の整理がついてはおらず、ただ漠然と、発達と保護をキーワードに、新たな家族のあり方の模索へとつながっていくように感じているだけです。しかし、分野横断的な交流が日常的なものになれば、人が人を虐げるという事象への取り組みは加速度的に前進するという予感だけは強くしています。

 だからというわけではないのですが、現在私は、分野横断的な活動をするために、埼玉大学の宗澤忠雄先生方とともに、新しいNPO法人の設立準備をしています。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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